国内 2024.01.28

国内100トライ達成の山田章仁、最近エディー・ジョーンズと会っていた。

[ 向 風見也 ]
国内100トライ達成の山田章仁、最近エディー・ジョーンズと会っていた。
今年最初の試合でプレーヤー・オブ・ザ・マッチに輝く活躍を見せた山田章仁 (C)JRLO


 熱弁をふるった。

 昨年末に日本代表のヘッドコーチとなったエディー・ジョーンズは1月15日、メディアへ約60分のブリーフィングを実施していた。

 2015年までの4年間に続く2度目の着任から「超速ラグビー」を謳う63歳はこの日、あくまで「余談」としつつ38歳の代表経験者について話した。

「先日、山田と会いました。いまでも、彼は速く走れる。速く走るためのトレーニングを受けていたら、38歳でもスピードは出せるんです。トレーニングの方法を変えていかなくてはいけない。インプレーの30秒を、その(目指す)スピードで練習していく必要がある」

 話題に挙がった山田章仁は、ジョーンズの第1次政権時代に代表へ定着。最終年のワールドカップ・イングランド大会では、歴史的3勝の一員として名を馳せた。

 いまはプロとして国内通算4チーム目となる、九州電力キューデンヴォルテクスに加わって2季目を迎える。リーグワン2部で光る。

「『スピード、大事ね!』と言っていました。(今季の)1、2試合目が終わった頃かな。結構、カジュアルな話ですよ。まだ代表ヘッドコーチになる前で、そんな話題も出ませんでしたけど。…エディーさんには、いつも随所、随所でずばっと本質的なことは言われるので。僕を動かしてくれた原動力ではあります」

 時間が合えば、多くの人と会う。日々の行動に刺激を与える。

「もちろんヒントをいただきたいから会うわけではなく、その人に会いたいから会うんですけど。友だちを含め、皆さん、お忙しいなか時間を作ってくれている。僕としても、そこでは人生のなかで楽しい時間を過ごせたらなと思っています」

 本人がオンライン上で話したのは1月10日。1月25日発売の『ラグビーマガジン』のインタビューに応じた。

 その4日前には、自身の地元に近いミクニワールドスタジアム北九州で大台達成していた。日本製鉄釜石シーウェイブスを20-11で下したそのゲームで、国内トップレベルの公式戦での合計トライ数を100に乗せた。旧トップリーグ時代から通算し、史上3人目となる。

「皆さん、お祝いのメールもくれる。地元ということもあって、昔の友だちには『(記録達成までの)間のトライは見ていないけど、100という数字を見ると、改めてお前、凄いな』とか。この100という数字を通して、それまでずっとフォローしてくれていなかった皆に会えたり、声をかけてもらえたりすることがありました」

 今度のニュースの価値は、キャリアを重ねる全ての社会人へのエールになりうる点だと述べる。

 同世代で現役生活を続ける選手の名を次々と挙げながら、こう続けた。

「世の中のアラフォー ――僕も、そうだと言っていいでしょう――に、まだまだやれるんだよ、と。1回きりの人生。組織内のバランスは大事ですけど、それを考えすぎて自分自身を表現できなかったり、前に進めなかったりするのはもったいない。まずは、自分を大切にして人生の駒を進めていこうぜ。…そういう、メッセージもあるかな」

 取材では、記録を刻むまでの出会い、自己研鑽を振り返った。

 2016年からの3シーズンは、国際リーグのスーパーラグビーに日本から参戦するサンウルブズの一員となっていた。

 オーストラリアのウェスタン・フォースにいた15年より引き続き、トップリーグ、スーパーラグビー、代表戦と複数のステージで戦う生活に突入した。

 休みは限られたものの、山田は「めちゃくちゃ楽しかった。大変じゃなかったですよ。僕、いろんな所に行くのも好きだったし。オーストラリアでは、昔(慶大時代に留学)お世話になった人にも会えました」。結婚し、家族の住まいをハワイに設けたのはこの頃だった。

「僕がそういう(複数拠点の)生活をしたかったのもありました。家族にも感謝しています。より、メリハリがついていいですよ。同じトレーニングをするにしても、環境を変えると(身体への)反応がよくなることもあるし」

 キューデンヴォルテクスについても話した。

 記念すべき100本目のラストパスを放ったのは、FLの中島謙だった。

 18分、攻撃システムに伴い大外に立つことの多い中島が右端を突破。そのさらに右で併走した山田がバトンを受け継ぎ、駆け抜けた。

「割と、あうんの呼吸でしたよね? 常日頃、謙とは話しています。グラウンド内だけではなく、一緒にご飯を食べに行くなかでの他愛もない会話からでも(深いコンビネーションは)生まれる。彼には期待しているし、最近のラグビーではああいうシチュエーションが多い。(当該のトライは)彼にとっても、僕にとってもいいシーンでした」

 初代エディージャパンの申し子は、挑戦すること、仲間と強調することを止めない。

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