コラム 2023.12.29
【コラム】あれから4年。待ちに待った晴れ舞台。

【コラム】あれから4年。待ちに待った晴れ舞台。

[ 直江光信 ]
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 タレントぞろいだった昨シーズンに比べ、飛び抜けたビッグネームが少ないといわれる今年の高3世代だが、これまで全国レベルの大会でプレーする機会がほとんどなかったことが、広く名を知られる存在が少ない理由であるのも確かだろう。高校入学後もさまざまな活動が制限され、それまでの年のように合宿や練習試合で経験を積むことができなかった、いわば「知られざる世代」。最上級生としていくつもの修羅場をくぐり抜けてきたいま、そこから突如としてあっと驚く新星が出現しても、なんら不思議はない。

「中学生は、ある日突然うまくなるんです」

 ジュニアラグビーの指導に長く携わってきたあるコーチの言葉だ。いいフレーズだと思って記憶のノートにしたため、折にふれ引用させてもらってきた。いまこう言い換えよう。

「若者は、ある日突然うまくなるんです」

 いい時もあれば悪い時もあるのが人生だ。そして直面した困難を乗り越えることで人は成長する。あの不自由で憂鬱な日々があってよかったとは絶対にいえない。けれど、あれほどの失意を味わった経験は、この世代の学生たちだけが持ち得る特別で意味のある経験だとも思う。

 待ちに待った最高の晴れ舞台。選手たちはここでプレーできる喜びを全身から発散させて、最後まで力を出し尽くすだろう。そんな活力と意志に満ちた攻防は、たとえどんな試合展開になっても、きっと見る者の心を打つ。

 さあ花園開幕。明日は2回戦。跳躍の瞬間に備えひたむきに鍛錬を重ねてきた高校生たちの熱闘を、目に焼きつけたい。

【筆者プロフィール】直江光信( なおえ・みつのぶ )
1975年生まれ、熊本県出身。県立熊本高校を経て、早稲田大学商学部卒業。熊本高でラグビーを始め、3年時には花園に出場した。早大時代はGWラグビークラブ所属。現役時代のポジションはCTB。著書に『早稲田ラグビー 進化への闘争』(講談社)。ラグビーを中心にフリーランスの記者として長く活動し、2024年2月からラグビーマガジンの編集長

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