残り少ないラグビー人生、「泥臭く、出し切る」。戒田慶都(帝京大4年/CTB)
戒田慶都(かいだ・けいと)は4年生になって初めてレギュラーになった。
今季は関東大学対抗戦の全7試合中6戦で帝京大の13番を背負った。
12月23日に秩父宮ラグビー場でおこなわれた全国大学選手権の準々決勝、関西学院大戦にも、いつものポジションで出場した。
よく動いてボールタッチが多かった。自らトライも挙げて勝利(78-15)に貢献した。
愛媛の新田高校出身。2018年度は『花園』に出場している。
同大会では2年生ながら主将を務めた。U17日本代表に選ばれたこともある。
帝京大入学後、Aチームで試合に出られるようになったのは3年時からだ。
関東大学対抗戦4試合、大学選手権3試合に出場した。
ただ昨季は、先発での出場は日体大戦にWTBとして出場したときのみ。その試合では80分ピッチに立ち、3トライを挙げた。
しかし、他の試合のプレータイムは長くなかった。
ラストイヤーになって出場機会を掴めたのは、同じポジションの先輩たちのプレーを見て学んだからだ。
「昨年の二村莞司さん(現・S東京ベイ)、一昨年の志和池豊馬さん(大阪府警察)のプレーを見て、自分に何が必要かを考えました。その結果が、いまに繋がっていると思います」
先輩たちを見て、ふたりが常に走り続けていることに気づいた。
「(自分も)強みを生かしたプレーをしよう」と決め、4年目のスタートを切った。
先の関西学院大戦でも、その決意をピッチで実践した。
「対戦が決まってから、練習時も、自分がボールキャリーする意識を高く持ちました」
80分間ハードワークし続ける。走り続ける。
その目標の遂行が、自ら1トライを挙げて大勝した試合のベースにあった。
関西学院大も前に出てプレッシャーをかけてきた。
その圧力を受けて思うようにいかない時間帯もあったけれど、「最後までフィジカルの強さを出し続けることができた」と勝因を口にする。
チームは、全国大学選手権3連覇へ向けて快調に走っている。
しかし戒田にとっては、レギュラーとして初めて迎えるクライマックス。「先を見ることなく、目の前の試合でベストを尽くすことだけを考えます」と語る。
同期の多くが大学卒業後もプレーを続ける予定も、自身は、トップレベルでのプレーはこれで最後と決めている。
「しっかり仕事をしたい。仕事を通して成長したい」と、一般企業に就職する。
5歳の時、松山ラグビースクールに入った。
帰省した時には必ず、母校の新田高校に顔を出す。そこには、誇らしい先輩を見つめる後輩たちの視線がたくさんある。
今回の全国大学選手権、13番を背負った自分が3連覇の舞台で躍動したら、どんなに後輩たちが喜ぶか。
松山の人たちもきっと笑顔になる。
「自分らしく、泥臭いプレーをすべて出し切りたいと思います」
1月13日の頂上決戦まで残すは20日弱。仲間たちと頂上を目指す、充実の日々が減っていく。
「自分は目立つプレーでなく、縁の下で支えるプレーをします。最後の最後まで、走り続け、体を当て続けるつもりです」と話す言葉に力が入る。
昨季の全国大学選手権の決勝ではSO髙本幹也(現・東京SG)のキックパスを受け、トライを決めた。
その瞬間、試合終了を知らせるブザーが鳴り、スタジアムは歓喜の空気に包まれた。
ラグビー人生の最後を、同じような景色の中で終えられたら最高だ。