簡単には笑わない。野中健吾(早大2年)
2大会連続での対戦だ。
昨冬1点差で悔しい思いをした相手は、襲いかかってくるだろう。
12月23日、早大はヨドコウ桜スタジアムで京産大と戦う。
関東大学対抗戦A3位が関西王者へチャレンジする構図ではあるが、昨季は大学選手権準決勝の同カードで、34-33と早大が勝った。その背景を考えたなら、挑む側がどちらかは明白だ。
関西王者のあふれる気迫は想像に難くない。
早大は12月17日の大学選手権3回戦で法大を相手に54-12と快勝し、勢いにのってこの試合に挑む。
京産大は12月3日、関西大学Aリーグの最終戦を天理大と戦って以来の実戦だ(23-22で京産大の勝利)。
熱戦が予想される一戦への出場予定メンバーが、12月21日に発表された。
それぞれ、ここまでの戦いの中で信頼を得て、メンバーシートに名を連ねた。
早大のCTB、12番を任されるのが野中健吾だ。東海大仰星高校から昨春入学した2年生は、今季ここまでの全8試合に出場している。
そのすべてが先発だった。対抗戦7試合のうち開幕から4試合で10番を背負い、それ以降は12番で出場してきた。
大学選手権の法大戦は前半で37-0と差が開き、後半はベンチに下がった。
しかし対抗戦の7戦は、青学大戦の後半35分に入れ替えでピッチの外に出た以外はすべて80分プレーした。信頼の厚さが伝わる。
正確なプレースキックでもチームに貢献してきた。
成蹊大戦は70-7と一方的な試合となるも、終始集中力を保つ。10のコンバージョンキックすべてを決める活躍だった。
自身のプレーについて、「冷静に判断するところを常に意識しています」と話す。
ルーキーイヤーの昨季も対抗戦の全7試合に先発(CTB=4戦、SO=3戦)、大学選手権全4試合にも起用されたのは、まさに、その点を高く評価された結果だった。
10番と12番、両方での経験をそれぞれのポジションで活かす。
自身に求められるものを「よりボールを動かすこと」と理解してプレーする。
淡々と仕事をする姿が印象的だ。
試合中は、ほとんど表情を変えない。「強みは状況判断。相手を見ながら、仲間を生かす」ことだ。
負けたら終わりというシーズン大詰め。チャンスは限られている。「その強みを、より強く出していかないといけない」と自覚する。
クールな姿勢は、高校時代からのものだ。東海大仰星3年時には花園を制した。
チャンピオンシップを勝ち抜いていく途中、対戦相手に心の動きを読まれていてはいけないと感じた。
「一喜一憂していてはスキが出ます。そう感じてから、常に冷静に判断してプレーするのが自分の持ち味になりました」
ただ、試合中に積極的に声を出し、周囲とコミュニケーションを取ることは忘れない。
「去年は上級生に任せていたところがあるので、自分から引っ張るようにしています」
関東大学対抗戦最終戦の早明戦は38-58で敗れた。前半一方的に攻められ、後半21分までに3-41と引き離された。
後半に「自分たちの攻める形を出せた」のは手応えも、学びの多い80分だった。
「最初から、一発目から自分たちの力を出さないといけなかった。ただ最終的には負けましたが、最後に動き勝てた感覚はありました。自分たちは、そこを目指して1年間準備してきたので、力を出し切るためにも、前半からもっとやらないといけない」
大学選手権初戦の法大戦は、前半だけで5トライ、37得点と、早明戦で出た課題を払拭するような展開だった。
チームはいい雰囲気で京産大戦へ臨む。
あと3勝を積み重ねられたなら頂点に届く。
そうなれば、野中も相好を崩すだろう。