海外 2023.12.21

スコットランド代表キングホーン、トゥールーズへ加入。

[ 福本美由紀 ]
スコットランド代表キングホーン、トゥールーズへ加入。
191センチ、10 1キロ。26歳。ハーレクインズ戦のキングホーン。(Getty Images)



 王者トゥールーズが帰ってきた。
 今季トップ14で5勝4敗と代表選手復帰後もなかなか調子が上がらなかったトゥールーズが、『手でプレー、トゥールーズのプレー』というクラブのキャッチフレーズ通りのパフォーマンスを見せた。

 速いテンポで選手が目まぐるしく入れ替わり、縦横無尽にパスを繋ぐアタッキングラグビー。そして、強固なディフェンス。目指すスタイルを80分間遂行し、ロンドン郊外のトゥイッケナム・ストゥープ・スタジアムを埋め尽くした観客の前で、現在イングランドのプレミアシップ3位のハーレクインズ相手に7トライを挙げ、47-19と勝利した(12月17日)。

 アントワンヌ・デュポン(SH)はどんどんパスを捌きながらも、すでに7人制モードになっているのかと思わせるほどフィールドを駆け巡った。トマ・ラモス(SO)も圧巻。ペアト・モヴァカ(HO)はワールドカップ(以下、W杯)から引き続きスーパーモヴァカぶりを発揮し、「フランス代表選手は準々決勝敗退のショックからまだ立ち直れていない」という批判をはね返した。

 特に目を引いたのが、今月初めにトゥールーズに移籍してきたばかりのスコットランド代表FBのブレア・キングホーンだ。

 12月4日にトゥールーズに到着し、2度練習に参加しただけで12月9日のカーディフ戦に15番をつけて出場、80分プレーし2トライを挙げた。

「ブレア(キングホーン)の加入でこのポジションが安定した。最初のパフォーマンスだけで判断するのは早すぎるが」と言いながらも、「リクルート担当スタッフがうちにあった選手をよく見つけてくれた。ここ数年、スコットランドのラグビーはうちのラグビーと似ているところがあり、ブレアも戸惑うことなくトゥールーズのオーガナイズに馴染めている」とユーゴ・モラHCも満足そうだ。

 トゥールーズではロマン・ンタマックが不在のため、本来FBのラモスがSOを務めている。またアンジュ・カプオッゾもフアン=クルス・マリーアも現在負傷中だ。
 さらにメルヴィン・ジャミネが11月末にトゥーロンへ移籍し、本職のFBがいない状態だった。

 ジャミネは昨季、ペルピニャンからトゥールーズへ3年契約で移籍。しかし、?開幕後すぐに負傷した。
 ラモスや他のFBとのポジション争いも激しかった。また、ラモスはSOもできる。カプオッゾはWTBでもプレーできる。マリーアはBKならSH以外のポジションを全てカバーできるが、ジャミネはFBだけということも、試合出場機会が思うように得られなかった理由だろう。

 トゥーロン近郊の生まれで、16歳まではトゥーロンのラグビースクールに所属していた。当時は体が小さくトゥーロンのジュニアチームに選ばれず、ペルピニャンでプロデビューを果たした。しかし今のトゥーロンは地域とのつながりを重視しており、ロングキックを得意とする地元出身のジャミネに興味を示しているという噂は昨年から聞こえていた。

 両親の住む故郷に帰って心機一転、再スタートができることはジャミネにとっても魅力だった。契約は18か月残っていたが、トゥールーズも早期リリースを認めてシーズン中の移籍に至った。トゥーロンがジャミネの残りの契約を買い取るためにトゥールーズに支払った金額は50万ユーロ(約7900万円)と言われている。

「ジャミネに50万ユーロも?」という声もあるが、ジャミネがペルピニャンからトゥールーズに移籍する時もペルピニャンとの契約が2年残っていた。そのためにトゥールーズはペルピニャンに40万〜45万ユーロ(約6320万〜7110万円)支払っている。

 ちなみに2021年にもトゥーロンはトゥールーズから、まだ2年残っていたチェズリン・コルビの契約を買い取っている。その時の金額は120万ユーロ(約1億8960万円)と伝えられており、この金額と比べれば妥当と言えるのだろうか。

 キングホーンをリリースしたスコットランドのエディンバラが11月23日に発表した声明のタイトルは、「ブレア・キングホーン、来週のアルスター戦の後、トップ14のトゥールーズへ加入。トゥールーズからの6桁の移籍金で合意に至る」だった。

 そして、「トゥールーズからの多額の補償金を条件として、やむなくこのリリースに同意いたしました。この資金をどのようにクラブに再投資するのがベストなのか、慎重に検討してまいります」と本文内で伝えた。


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