優勝候補による「48-41」の実相。開幕間近のサンゴリアス&ワイルドナイツ
今季の国内リーグワン開幕を約2週間後に控えるなか、注目度の高い前哨戦があった。
一昨季王者の埼玉パナソニックワイルドナイツが、11月25日、本拠地の埼玉・熊谷ラグビー場に東京サントリーサンゴリアスを迎えた。
2022年まで2季連続でファイナルに進出したチーム同士のトレーニングマッチ。現行リーグでの初優勝を目指すサンゴリアスが48ー41で勝った。就任2年目の田中澄憲監督は言う。
「先週の東芝のゲームで学びが多かった。それを意識して1週間やってきて、出せたのが評価できる」
その言葉通り、サンゴリアスは18日に東京・府中朝日フットボールパークで東芝ブレイブルーパス東京と激突。最後は運動量と選手層を活かして45ー25と勝利も、お互いが現時点でのベストメンバーを揃えたと見られる前半は7ー25と圧倒された。風下でのエリア確保に苦労するなか、向こうのフィジカリティに気圧された。
今度のワイルドナイツ戦へは、その「学び」になったエリアを改善して臨んだという。
40分×2本と30分×1本の変則マッチでおこなわれ、1本目はサンゴリアスが17-7とリード。お互い好機を作っていたが、ワイルドナイツがミスに泣いたのに対しサンゴリアスはキックチェイス、接点での絡みで光った。
2本目ではワイルドナイツ自慢の防御が冴えたのもあり、9分には17ー22と勝ち越されたサンゴリアス。しかし、相手にイエローカードが出ている終盤に24ー22と勝ち越し。39分にも追加点を挙げ、31ー22とした。
3本目もモールでの2トライなどでリードを保ち、ロッカールームへ戻った。
田中は続けた。
「風下でのゲームコントロール、コリジョンでのバトル(が課題だった)。東芝戦では前半の入りがソフトで、きょうも後半(2本目)の最初はちょっとそういうところもありましたけど、先週に比べたら成長できた」
2本目の途中からサンゴリアスのSHに入ったのは、日本代表の齋藤直人だ。
「風下(からの脱出)が先週からの学びでした」と、その領域に手応えをつかんだ。何より自身のパスさばきでテンポが出たシーンもあり、「ボールを持った時はいいなという感覚があって」。セットプレーで優勢のFW陣へも感謝した。
齋藤が出た時間帯は風下だった。
「風下だと(いったんパスでボールを後ろに)下げて蹴るのは難しい」と、自ら接点の周りから蹴るのも意識した。
これから公式戦でワイルドナイツと戦ううえでも、「キックゲームが本当に大事になる。風上、風下を問わず」と気を引き締める。
サンゴリアスでは今秋、ワールドカップ・フランス大会に出ていた流大がSHとして先発してスペースへ好配球。国内残留組ではハリー・ホッキングス、シオネ・ラベマイの両LOはチョークタックル、ラインアウトモールへの防御、ジャッカルで渋く光った。
加えて指揮官は、2本目で登場したSOの森谷圭介のゲームコントロールを評価した。南アフリカ代表WTBのチェスリン・コルビら新加入の大物外国人は合流前も、以後2週間のトレーニングを経てメンバー選考に加えるつもりだという。
かたやワイルドナイツでは、プレシーズンを国内で過ごしたWTBの野口竜司はキックを追う動きで目立ち、もうひとりの先発WTBとなった竹山晃暉はランニングスキルを活かして計2トライ。FBとSOを任された山沢京平は、ピンポイントのキックパスでアピールした。
ワールドカップ・フランス大会組ではFLのベン・ガンター、NO8の福井翔大がスターターとして攻守で働き、3本目で登場した稲垣啓太、坂手淳史もスクラム、接点周辺でのパスや突進でチャンスを作っていた。
さらに凄みを示したのは、3本目で出てきたSOの松田力也だ。
ミッドフィールドでの展開時は「皆がスペースを見て僕とコミュニケーションを取ってくれる。あとは、(球を運ぶ場所を)選ぶだけという感じでした」とハイパント、大外へのパスを適宜、選んで味方を前進させた。チーム全体については連携、規律に課題があるとしながら「手応えはありました」と振り返った。
帰国後は短期間でテレビやイベントへ出演し、佐藤義人トレーナーとの個別練習に入った。合流から1週間強で実戦に戻っていた。
「ラグビーから離れているの(時間)が休み、みたいな感じ。心的にも、大丈夫だと思います。ラグビー好きなんで」
翌日から宮崎でキャンプを張る。CTBのダミアン・デアレンデら南アフリカ代表勢はこれから合流するとあり、松田は「グラウンド内外でコミュニケーションを取っていく」と展望した。