国内 2023.11.23

勝負どころで好タックル。帝京大・津村大志は「見本にならないといけない」

[ 向 風見也 ]
勝負どころで好タックル。帝京大・津村大志は「見本にならないといけない」
大阪育ち、高校は御所実に学んだPR津村大志。172センチ、108キロ(撮影:高塩 隆)


 勝負を分ける瞬間があった。帝京大ラグビー部4年の江良颯主将は振り返る。

「ここを守れるか、守られへんかは、今後に関わってくる。ここでどれだけいいファイトして、相手の勢いを止められるか。苦しい時に体を張り続けられるか。戦えるか…」

 11月19日、東京・秩父宮ラグビー場。関東大学対抗戦Aの明大戦は後半7分まで進んでいた。スコアボードには「11-22」とある。ハーフタイムにあった14点のリードを11点に詰められていた帝京大は、さらに、自陣ゴール前で守勢を強いられていた。

 明大にとっては逆転のきっかけをつかめそうな場面であり、帝京大にとっては危機を乗り越えた先に光が見えそうな瞬間だった。

 最後は、江良のジャッカルでピンチを防いだ。右端あたりで、向こうのSOである伊藤耕太郎が倒れていた。江良が伊藤の持つボールに絡んだのだ。本人の述懐。

「楽しんでディフェンスできました」

 その伊藤にタックルを放ったのは、津村大志だった。パスダミーを入れて狭いスペースへ駆け込む伊藤に、向かって右から鋭く突き刺さった。

「10番(司令塔)の伊藤選手にどれだけプレッシャーをかけられるか。彼は走るのが好きなプレーヤー。走ってくるところをめがけてタックルに行った感じです」

 江良と同期の左PRである。対抗戦では開幕から4戦続けて出場も、11月5日の早大戦は欠場。開幕6連勝を賭けて臨んだ今度の明大戦で、2試合ぶりの復帰を果たしていた。

 この日はスクラムでも好プッシュを披露しながら、ターニングポイントとなりうる場面でも渋く光った。

「(欠場中は)ずっとけがをしていて、チームに迷惑をかけていた。(明大戦では)貢献しようと思ってジャージィを着て、挑みました。何本かいいタックルはできた。ただ、課題もある。それを次に向けて、修正できれば」

 身長172センチ、体重108キロ。奈良の御所実高の1、3年時に全国大会に出て、帝京大では大学選手権2連覇中だ。最上級生になった今季は、主力候補であると同時に学生コーチも務める。

 規範を示したいという。

「4年生は全員が見本にならないといけない。そのなかでも自分は学生コーチという立場でやらせてもらっている。自分は口下手なので、誰かに物を言うのではなく、自分がやっていることを見て下級生がそれをまねしてくれるようになれば。(役職者なので)よくも悪くも影響力はある。僕が悪いこと、中途半端なことをしていたら、下級生は『あの人がやっているのだから、自分もいいだろう』みたいに感じてしまう。試合中であればタックルに行くとか、よくないことをしている人に注意するとか、皆が僕のまねをしたらチームがよくなるように(動く)…という思いです」
 
 明大戦は43ー11で制した。12月2日には秩父宮で、慶大と対抗戦の最終節をおこなう。

PICK UP