日本代表の松島幸太朗が「次のワールドカップは考えていない」わけ。
ワールドカップ・フランス大会をプールステージ敗退で終えて帰国してから、ラグビー日本代表の松島幸太朗は父親の休日を過ごしていた。
「ラグビーから離れていましたね、ずっと。娘の面倒を見るとか。トレーニングもしなかった」
アルゼンチン代表との最終戦を27ー39で落とすまでの数日以内で、左肩と右膝の骨挫傷を負っていた。
膝は試合当日中の「アンラッキー」な動きで、左肩は「どこでしたかはわからない。痛いな、あまり力が入らないなと(思っていた)」。所属する東京サントリーサンゴリアスの活動には11月上旬に戻った。宮崎合宿のさなかだった。
14日。都内の拠点で個別調整を終えると言った。
「とりあえずいまは、次のワールドカップは考えていないです。このチームがどうやって優勝できるかにフォーカスしているつもりです」
ワールドカップはこれまで3度出場の30歳。4年後にオーストラリアである大舞台へ出るかは、未知数だとした。
代表引退を考えているのではない。代表を目指す、ワールドカップを目指すと口にするより、そう宣言できるだけの心身を作り上げるのが先だと考える。
「そうですね。中途半端にやっていてもおもしろくないですし。もう(代表活動を)やらないというわけではないですけど、そこを目指せるような自分の身体のコンディションをもっていきたいです」
いまのフォーカスポイントは、「このチームがどうやって優勝できるか」。サンゴリアスは旧トップリーグ時代に歴代最多タイの5度優勝も、2017年度を最後に日本一から遠ざかる。一昨季発足のリーグワンでは、いまだ無冠にある。
松島がフランスのクレルモンを経て2シーズンぶりの国内復帰を果たした昨季は、プレーオフの準決勝で敗れるなどして1部12チーム中4位に終わっている。
サンゴリアスにはスタイルがある。「アグレッシブ・アタッキングラグビー」。現ディレクター・オブ・ラグビーで、前オーストラリア代表ヘッドコーチのエディー・ジョーンズが監督を務めていた時代に作った標語を、歴代の指導者が引き継いできている。
ジョーンズがボスだった頃に現役晩年を過ごしていた田中澄憲現監督は、スローガンに「THIS IS SUNGOLIATH」と掲げる。
就任初年度の昨季、プレーオフのセミファイナルでは優勝するクボタスピアーズ船橋・東京ベイに18ー24と惜敗。前半5分にレッドカードを受け、残り75分を14人で戦いながらの好勝負だった。計6度のテレビジョン・マッチ・オフィシャル適用で試合が長引くなか、サンゴリアスがどこからともなく攻め込むさまにスタンドが沸いた。
指揮官は言う。
「勝ち負けは別にして、我々のパフォーマンスに心が震えたと言ってくれる人はたくさんいた。ああいうラグビーをやらなきゃいけないと再確認した。これがサンゴリアスと言える試合を毎回しなければいけない。日々の取り組み、個人のパーソナリティ(がそれに相応しいか)とか、自分にもプレーヤーにもいろんな意味で問いかけている」
松島は、「昔からあるいいところを伸ばし、必要でないものは(改め)、新しいことを採り入れる。それがチームとして必要。同じことをやっていては進化できない」。ここからは、代表活動へのスタンスと似た主旨で話した。
「優勝を目指すと自信を持って言えるチームにしていきたい」