国内 2023.11.13

大混戦のトップイーストB、原点回帰の丸和が山梨に34-10で快勝

[ 鈴木正義 ]
大混戦のトップイーストB、原点回帰の丸和が山梨に34-10で快勝
終始スクラムを最後尾で支え続けた眞野共同キャプテン



 トップイーストBグループが大混戦だ。
 リーグ戦全8戦の前半を折り返した第4節終了時点(11月5日)で首位日立が4勝と抜きん出ているものの、丸和運輸機関、富士フイルムが2勝2敗で同率2位、勝ち点差で順位は4位5位となっているものの明治安田生命とクリーンファイターズ山梨が勝ち星では1勝3敗で並んでいる。
 後半の4試合の結果次第では順位の大きな入れ替わりも十分に可能だ。

 11月5日、最高気温24度と、11月としては季節外れの暖かさとなった千葉県柏市、東京大学丸和柏FUSIONフィールドで丸和運輸機関AZ-MOMOTARO’Sがクリーンファイターズ山梨を迎え撃った。
 丸和運輸機関といえば、昨シーズンCグループから昇格早々に優勝という快進撃を見せ周囲に鮮烈な印象を与えたチームだが、前述の通りここまで2勝2敗と昨年とはやや状況が異なるようだ。今のチーム状態について、内山将文ヘッドコーチを直撃してみた。

「うちは去年(Bグループで)勝っているのですが、チャレンジャーということを忘れてしまっていた部分があったかもしれない。その部分を反省して、メンタル面からもう少し泥臭くやろう、ということを修正して後半戦に臨んだ。」

 いわば昨年のCグループからの昇格、Bグループ優勝の原動力となった原点への回帰をあらためてチーム内に徹底したということだろう。果たしてそれはどのようにグラウンド上で表現されるのだろうか。

 試合のほうは、キックオフ後、前半20分は全くスコアの動かない緊張感の張り詰める展開が続く。対戦相手のクリーンファイターズ山梨はここまで1勝3敗ではあるものの、前節ではリーグ内でも規律の高さで一目置かれる明治安田生命を破って勢いに乗っている。特に体格を活かした外国人選手によるアタックは爆発すれば脅威だ。

 試合が動いたのは前半23分過ぎ、ラインナウト後の密集から丸和LO白川総哲(東海大学)が飛び込んで先制トライ。

白川総哲。好きな食べ物はフィリピン料理

 その後両チームPGを1本づつ決め10-3とした前半終了間際、ゴール前スクラムを丸和が大きく押し込み、そのままNo.8眞野拓也(京都産業大学)が押さえ込んで前半は15-3とした。
 この日、丸和のFWは前5人合計で489キロ、対する山梨の540キロとの体重差は歴然だったが、このスクラムに限らず、終始丸和がスクラムで優位に展開していた。スクラムでの優位はゲーム全体に少なからぬ影響を与える。

 後半になって、NECグリーンロケッツ東葛でも活躍した山田啓介(ビクトリア大学)がSHに入る。他にも山梨はWTBの飯山竜太(帝京大学)もNEC出身だ。この日の試合会場は千葉県柏市ということでNECのホームタウンでもある。駆けつけたNEC時代からのファンの声援を耳に、両選手がグラウンド内を駆け回った。

 しかしなかなか山梨はゴールラインを越えられない。再三ゴールラインには迫るものの、本当にあと50センチが届かない。
 特に、後半出場の竜タウマファイ(白鴎大学)の突進力は凄まじく、再三のゲインで観客席をどよめかせた。そこまで攻めたにもかかわらず、ゴールラインを突破してからグラウンディングできないシーンが2度連続であり、スタンドからは山梨ファンの大きなため息が聞こえた。

竜タウマファイ。規格外のボディーサイズでパンツは特注品

 一方の丸和はじわじわと得点を重ねてゆく。後半16分には先ほどと同じくスクラムで優位に攻めた結果のペナルティトライ、25分には後半からHOに入った藤山裕太朗(東海大学)がモールから飛び込んで1本、ほぼ後半も40分に差し掛かる時間帯で27-3と、試合の趨勢を決めた。

 山梨も43分、モールから数回目のフェーズでようやくLO(途中よりPR)池田将大(天理大学)が飛び込み、本来の攻撃を見せたが、あまりにも遅過ぎた反撃であった。最後には丸和23番大屋凌雅(国士舘大学)が大外へのパスに反応し、ダメ押しの1トライを上げキックも決まったところで長いホイッスル、34-10で勝利は丸和のものとなった。

池田将大。この体格だが愛車は軽自動車

 最後のトライこそ綺麗にパスで相手を抜いたプレーだったが、この日の丸和のトライはいずれもスクラムや密集からFWがゴリゴリとねじりこむようなトライばかり。まさに「泥臭い」トライばかりだったが、これこそ後半戦丸和の目指していたラグビーともいえるかもしれない。

 しかし、この日のプレーヤー・オブ・ザ・マッチを獲得したのはFW陣ではなく、FBの福本航太(中京大学)だ。この日もキッカーとして3回プレースキックを成功させているが、再三にわたりゴール前で仕掛けてきた山梨攻撃陣を止め切ったディフェンス面でもFBとして「泥臭く」体を張った点が評価されたようだ。

福本航太。好きな手料理はオムライス

 この選出に丸和の内山HCは納得の様子で、「福本はいつも練習も最後まで残って、自分の課題に取り組んでいる真面目な選手。こうした愚直な選手がレギュラーをとって活躍することはチームにとってプラスだと思う。」と目を細めた。
 この先のリーグ戦残り試合の展開について聞かれると一転表情を引き締め、「一つ一つやってゆくのみ」とだけ述べた。

 これは謙遜も多分にあると思われるが、いっぽうで現在のトップイーストBの実力拮抗ぶりから率直に出たコメントとも捉えられる。
 確実に勝てる試合が見込めない対戦相手、1試合の勝ち負けで大きく順位が変わってしまう可能性、星勘定をする余裕などどのチームにもない。この試合を終えて丸和は3勝2敗、山梨は1勝4敗となった。

 なお、この試合と同日に開催の明治安田生命と富士フイルムの試合では明治安田が27-24で勝利、勝ち星で互いに2勝3敗の五分となった。このように、12月の全日程終了時に、どのチームが笑っているのか全く予想がつかず、ファンとしては楽しみな展開でもある。

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