国内 2023.11.11

「ノリ」がいいのはグラウンドのなかだけにしよう。大東大・辻岡優希の「メリハリ」。

[ 向 風見也 ]
「ノリ」がいいのはグラウンドのなかだけにしよう。大東大・辻岡優希の「メリハリ」。
写真中央右がLO辻岡。工夫されたモールでも牽引(撮影:長尾亜紀)


 法大戦のテーマは「悪ノリ」だった。名付けたのは酒井宏之。大東大ラグビー部の新監督だ。一気呵成に相手を攻め立てるイメージか。

「自分らにぴったりなテーマをくれます」

 こう笑うのは辻岡優希。身長180センチ、体重91キロの4年生で、LOやFLとして接点で光る。堅実な仕事ぶりに首脳陣の信頼も厚い。

 結局、10月29日の法大戦は29ー30と1点差で落とした。前半に何度も決定機を逃していた。後半には一時あったビハインドをひっくり返すも、勝ち越した直後の後半38分に自陣で捕球ミス。そのまま逆転された。

 会場の埼玉・セナリオハウスフィールド三郷で、辻岡は悔やんだ。

「前半は些細なミスで(点を)獲り切れず。自滅している感じでした。最後も甘いところが出た」

 手応えもつかんでいる。

 この日に犯した計8つの反則は、相手とのコンテストの流れで吹かれたものがほとんど。所定の位置より前でプレーするラインオフサイドのような、自分たちの心がけ次第で防げるものはほぼ皆無だったと言える。

 背景には、グラウンド外での変化がある。

 いまは指揮官自らが選手寮に住み込み、オフ日以外は夜8時にミーティングを実施。部員が夜中に出歩くリスクを最小化させる。「10分前行動」も意識づけられ、寮長でもある辻岡は「周りがちゃんとしてくれる」のがありがたいという。

 昨季は8チーム中7位で下部との入替戦に進んでいた。低迷脱却を心から願い、部員は改革を受け入れていた。辻岡は言う。

「(新体制のもとで)メリハリがつきました。去年もノリでプレーしていましたが、寮生活もノリで過ごしてしまった。今年、新しい監督のもとで整理整頓、掃除とルールなど守るように。一方、ラグビーはノリでやる、と。普段にメリハリがつくことによって、ノリでやっているラグビーでもペナルティを防げる。練習も、規則もきつくなったんですが、思ったより(部員からの)反発はなくて。勝ちたいという目標があるからこそ、マインドチェンジできたんだと思います」

 リーグ戦は2試合を残す。上位3チームが大学選手権に行けるなか、大東大は勝ち点「10」で法大と4位タイに並ぶ。

 勝ち点は勝利すれば「4」を、3トライ差以上をつけて勝ったらボーナスポイントの「1」を追加で得られる。大東大がラスト2戦とも3トライ差以上をつけて勝てば、合計「10」を加算できる。最大で「20」まで積み上げられる。

 一方、現在の3位は東洋大で「16」。大東大には逆転の可能性もある。

 辻岡は、最後の瞬間まで「勢いを切らさず、ノーペナで、速い展開ラグビーをしていきたいです」。自分たちで整えられる条件は、すべて整えたい。

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