W杯決勝翌日トップ14再開で、フランスのラグビー熱は続く。タタフ(ボルドー)活躍も、HOモヴァカらW杯組登場でトゥールーズ勝利
ワールドカップ決勝の翌日(10月29日)、中断されていたトップ14が再開された。
W杯に出場していた各国代表選手も復帰し始めたこともあり、この日を待ち構えていたかのように、各会場にファンが押し寄せ、特にバイヨンヌ、ラ・ロシェル、トゥールーズではチケット完売、満員御礼となった。
今節を締め括ったのは、トゥールーズ×ボルドーのカードだ。トゥールーズは、イタリア代表WTBアンジュ・カプオッゾ、オーストラリア代表LOリッチー・アーノルド、サモア代表CTBピタ・アキ、そしてフランス代表で準々決勝まで連戦していたHOペアト・モヴァカがメンバーに入った。
一方ボルドーでは、テビタ・タタフがフランスでの公式戦デビューを果たした。
フランスはちょうどトゥッサン(万聖説)の祝日で学校がお休みということもあり、日曜日の21時という遅い時刻のキックオフにも関わらず、スタジアムは多くの子ども連れで賑わっていた。
スタジアム入り口に並んでいたトゥールーズのジャージーを着ていたジャン=バティスト(10歳)、ティトゥアン(8歳)、マチアス(6歳)、チボー(5歳)に、ご両親の了承を得て声をかけてみた。
約400キロ離れたマルセイユから、おじいちゃんとおばあちゃんが住んでいるトゥールーズに来ているという。4人ともマルセイユのラグビースクールに通っているがトゥールーズのサポーターで、「お気に入り選手は?」と聞くと「デュポン、ラモス、ンタマック!」と返ってきた。
「今年は世界チャンピオンになれなかったね。4年後はなれるかな?」という問いに、少し大人のジャン=バティストは「そうなってほしいな」と控えめだが、年下の3人は「うん、なってくれる!」と元気に答えてくれた。
観客席からは、久しぶりに『自分たちのチーム』が帰ってきた喜びと興奮が伝わってくる。
「2か月間、試合がないまま練習を続けてきて変な感じだった」と試合後会見で選手が言っていたが、ようやく試合ができるという喜びと意気込みが感じられる試合となった。
ボルドーはトゥールーズのホームであるエルネスト=ワロンで勝ち星を挙げたことがない。W杯による2か月の中断期間で周到に準備を重ね、チームとしての仕上がり具合が感じられたのはむしろボルドーだった。
トゥールーズは前半ミスやペナルティーを繰り返し、思うようなプレーができない。
またラックではタタフがボールに手にかけ2度のターンオーバーに成功。タタフはアタックでもボールを持っては前進、ボールを持っていない時もサポートにまわり、休む間なく働いていた。
隣の席に座っていた『ミディ・オランピック』の記者が前半を終えた時点ですでにこの試合の「トップ(プレイヤー)」にタタフの名前を記したほどだ。
35分にようやくトゥールーズのFLテオ・ンタマックがパワーと走力を発揮してトライを決めたが、8-16とボルドーのリードで前半を終了した。
後半早々にトゥールーズはモヴァカ、アーノルド、アキ、カプオッゾの代表選手を一気に投入した。
少しずつ流れがトゥールーズに傾いていく。ボルドーがボールを持てなくなってきた。しかし、トゥールーズもボルドーのディフェンスラインを破ることができない状態が続く。
73分にとうとうトゥールーズが大外に数的優位を作ってトライを決める。同点に追いつき、コンバージョンを成功させ21-19と逆転した。
そして2分後にこぼれたボールに素早く反応したカプオッゾが敵ゴール前に転がし、自ら駆け上がってインゴールに持ち込みさらに5点追加。ボルドーもその後、PGを成功させて26-22。負けてもボーナスポイントを獲得できる7点差未満に詰め寄った。
80分、トゥールーズがDGを成功させ、最終スコア29-22を刻んだ。とてもトゥールーズらしいシナリオで幕を閉じた。
試合後のTVのインタビューにモヴァカが答えていた。
後半途中に出場する前から、インゴールに他の控え選手とウォーミングアップに出ると、そのたびに「モヴァカ!モヴァカ!」とコールが起こっていた。
「本来なら休暇のはずなんだけど、家にいると毎日泣きそうだから、(W杯の)準々決勝のあとでも休みなしですぐに復帰したいとに言ったら、ユーゴ(モラ ヘッドコーチ)は分かってくれた。トゥールーズの仲間と一緒にプレーできて、ここに帰って来ることができて嬉しい」
一方、ボルドーはボーナスポイントも獲得できず、手ぶらで帰ることになってしまった。
「ここでボーナスポイントでも持って帰ろうとするなら、惜しみない運動量と完璧なスキルが求められる。50分まではそれができたが、その後はミスが増え、つかみかけていたゲームが遠ざかっていくようだった」
今季からボルドーのヘッドコーチに就任したヤニック・ブリュは、そう振り返った。
「自分たちのアイデンティティーを見せたかった。ラックは私たちのラグビーで重要なセクターで上手く機能したが、他のところで崩れてしまった。最後の3分の1はボールを持てなかった。持っても簡単に失ってしまった。しなくてもいいペナルティもあった。こういうことはあってはならない。ここでは高いレベルのラグビーが求められる」と続けた。
「ラックでタタフがとても良かったのでは?」という記者からの投げかけに対して、「良かったのは彼だけではない。彼1人でプレーしているのではないのだから」と前置きしながら、「パワーと爆発力があり、それが生かされてラックでターンオーバーすることができる。そこは彼の強みだ。まだ練習しなければならないところも残っているが、彼は今日、自分の強みをしっかり発揮した」と答えた。
「修正するところは?」と聞かれると、「それは彼自身に伝えます。皆さんは彼の強みだけを知っておいてください」とニコリと笑いながらかわした。
これから15週間、切れ目なしで試合が続く。
トップ14だけではなく、12月と1月には欧州チャンピオンズカップ・チャレンジカップの試合も入ってくる。今年もタフなシーズンが、ようやく本格的に始まった。