ワールドカップ 2023.10.29

W杯優勝逃したNZ代表オールブラックス。死力を尽くし、退場の主将をかばう。

[ 編集部 ]
W杯優勝逃したNZ代表オールブラックス。死力を尽くし、退場の主将をかばう。
決勝に敗れ力尽きたNZ代表、歓喜の抱擁を交わす南アフリカ代表(Photo: Getty Images)


 8年ぶりの王座奪還を目指したニュージーランド代表“オールブラックス”だが、ラグビーワールドカップ2023フランス大会の決勝でライバルの南アフリカ代表に1点差で敗れ、悔し涙をのんだ。

 前半に2枚のカードを提示されて数的不利となり、相手にリードを許し、粘り強く戦い死力を尽くしたが、逆転することはできなかった。
 キャプテンのFLサム・ケインは前半29分、タックルの肩が相手選手の頭部に直接コンタクトしてしまい、かなり危険なプレーと判断されレッドカード、早々に退場となってチームに迷惑をかけてしまった。

「とても傷ついている。説明する言葉を見つけるのは難しい。ここに来て2カ月が経ったが、頭の周りへのプレーには気をつけなければならないことはわかっていた。それ(レッドカード)が正しかったのか間違っていたのかを議論するつもりはない。もう変更することはできないんだ。残念ながら、私にとって永遠に抱えていかなければならないものになった」

表彰式後、うつむくオールブラックス主将のサム・ケイン(Photo: Getty Images)

 そう言って落ち込むケインについて、イアン・フォスター ヘッドコーチは「彼を非常に誇りに思っている」と擁護する。「私たちは皆、サムが舞台裏で試合やチームにどのように貢献してきたかを見てきた。彼はすばらしく、オールブラックスのキャプテンにふさわしい人物だった。それは大変な名誉であり、特権であり、彼は見事にやり遂げたと思う」

 バックラインで奮闘したCTBのリーコ・イオアネもキャプテンをかばった。
「今夜の試合は、サムのレッドカードによって負けたわけではない。我々にはチャンスがあったし、それを活かしていれば結果は違っていたかもしれない」
 約50分間を14人で戦わざるをえなくなったが、イオアネはそれが敗因だとは認めない。自分たちにはエナジーがあった。これまで何度も逆境に直面し、乗り越えてきたチームだと誇る。だが、必死の反撃は届かず、1点差の惜敗。
「今夜は私たちの夜ではなかった。それがフーティ(ラグビー)の厳しい現実だ。故郷のニュージーランド人は、サムとフォズ(フォスター)がこのチームを率いてきたやり方を誇りに思うはずだ。 彼らはここに来るまでに我々全員を元気づけてくれた。とにかく、我々はサムを誇りに思っている」

 この試合を最後にオールブラックスから退くベテランSHのアーロン・スミスは、すばらしい試合だったと振り返る。
「我々は持てるすべてを出し尽くしたと思う。そして、チャンピオンの南アフリカは重要な瞬間に力を保った。彼らはその小さな瞬間を見事に決めたのだ。それがラグビーだ。それがテストマッチであり、時に残酷だ。参加できてすばらしい試合だったし、今夜の我々の努力を誇りに思う」

 オールブラックス歴代最多出場となる通算153キャップ目を戦った35歳のLOサミュエル・ホワイトロックも、インターナショナルのキャリアを終える。2011年大会と2015年大会で金メダル獲得に貢献し、今回の決勝に勝てば、前人未到のワールドカップ3大会優勝という金字塔を打ち立てるところだった。惜しくもそれを成し遂げることはできなかったが、2010年の代表デビュー以来、彼が重ねてきた功績は世界中から称賛される。
「どのジャージーも特別だ。母国のためにプレーすることは絶対的な特権であり、誰と対戦するかは関係ない。ワールドカップの決勝でプレーするのは特別なことだ」

有終の美をW杯優勝で飾ることはできなかったNZのイアン・フォスターHC(Photo: Getty Images)

 そして、今大会を最後に退任することを決めていたフォスター ヘッドコーチにとってもラストゲームとなった。昨年、オールブラックスは不振が続き、指揮官の解任を求める声も高まっていたが、見事にチームを立て直して決勝に導いた手腕は称賛に値する。
「すばらしい決勝戦だった。優勝を達成した南アフリカを祝福したい。我々にとっては残念な結果になり、胸が張り裂けるようだが、私は自分たちのチームを非常に誇りに思っている。多くの浮き沈みがあり、最後は負けてしまったが、このチームは最善を尽くした。早い段階でレッドカードを受けながらも反撃した。選手たちを誇りに思う」

 来季のオールブラックスは、クルセイダーズを率いて7年連続でスーパーラグビーのタイトルを獲得したスコット・ロバートソンがヘッドコーチに新任し、いくつか選手も入れ替えて、新しい道に進む者たちのレガシーを引き継ぎ、4年後のワールドカップを目指すことになる。

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