日本代表 2023.10.23

【国際車いすラグビーカップ④】日本、豪州に屈す。決勝進出を逃す

[ 張 理恵 ]
【国際車いすラグビーカップ④】日本、豪州に屈す。決勝進出を逃す
乗松聖矢は試合後「今日の負けは変わらないが、応援してくれる人のために勝って次に進みたい」と語った。(撮影/張 理恵)



 車いすラグビーの世界一決定戦「International Wheelchair Rugby Cup Paris 2023」(フランス・パリ)は大会4日目の10月21日には、準決勝と5-8位トーナメントの4試合がおこなわれた。
 日本は準決勝・第2試合でオーストラリアと対戦し、48-52で敗れ決勝進出を逃した。

 試合開始早々、日本は強いプレッシャーをかけ、相手のパスミスやインバウンド(スローイン)エラーを引き起こしてターンオーバーを立て続けに奪う、上々の立ち上がりを見せる。
 同地区に属する両者はどの国よりも対戦回数が多く、お互いの手の内を知り過ぎるほどの相手だ。

 ラインアップごとの特徴に合わせた攻め方で一気に4点のリードを奪った日本は、若干のミスはあったものの15-13で第1ピリオドを終えた。

オーストラリアの絶対的エース、ライリー・パットを振り切りトライを奪う島川慎一。(撮影/張 理恵)

 アジア・オセアニア選手権(6/29〜7/2、東京)では、予選ラウンド・決勝と3勝0敗で日本が圧倒しただけに、オーストラリアに対して戦い方を知る日本に分がある、というのが大方の予想だった。

 鮮やかな連係プレーで相手のパスコースを徹底的にふさぎ、パスミスを連発させると相手のメンタルまで削る。
 そしてメンバーをどんどん入れ替え、素早いトランジションで攻め込み、相手に一切流れを渡さない——。記憶に新しい、『日本のラグビー』を期待した。

 けれどもコートにあったのは、相手のペースに引きずり込まれ、連係のぎこちなさから苦戦を強いられる日本の姿だった。
 代表歴の長い乗松聖矢からは「エリアや相手の行く先を見られずに、視線が人にばかり行ってしまった」という声が聞かれた。

 スペースを広く使う日本のスタイルが出せない、あるいは出させてもらえない状況に、日本の選手からは珍しくフラストレーションのようなものが見え始めた。
 チームみんなに見えていた『同じ絵』が霞んでいく。

 前半を25-27のビハインドで終えた日本。
「日本は後半に強い」という印象がインプットされている今、見る者は終盤にかけての逆転劇を思い描いていたはずだ。

 日本はなんとか流れを引き寄せようとメンバー交代を繰り返しながら、ターンオーバーの機会をうかがう。
 そうはさせまいと、こちらの動きを良く知るオーストラリアは、タイミングを見計らってパスカットを狙う。

 ビハインドのまま最終ピリオドに突入した日本は、フロントコートになかなかボールを運べず、7分、6分…と削られていく残り時間に焦りを見せる。
 ベンチからは仲間の背中を押す声が、ひっきりなしにコートに送られる。あきらめたら、そこで終わり。勝利を信じ、走り続けた。

日本はオーストラリアの強いプレッシャに苦戦を強いられた。中央は池透暢。(撮影/張 理恵)

 しかし。とどめを刺すような、オーストラリアの絶対的エース、ライリー・バットのトライが決まり試合終了。48-52で日本は決勝への道を閉ざされた。
 ノーサイドの瞬間、オーストラリアは派手に喜びを表すことなく、ライバルへの敬意を払い、両者は健闘を称え合って固い握手を交わした。

「対応力」を課題に挙げた乗松は、「相手の方が1枚も2枚もうわ手だった。そして自分たちが弱かった。そういうゲームだった」と振り返った。

 それでも、全員で戦い抜いた試合だった。
 フル代表初選出の草場龍治は、「頭が真っ白になって、練習してきた動きが全くできなかった」と反省を口にしたが、チームのみんなが成長を感じるほど、堂々としたプレーを世界の舞台で見せた。

 そして、「試合の中で相手に対応しきれず、ボールキープの場面でも自分たちの甘さがでた。ただ、連係の精度をまだまだ上げられるという部分では、昨日(フランス戦)と今日の負けから得たものは多かった」と語る池崎大輔。

 池崎は3位決定戦に向け、「選手同士でしっかり共通認識を持てるような話し合いをして試合に臨みたい。岸光太郎ヘッドコーチ就任後、初めての大会を戦う中で、チームもまとまりつつある。日本にはいい選手がたくさんいるし、ラインアップもたくさんある。明日はみんなで勝ちにいきたい」と力を込めた。
 日本の3位決定戦は、フランスとの再戦となった。

 日本戦に先立ちおこなわれた準決勝・第1試合では、カナダが地元・フランスを51-50で下し決勝進出を果たした。
 また、5-8位トーナメントでは、イギリスがニュージーランドに46-42で、アメリカがデンマークに58-57で勝利し、イギリスとアメリカが5-6位決定戦、ニュージーランドとデンマークが7-8位決定戦を戦うことになった。

【10月21日(大会4日目) 試合結果】
◎準決勝
日本 ● 48-52 〇 オーストラリア
カナダ 〇 51-50 ● フランス

◎5-8位トーナメント
イギリス ○ 44-42 ● ニュージーランド
アメリカ ○ 58-57 ● デンマーク

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