ワールドカップ 2023.10.16

タフだったディフェンディングチャンピオン 8万人のアウェイでも屈せず南アのプライドを示す

[ 編集部 ]
タフだったディフェンディングチャンピオン 8万人のアウェイでも屈せず南アのプライドを示す
フランス代表との死闘を制して抱き合う南アフリカ代表の選手たち(撮影:松本かおり)


 ラグビーワールドカップで連覇を狙う南アフリカ代表“スプリングボックス”は、タフだった。そして、やはり強かった。約8万人が収容できるパリ郊外のスタッド・ド・フランスは、その多くが開催国フランスの人々で埋まり、完全アウェイの雰囲気のなかでの準々決勝だったが、死闘の末に1点差でフランス代表を下し、ノックアウトステージに生き残った。

「ものすごい雰囲気だった。国歌を聞いたとき、この試合がどれほど騒がしいものになるかわかった」
 南アフリカ代表キャプテンのシヤ・コリシは、激闘を終えてそう語った。
「厳しい戦いだったが、すばらしい試合だった。(自国開催大会で初優勝を目指した)フランスチームは4年間かけて強化してきたので、我々はこの試合に勝つために何か特別なものが必要になるだろうということはわかっていた」

 相手に先制を許したあと、再びピンチを迎え点差を広げられそうになったとき、LOエベン・エツベスの懸命のパスカットが流れを変えた。互いにやられたらやり返すシーソーゲームとなり、前半22分に同点に追いつかれたが、WTBチェズリン・コルビが猛チャージで相手のコンバージョンを阻み、チームを奮い立たせた。イエローカードをもらって後半最初の10分間は1人少ない苦しい時間帯だったが、スクランブルディフェンスで耐えた。

「もしあれがなかったら、我々は明日、家に帰るところだった。私たちは決してあきらめない。この試合で私たちが示した特性と規律を本当に誇りに思う」(コリシ)

 ジャック・ニーナバー ヘッドコーチも、必死にプレーし続けた選手たちを称賛する。
「勝負を分けたのは1点だった。選手たちのおかげだ。彼らは最後まで粘ってくれた。何度か隙を突かれたこともあったが、スクランブルで、選手たちの努力はものすごいものだった」
 イエローカードが出されても、南アフリカ代表の選手たちは試合のなかで解決策を見つけた。2019年のワールドカップ優勝メンバーも多く残り、これまでタフな試合をいくつも重ねており、経験の賜物だと言える。

 準決勝ではイングランド代表と対戦する。前回大会の決勝で戦った相手だ。
「非常に厳しい挑戦になるだろう」とSHファフ・デクラークは警戒する。「彼らは(今回の)ワールドカップ前に苦しんでいたが、間違いなく状況を好転させ始めている。我々はリカバリーに集中し、しっかり準備したい」

 フランス代表との準々決勝を制してプレーヤー・オブ・ザ・マッチに選ばれたHOボンギ・ンボナンビは、イングランド代表との戦いへ向け、スクラムが100パーセント鍵になると見ている。「我々はスクラムとモールにプライドを持っているが、今日は試合を危うくするミスがいくつかあったので、その点で自分たちを見つめ直す必要があるのは間違いない」。
 来週以降、フランスの人々が自分たちを応援してくれるかどうかはわからないが、「我々には全力でサポートしてくれる6000万人の南アフリカ人がおり、いまのところはそれで十分だと思うが、もし、フランス人が我々をサポートしてくれるのなら、大歓迎だ」とコメントした。

 ワールドカップ連覇への期待が高まる。しかし、FLピータステフ・デュトイは先を見すぎず、試合ごとに集中していきたいと語る。次にぶつかるイングランド代表は4年前の悔しさを忘れておらず、タフな相手であることはわかっている。
「ボールはどちらに転がってもおかしくない。しっかり準備を整えて、計画を忠実に守りたい。非常にエキサイティングだ。我々自身と我々の国に誇りを持てる新たな機会となる」

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