【再録・解体心書⑧】驚異の成長期。ワーナー・ディアンズ
高校時代に出会った恩師・相亮太監督の教えもあり、アスリートとしての思考には主体性がある。自分の体、自分のメンタル、自分の未来。周囲への影響。たかがラグビー、されどラグビー。
今、プロとしてビルドアップに専心する心境は、良い意味で閉じている。目の前のことに集中する。今、足元にあるステップを一つ登ることに心を傾ける。
ベンチで過ごした試合を含めて17試合。リーグワンのシーズンは毎週が、凝縮したレッスンの連続だった。一段ずつ踏み締めてきた階段は、知らず自分を見晴らしの良い高さまで連れてきてくれた。その先に、夏のジャパン、ウルグアイ戦、フランス戦が待っていた。
「リーグワンで試合に出ることには平気になったけれど、一つひとつのコンタクトレベルを上げることはずっとテーマだった。この試合はタックル、この試合はキャリーにフォーカス。できれば次の段階に進むし、できなければ原因を理解してもう一度チャレンジする。
週ごとのテーマは、コーチと話す中で固めていく。自分はこう感じている、ということをコーチと確認していくイメージ。迷ったら、自分の大きな目標を思い出します。『世界一のロックになる』。世界一のロックだったら、どうするかを考えればいい」
リーグワンから、いっときおいてジャパンの夏キャンペーンへ。
「自分はもともと、フィットネスはまあまあで、フィジカルも上がってきたところ。やらなきゃいけないのはハードワークだったと思います。これは今もずっとテーマ。
ウルグアイ戦(第2テスト)、コーチには『プレーはいいよ』と言ってもらえたけれど、自分としては、よくなかった。アクションとアクションの間をもっと頑張らないといけない。
いいアクションだとしても1回で終わったら意味がない。それがハードワーク。フランス戦も、それをずっと意識していた。少しは成長できたかなと感じたけど、まだまだ。それを、次の秋の合宿でも続けてやっていきたい」
「第2テスト、勝負は、惜しかったですよね(日本15-20フランス)。僕は今、あんまりスコアとか気にしないでやる方なんですが、交代してベンチに座ったらもう70分、『お、勝ってる…』(日本15-13フランス)。次の瞬間、相手が逆転トライしました(笑)」
ちょっと待った。相手は世界ランキング時点1位のフランス、相手については何も意識をしなかった?
「ウルグアイ戦の段階ではまだ不安があったかもしれない。フランスの2戦はもう、自分のやることに集中していました。プレーとプレーの間を、今日はどれだけできるか。フランスの選手、確かに素晴らしかった。タックル受けた瞬間、あっ重いなと思ったけれど、結果自分も前には出られていたから…。俺も、強いはずです」
自分を成長させるプログラムについてもう少し尋ねてみたい。毎週、毎週、ではなく、長い期間をかけてビルドアップする事柄は持っているか。
「お父さんの影響もあって、4歳でラグビーをしました。バスケットボールも楽しくやっていたし、小学校時代はSO、ずっとスキルの練習はやってきてるつもりです。身長が伸びてNO8やLOになって、ジャンプの技能も覚えられた。だから、スキルのベースについては、もう今持っているもので、だいたいイイ。今から取り組むのはハードワーク、そういう段階にいると思っています」
自分にとって一番成長できるやり方を。こうした思考の幅をもたらしているのは、ラグビーのメンターでもある父・グラントさんだ。