相手をリスペクトして準備する。未来へと続く決戦へ、リーチ マイケルは「新しい歴史を作る」
決戦は35歳で迎える。
誕生日の10月7日、リーチ マイケルがアルゼンチン戦への高なる気持ちを口にした。
プールステージ大詰めのW杯2023。プールDでは、イングランドがすでに1位での次ステージ進出を決めている。
それに続く2枠目を、それぞれ3戦を終えて2勝1敗同士の2位・アルゼンチンと3位・日本が争っている(ともに勝ち点9。順位は得失点差によるもの)。
大一番に6番で先発するリーチは、「日本ラグビーにとってすごく大事な試合」と話す。
ベスト8進出となれば2019年大会に続き、史上2度目となる。しかし、海外開催大会では初めてだ。
そこまで行けば、さらなる高みも見える。
「ベスト4になるチャンスをものにできたら、新しい歴史になる」
大会に入って調子を上げるチームについて、「試合ごとに成長してきています」と実感する。
「(より良くなる)最後のピースは明日の試合。最後の20分は、足が疲れたり、モメンタムがいったり来たりします。そこでのコントロールを修正できれば、完成した日本代表を出せる」
アルゼンチン戦は間違いなく激闘となる。決着は終盤までつかないだろう。
チリ戦こそ終盤に突き放せたが、イングランド戦、サモア戦と、ラスト20分に苦しんだ。その時間帯の戦い方が重要だ。
敗れたイングランド戦後、チームには「サムライタイム」という言葉が生まれた。
苦しい時間帯に、もう一度全員でギアを上げる。そのスイッチとなる言葉だ。
大事な時間帯に、どちらがモメンタムを得ているかで勝負は決まる。
アタックしたいのにエナジーが足りない。インパクトプレーヤーが試合に影響を与えられなかった。それらは、過去2戦の反省点。
「そうならないためには何が必要か。どういうメンタルでいるべきか。そのあたりはコーチ陣から指示が出ています」と心強い。
このチームはバランスがいい。
「2019年大会を戦ったベースがあり、その大会で感じたものを持っている選手、2015年大会で感じたものを持っている選手たちがいるのは、今回の強みだと思います。準備の仕方を知っているし、プレッシャーへの対応の仕方を知っています。それにプラスして、若い選手はエネルギーもあるし、ポテンシャルも高い。そしてタフな経験もしています」
「試合ごとにスクラム、ラインアウトが良くなってきている」と体感している。
「スクラム、ラインアウト、ディフェンスがよければ、日本代表のアタックで、どこにでも勝てる自信があります」
アルゼンチン戦は、それを証明する80分になる。
33歳前後、ケガに苦しんだ時期があった。本人はその時期を「劣化した」と表現する。
しかし、手術を経てハードトレーニングができるようになった結果、輝きを取り戻した。
「(ケガを)乗り越えて自信がついた」と力強い。
同い年の山中亮平が、一度は代表スコッド外となりなからも、あらためて大会中に復帰したことも「嬉しい」。
「歳だからできないという言い訳はしないで、自分のプレーを見返しながら、どんどん成長したいです」
世界で勝てなかった時期も知っているから、勝つことで日本ラグビーがどう変化したか、自分たちに向けられる目がどう変わったかを理解する。
だから、海外開催で初めてノックアウトステージに進めば、またワンランク上に進めると信じる。
「さらに、ここにいる選手、スタッフにとっても、次の大会につながる大きな経験になると思います」と未来を見る。
2011年大会から、W杯で16戦を戦ってきた男は、「サモア戦に勝った自信はチームにとって大きい」と証言するも、「勘違いはしていない」と、全員が地に足をつけて準備を重ねていると言った。
「アルゼンチンをリスペクトして、いい準備ができています」と話す表情に自信が浮かぶ。
自身が出場した過去のW杯16戦の成績は7勝8敗1分け。南米の雄に勝てば星を五分にできる。
さらに勝ち越せれば、ふたたび歴史を変える当事者になれる。