松田力也の復調支えた。日本代表のフルーティ コーチ、対イングランド代表の焦点を語る。
勇気を引き出そうとした。
ラグビー日本代表の首脳陣が選手たちに手紙を送ったのは、ワールドカップ・フランス大会のプールステージ初戦に先立ってのことだ。ジェイミー・ジョセフ ヘッドコーチの発案なのだと、今年入閣したリキ・フルーティ アシスタントコーチは言った。
「テクニック、戦術面ではなく、人としてつながりを求めるようなものです。パワフルな言葉です。私も過去、ロンドンワスプスでプレーしていた時、シーズンのファイナルで当時のヘッドコーチだったショーン・エドワーズから手紙をもらったことがあります。『張ってください』の一行。いまだに、その手紙は家にあります」
現地時間9月10日、スタジアム・ド・トゥールーズ。日本代表は時折、ミスを重ねながらも、ハードに挑むチリ代表を下した。42-12。
特に、SOで先発の松田力也が6本あったコンバージョンキックをすべて成功させた。
大会直前期には外すこともあっただけに、今回のキックの精度にはフルーティも満足げだ。
「彼は練習で80パーセント以上の成功率を残している。リーグワン(埼玉パナソニックワイルドナイツ所属)でもそう。今回のことで、自信はついたと思っています」
復調ぶりを解説する。
「彼はほぼ毎日、キックの練習をしています。彼自身のプロセスを作り、それを遂行しています。具体的には、週の初めのほうに自分のリズムで蹴る。球への足の当て方、身体の姿勢について確認する。そして翌日以降、全体練習の前後にキックを蹴る。今週もよく蹴っている。次戦でも、自信を持ってやってくれるでしょう」
チリ代表戦では、4トライ以上奪取でもらえるボーナスポイントを含めて勝点5を獲得。参加するプールDで暫定首位となった。これから本格化する上位争いへ、好条件を揃えた。
同17日には、スタッド・ド・ニースでイングランド代表とぶつかる。イングランド代表は、日本代表が初めて8強入りした4年前のワールドカップ日本大会で準優勝に輝いている。
ニュージーランド出身のフルーティは、現役時代にイングランド代表でプレーしている。
その頃のナショナルチームで主将だったのは、スティーブ・ボーズウィック。同国の現指揮官だ。
相手との絆は深いフルーティは、パワーゲームで鳴らすライバルとのバトルを展望する。「プレッシャー」という単語を繰り返しながら。
「タフな試合になります。イングランド代表は規律のある状況からプレッシャーをかけてくる。ただ我々は、彼らがどういうゲームをしてくるのかを知っています。当日はフィジカル面でのプレッシャーに負けず、逆にプレッシャーをかけ返す。そうすれば、スペースにボールを動かすジャパンラグビーが実現できる。そしてトライを獲れる」
向こうが「プレッシャー」をかけてくる空中戦、肉弾戦で真っ向勝負を仕掛け、その流れで自分たちのお家芸を繰り出したい。
連続攻撃だ。
特に、カウンターアタックで活路を見出す。蹴り合う流れで望む位置で攻め始めるや、有機的に動くのを目指す。
「カウンターアタックからジャパンラグビーをする。そのシナリオでも練習してきた。スペースにボールを運び、勢いを作り、アタックでプレッシャーをかけたい。バックスはスキルを使ってもらいたい。パス、キックをスペースに動かす。自分たちのバックスにはそうした選手がたくさんいるので、その能力を活かして得点を獲って欲しい」
チームは15日午前、第一拠点にあたるトゥールーズで練習。その足でニースの空港を経て、モナコのトレーニング会場へ移った。フルーティがメディアに応じた。
「私は選手たちのスキルを成長させる。スペースを見られて、そこへアタックするよう、ゲームドライバーに教えていっているつもりです」
自らの職責を全うする。