松田力也の「自信」。イングランド代表戦でも「自分たちのラグビーをすれば絶対にいける」
9月10日、スタジアム・ド・トゥールーズ。ラグビー日本代表は、ワールドカップ・フランス大会の初戦に挑んでいた。
4年に一度の大舞台でのファーストゲームとあり、チームは無形の重圧からかミスを重ねていた。それでも、初出場のチリ代表を42-12で制した。
「初めての舞台の人もいる。皆が緊張している。そこでどうコントロールするか、コミュニケーションを取るかが重要でした。ミスは絶対ある。それを連鎖させないで相手にプレッシャーをかけ直すといったことも含め、いい判断ができたり、同じ絵を見られているなと思えたりすることが多かったです」
こう振り返るのは松田力也。この午後は背番号10をつけ、司令塔のSOとして先発フル出場を果たしていた。
防御を引き寄せながらのパス、攻防を仕切り直すためのキックを重ねた。堂々とタクトをふった。
「本当に、この舞台で10番を背負って勝利するのを目標にやってきた。それができたのは嬉しい。ただ、全部が完璧だったかと言われたらそうでもない。いいところを伸ばし、悪いことをしっかり改善し、まだまだ積み重ねたいです」
6本あったゴールキックもすべて決めた。8月26日に敵地でおこなったイタリア代表戦ではやや当たりがよくなかったものの、重要なこの一戦へは修正を施してきた。
「自分のキックを蹴れば入ると思った。プレッシャーのなかでも、どんな状況でも自分のキックを蹴ることにフォーカスしてきた。入れに行くのではなく、自分のキックを蹴る」
身長181センチ、体重92キロの29歳。昨年5月、左ひざ前十字靭帯を断裂した。同年12月からの国内リーグワンで復帰を果たすも、しばらく国際舞台から遠ざかっていた。
首脳陣には本調子ではないと判断されてか、7月以降の強化試合では6戦中2度の先発出場に止まった。ジェイミー・ジョセフ ヘッドコーチは、SOの定位置争いでは22歳の李承信が「先を行っている」と発言したこともある。
もっともその指揮官自身、今度のフランス大会の初陣へ「経験を重視」。松田は2019年の日本大会に出て8強入り。当時は10番をもらえなかったことから、「2023年には10番で」と段階的に進歩してきていた。
そして当日、チームの期待に応えた。自信をつけたか。
「もともと(自信は)あったけど、結果につながり、より前向きにいけるかなと」
17日にはスタッド・ド・ニースで、プールDの2試合目に挑む。対戦するイングランド代表は昨今、やや低迷も、9日にあった今大会初戦でアルゼンチン代表を27―10で破っている。
序盤のレッドカードで数的不利を強いられるなか、ロングキック、ハイパント、SOのジョージ・フォードのドロップゴールで主導権を握った。アルゼンチン代表は、焦りからかミスを重ねていた。松田はどう見るか。
「(イングランド代表は)14人のラグビーをして勝てる、強いチーム。ただ、チャンスはゼロじゃない。自分たちのラグビーをすれば絶対にいける。自分たちにフォーカスを置いてやりたいです」
トニー・ブラウン アシスタントコーチが構築するスリリングなアタックを、他国にまねできないスタイルだと信奉する松田。周りとつながりながら持てるスキルを駆使し、白星をつかみたい。