ワールドカップ 2023.08.10

エディー「難しい決断だった」。豪代表W杯メンバー、前主将フーパーと司令塔クーパーは落選。

[ 編集部 ]
エディー「難しい決断だった」。豪代表W杯メンバー、前主将フーパーと司令塔クーパーは落選。
ワールドカップに臨むワラビーズの選手たち(Photo: Getty Images)


 母国オーストラリアに戻って今年から同国代表“ワラビーズ”を率いることになったエディー・ジョーンズ ヘッドコーチは、開幕まで1カ月を切ったラグビーワールドカップ2023フランス大会へ向け、難しい決断を下した。8月10日にワールドカップの登録メンバー33人を発表したが、キャプテンとして長年けん引してきた世界的バックローワーのマイケル・フーパーを外し、日本でも人気が高い経験豊富なSOクウェイド・クーパーもワールドカップメンバーには選ばなかった。

 ジョーンズ体制となってPRジェームズ・スリッパーとともに共同キャプテンを任されていた代表125キャップ保持者のフーパーだが、ふくらはぎの負傷で直近の3試合を欠場し、回復に時間がかかっていることから、指揮官は外す決断をした。
 かつてトヨタヴェルブリッツでも活躍し、ワラビーズ歴代最多の69試合でキャプテンを務めてきた31歳のフーパーだが、昨年はマインドセット(心理状態)の問題を理由に代表活動から一時離れ、休養を経て再びゴールドジャージーを着たものの、ワールドカップ直前にけがに苦しみ、地元メディアでは「伝説的なキャリアに終止符が打たれる可能性がある」という声も出ている。

「本当に難しい決断だった」と語ったジョーンズ ヘッドコーチ。「彼はフランス戦(8月27日のウォームアップゲーム)に間に合うかもしれないが、それはわからない。ワールドカップへ向け、これがベストの33人だと決めた」

6月のW杯ジャージー発表会で笑顔を見せていたマイケル・フーパー(左)とクウェイド・クーパー(Getty Images)

 そして、創造性豊かな天才的プレーメーカーと言われる35歳のSOクーパーは、花園近鉄ライナーズでの経験も大きく影響して2021年に4年ぶりのワラビーズ復帰を果たし、10番として輝いていた。しかし、昨年8月のアルゼンチン戦でアキレス腱を断裂。懸命のリハビリを経て復活し、今年のワラビーズ4戦すべてに出場(2試合先発)していたが、ニュージーランドとの2連戦ではデビューしたばかりの22歳SOカーター・ゴードンに10番を奪われていた。ゴードンは経験が浅く、ベテランは必要と思われたが、ジョーンズ ヘッドコーチはワールドカップスコッドにクーパーを選出せず、予備軍のオーストラリアAチームでトレーニングを続けていたSOバーナード・フォーリー(クボタスピアーズ船橋・東京ベイ)にも切符は与えられなかった。

 SOはゴードンのほか、ユーティリティBKのベン・ドナルドソンがカバーできる。

「クウェイドはアキレス腱の重傷から復帰したが、おそらく彼が望んでいるほど俊敏ではない。我々にはドナルドソンという若い選手がいる。これが今後の我々にとって最良の選択肢だと感じている」(ジョーンズ ヘッドコーチ)

粗さは目立つが将来性豊かな22歳のカーター・ゴードンが司令塔となる(Photo: Getty Images)

 落選したビッグネームはほかにもおり、7月15日のアルゼンチン戦で肩を骨折しながらもワールドカップを目指しリハビリを続けていたCTBレン・イキタウもワールドカップの33人枠には入らず、ザ・ラグビーチャンピオンシップ(南半球4カ国対抗戦)のスコッドに名を連ねながら十分にアピールできなかったFL/NO8ピート・サム、FBトム・ライト、ユーティリティBKリース・ホッジも選外となった。さらに、フォーリーと同じく今年はオーストラリアAでのスタートとなったワールドカップ経験者のCTB/SOジェームズ・オコナー、HOフォラウ・ファインガア、LOラカン・サラカイアロトも昇格することはできなかった。

 その一方、8月5日のニュージーランド戦で手を負傷し状態が心配されたCTBサム・ケレビ(東京サントリーサンゴリアスから浦安D-Rocksへ移籍)はワールドカップスコッド入り。WTBマリカ・コロインベテ(埼玉パナソニックワイルドナイツ)とともに活躍が期待される。

 3番(右PR)では、アラン・アラアラトアが7月29日のニュージーランド戦でアキレス腱を断裂して涙をのみ、同試合で交替したタニエラ・トゥポウも肋骨損傷で心配されたが、トゥポウはワールドカップへ向かうこととなり、2人の代役として翌週の試合で3番をつけ奮闘したポネ・ファアマウシリも大舞台への切符をつかんだ。

 スコッド33人中、ワールドカップ経験者は8人(PRのスリッパー、トゥポウ、HOジョーダン・ウエレセ、LOウィル・スケルトン、SHニック・ホワイト、CTBのケレビ、ジョーダン・ペタイア、WTBコロインベテ)のみで、平均年齢26歳(16人が24歳以下)、テストキャップ数は1人平均20という若いチームだ。18歳のWTB/FBマックス・ジョーゲンセンらテストマッチ未経験の選手も3人選出されている。

新キャプテンに任命されたウィル・スケルトン(Photo: Getty Images)

 そして、2015年大会以来のワールドカップ出場となる31歳の巨漢LOウィル・スケルトンがワラビーズ87代目のキャプテンに任命され、副キャプテンは24歳のSHテイト・マクダーモットが務めることになった。
 ジョーンズ ヘッドコーチは「ウィルはよいチームマンだ。彼はヨーロッパの多くの優勝チームでプレーしており、ほぼ共通のタッチをチームにもたらして一つにまとめている。彼は副キャプテンのテイトによって十分サポートされるだろうし、我々にはスリップス(スリッパー)やニック・ホワイト、アンドリュー・ケラウェイ、サム・ケレビといった経験豊富な選手たちもいる」と述べ、リーダーシップを期待する。

 ジョーンズ ヘッドコーチ率いる新体制となったワラビーズは今年まだ勝っておらず、4戦4敗。24年ぶり3度目のワールドカップ優勝へ向けては厳しい目が向けられるが、指揮官は、「若く、エキサイティングなスコッドであり、成功するチームになるだろう。我々は順調に進歩している。課題は、改善を続けることだ。若い選手こそがオーストラリアのラグビーを前進させることができると考えている。若い選手たちはチャンスをつかみとった。彼らは成功したいと思っているし、必ず成功するだろう。その興奮が全員に伝わっている。我々はいいところにいるのだ。何人かの人を驚かせることになるだろう。専門家たちは我々を見放し、誰も勝つことができるとは信じていないが、我々は信じている。コーチも信じているし、選手も信じている。重要なのはそれだけだ」とコメントした。

 ワラビーズは8月27日にフランスと本番前最後のテストマッチをおこない、ワールドカップはプールCでジョージア、フィジー、ウェールズ、ポルトガルと対戦する。

ワラビーズを着実に成長させている名将エディー・ジョーンズ(Photo: Getty Images)

<ラグビーワールドカップ2023 オーストラリア代表>
【PR】
ブレイク・ショップ Blake Schoupp(ACTブランビーズ/uncapped/23歳)
アンガス・ベル Angus Bell(NSWワラターズ/23 caps/22歳)
ジェームズ・スリッパー James Slipper(ACTブランビーズ/131 caps/34歳)
タニエラ・トゥポウ Taniela Tupou(クイーンズランド・レッズ/48 caps/27歳)
ポネ・ファアマウシリ Pone Fa’amausili(メルボルン・レベルズ/5 caps/26歳)
ゼイン・ノゴール Zane Nonggorr(クイーンズランド・レッズ/2 caps/22歳)

【HO】
デイヴィッド・ポレッキー David Porecki(NSWワラターズ/14 caps/30歳)
ジョーダン・ウエレセ Jordan Uelese(メルボルン・レベルズ/18 caps/26歳)
マット・フェイスラー Matt Faessler(クイーンズランド・レッズ/1 cap/24歳)

【LO】
リッチー・アーノルド Richie Arnold(トゥールーズ〔FRA〕/4 caps/33歳)
ウィル・スケルトン Will Skelton(ラ・ロシェル〔FRA〕/28 caps/31歳) ※主将
マット・フィリップ Matt Philip(メルボルン・レベルズ/28 caps/29歳)
ニック・フロスト Nick Frost(ACTブランビーズ/12 caps/23歳)

【LO/FL】
トム・フーパー Tom Hooper(ACTブランビーズ/3 caps/22歳)

【FL/NO8】
ロブ・レオタ Rob Leota(メルボルン・レベルズ/16 caps/26歳)
ジョシュ・ケメニー Josh Kemeny(メルボルン・レベルズ/1 cap/24歳)
フレイザー・マクライト Fraser McReight(クイーンズランド・レッズ/12 caps/24歳)
ロブ・ヴァレティニ Rob Valetini(ACTブランビーズ/34 caps/24歳)
ランギ・グリーソン Langi Gleeson(NSWワラターズ/3 caps/22歳)

【SH】
ニック・ホワイト Nic White(ACTブランビーズ/63 caps/33歳)
アイザック・ファインズ=レレイワサ Issak Fines-Leleiwasa(ウェスタン・フォース/uncapped/27歳)
テイト・マクダーモット Tate McDermott(クイーンズランド・レッズ/25 caps/24歳) ※副将

【SO】
カーター・ゴードン Carter Gordon(メルボルン・レベルズ/4 caps/22歳)

【SO/FB】
ベン・ドナルドソン Ben Donaldson(NSWワラターズ/2 caps/23歳)

【CTB】
サム・ケレビ Samu Kerevi(浦安D-Rocks/45 caps/29歳)
ララカイ・フォケティ Lalakai Foketi(NSWワラターズ/5 caps/28歳)
アイザイア・ペレセ Izaia Perese(NSWワラターズ/5 caps/26歳)
ジョーダン・ペタイア Jordan Petaia(クイーンズランド・レッズ/27 caps/23歳)

【WTB/FB】
マリカ・コロインベテ Marika Koroibete(埼玉パナソニックワイルドナイツ/55 caps/31歳)
スリアシ・ヴニヴァル Suliasi Vunivalu(クイーンズランド・レッズ/2 caps/27歳)
マーク・ナワンガニタワセ Mark Nawaqanitawase(NSWワラターズ/6 caps/22歳)
アンドリュー・ケラウェイ Andrew Kellaway(メルボルン・レベルズ/23 caps/27歳)
マックス・ジョーゲンセン Max Jorgensen(NSWワラターズ/uncapped/18歳)

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