【日本代表】下川甲嗣、巡ってきたワンチャンスに仕事量をアピール。
予想外の早い出場に興奮した。
しかし、「チームで決められている6番の仕事をしようと集中しました」と、落ち着いて力を出した。
「ラグビーテストマッチ 2023 サマー・ネーションズシリーズ」
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8月5日、秩父宮ラグビー場でおこなわれたリポビタンDチャレンジカップ2023パシフィックネーションズシリーズのフィジー戦。ベンチスタートだった下川甲嗣(かんじ)はLOアマト・ファカタヴァの負傷退場により、前半23分、代わりにピッチに入った。
それまで6番に入っていたジャック・コーネルセンがLOに入り、下川はFLとして動き回る。
前半7分、FLピーター・ラブスカフニが相手の頭部へのプレーで退場していた。試合には12-35と敗れるも、一人ひとりが通常より運動量を増やさないといけない中で持ち味を出した。
パワーなど、フィジカリティの強さでは、周囲の外国出身選手に届いていない自覚がある。
それだけに、日頃から「仕事量では上回ろう」と意識してきた。
日本代表36人ではなく、代表候補10人の名簿に名前があるまま合宿に参加してきた。
国内で組まれているワールドカップ(以下、W杯)前の試合には、過去4戦出場機会なし。今回は、フィジー戦に出場予定だったLOワーナー・ディアンズが負傷したため急遽出番がきた。
「合宿中も、いつも自分の強みを出そうとやってきました。(代表候補だけど)いつケガ人が出るか分からない、可能性は絶対あると信じてやっていた」と話す。
その積み重ねが緊急事態で生きた。
本人は無我夢中で「覚えていない」というけれど、激しく接点に加わり続けた。
ジェイミー・ジョセフ ヘッドコーチも、難しい状況に対応した力を評価した。
東京サントリーサンゴリアスに所属する24歳。188センチ、105キロの体躯でよく働く。
ブレイクダウンにもアウトサイドの仕事にも強い。草ケ江ヤングラガーズ時代はBKで、福岡・修猷館に入学してからFWになる。
早大では1年時からレギュラーとなり、U20代表にも選ばれた。
バックロー、LOで自身の価値を発揮してきた。順調に成長の階段を昇っている。
昨年10月のオールブラックス戦の後半途中からピッチに立ち、初キャップを得た。
今回のフィジー戦は2キャップ目だった。
W杯イヤーの今季はなかなか試合機会に恵まれず、弱気になりかけたこともある。
「メンバーに入ることは簡単ではないと分かっていましたが、やはり辛い時はありました。でも、可能性があるならチャレンジしよう、踏ん張ろうと思ってやってきました」
そんな毎日を過ごし、メンタルもスキルも伸びた。
「合宿の毎セッションで、どうやって自分の強みを出していくかを考えました」
その姿勢を「チェイスし続けた」と表現する。
目標とするスキルレベルを追い求める。仲間でありライバルでもある存在を追い、追い越す。
自分との戦いは、そのまま力になった。
試合を振り返り、「やり切れたかどうかは分かりませんが、やり切る気持ちでプレーしました」と言う。
代表活動が始まってからの2か月も同じ気持ちだった。「やれることはやり切ったと思います。なので、あとは(W杯メンバー選考は)首脳陣に委ねます」と潔い。
同郷の東福岡出身で、先のサモア戦で初キャップを得た福井翔大とは1歳違い。高校時代に対戦経験もあり、同じポジション。いい関係性にある(下川が1学年上)。
「リーグワンでも対戦していますし、仲もいい。彼から学ぶこともあるし、僕は高めあってこられたと思っています」
W杯メンバーの発表は8月15日。24歳と23歳のふたりは、フランスでチームに勢いをもたらすことができるだろうか。