少人数校から人材発掘キャンプ参加。PR小山内快夢(北海道大野農業高校)
部員数は2人。
それでも楕円球を追ってきたから、この日があった。
「自分の成長が感じられました。チームでは出来ない練習もありましたし、自分が活躍できた部分もあって、楽しかったです」
充実感を語ったプロップは、片道6時間超をかけて、北海道・函館から長野・菅平にやってきた。
PR小山内快夢(おさない・かいむ)。174センチ117キロ。函館の北、北斗市にある北海道大野農業高校の2年生は、朴訥で真面目だ。
未完成だが一芸に秀でたスピード系能力、サイズを持つ“未完の大器”を集める、通称「ビッグマン&ファストマンキャンプ」。最先端プログラムによって指導する人材育成キャンプだ。
同キャンプは、2018年に野澤武史TIDマネージャーが発起人となって初めて開催された。6年目の2023年は、第2回TID(人材発掘・育成)キャンプとして7月30日(日)からの3日間、菅平で開催された。
今回から「(キャンプのユースコーチである)伊藤矢一監督の改革」(野澤TIDマネージャー)によって、候補者全員の動画を確認できるようになったという。PR小山内は約140人の候補者から、タレント発掘の専門家たちによって選抜された参加者44人の一人になったのだ。
代表ユースコーチ達からの指導を受けるキャンプも初めてなら、菅平も初めて。
参加前はワクワクと緊張が入りまじっていた。
「合宿はいつも北海道なので菅平は初めてで、本当にワクワクしていました。不安もあったんですが、来てみたら最高の環境でした。コーチの方々はみんな優しくて良い人で、一つひとつ丁寧に教えてくれました」
スポーツは身近だった。父は野球、母は陸上経験があるといい、大学生の兄はハンドボール部に所属している。
そんな小山内自身は高校からラグビーを始めた。
「中学までサッカーのフォワードをやっていました。たまたまサッカーの隣でラグビーをやっていて、そこに今の高校ラグビー部の先生がいて、声を掛けてもらいました。自分は身体がデカいので、ラグビーだったら活かせるなと思って始めました」
入学時は3年生がいたが、この春に新入生が入ってこなかった。2023年夏時点の正規部員は2人。助っ人5人を含めて活動しており、試合では合同チームで出場しているという。
そんな環境の小山内が見出され、全国から集った逸材たちと切磋琢磨。貴重な3日間で、課題と武器を確認できた。
「僕はラグビーはそこまで上手くないですけど、『人より倍』という活動は意識していました。キャンプでは、自分の強みは、コミュニケーション能力が高いことだと認識できました。課題は走りの部分です」
キャンプで最も印象的だった事柄を訊ねた。
「日本代表として振る舞う、という言葉が一番心に残っています」
キャンプでコーチが伝えた言葉、情熱は、若人の心にしっかり火を付けていた。
刺激を受けた小山内は、大学でラグビーを続けるつもりだ。
第一志望は国体予選で声を掛けてもらった関東の大学。将来は日本代表にもなりたいが、希望の職種もある。父、祖父と同じ仕事に就きたいのだという。
「将来は父も祖父もやっているトンネル掘り——土木関係の仕事をしたいと思っています。祖父は若い頃、青函トンネルを実際に掘った人です。父から当時の映像記録をみせてもらったこともあって、面白そうだなと思っています」
少人数校でも情熱を持続させる強さがある。将来の目標を定め、歩んでいく強さもある。少人数校の高校ラガーは、豊かでエネルギッシュだ。