国内 2023.07.29

新たな夢と役割、北の大地で。真継丈友紀レフリー

[ 編集部 ]
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新たな夢と役割、北の大地で。真継丈友紀レフリー
北海道高校選抜大会でアシスタントレフリーを務める。(撮影/松本かおり)



 東京から、熊本、札幌、大阪とまわって、最後は東京。
 ワールドカップ(以下、W杯)への準備を進める日本代表の国内5つのウォームアップゲームは、2019年のW杯実施スタジアムなどを転戦しながらおこなわれている。

 各スタジアムには多くのファンが訪れ、世界との決戦を控える日本代表選手を応援する。
 7月22日に札幌ドームでおこなわれたサモア戦には、2万2063人が駆けつけた。
 リーチ マイケルの母校・札幌山の手高校の生徒たちも、全校応援で偉大な先輩に熱を届けた。

 そのテストマッチ翌日、札幌山の手高校ラグビー部が神戸科学技術高校と試合をおこなっていた。
 月寒ラグビー場での一戦は、北海道高校選抜大会の準決勝。33-11と札幌山の手が勝利を手にした。

 同ゲームのアシスタントレフリーを、真継丈友紀(まつぐ・ともゆき)さんが務めていた。
 現在40歳。トップリーグ2021まで、トップレフリーとしてこの国の最上位リーグで笛を吹いていた。

 2019年4月から札幌に暮らす。妻の故郷で、小学校の教員を続けるためだ。
 それまで京都在住。新たなチャレンジだった。

 同年はW杯日本大会の年。北の大地でも2試合が開催された。
 札幌市はラグビー普及事業を展開するため、ラグビーに精通した人を探していた。真継レフリーに声が掛かる。市のスポーツ局に3年間出向することになった。

 その任務を終えた2022年からは、札幌市内の福住小学校で教壇に立っている。
 学校は、札幌ドームに近い場所にある。

 北海道移住後も2020年シーズン、2021年シーズンと、トップリーグで笛を吹いた。
 2022年1月に開幕するリーグワンでもピッチを走り回るつもりだった。

 前年のリーグで、それまで以上に自身のトレーニングや分析に力を入れたのもそのためだ。
 結果、担当試合でチームから疑問が届くこともなかった。

 しかし最上位リーグでのレフリングは、2021年シーズンで終わった。
 思いは届かず、突如ステージから姿を消すことになった。

 南京都ラグビースクールに入ったのが小3のとき。洛北高校、同志社大学でプレーを続けた。
 大学3年時からレフリーの道を目指した。ケガもあった。プレーヤーとしての限界も感じた。チームへの貢献を考えた。

 ラグビーへの愛情や周囲への貢献。そのマインドが真継レフリーの生き方を支えている。
 だから、華やかな舞台から離れたいまも笛を吹き続ける。現在も日本ラグビー協会公認A級レフリー。その知見は北海道ラグビーにとって貴重なものだ。

 花園の高校大会決勝でレフリーを務めたこともある人の笛は、北海道の高校生や周囲のレフリーを幸せにする。
 全国基準のレフリングはゲームを円滑に進める。選手たちがストレスを感じないからだ。

 試合が終われば、両チームの指導者と話す。プレーの印象を話し、最近のトレンドに話が及ぶことも。それに対応するレフリー目線の指導法を提案することもあれば、質問を受けることもある。
「皆さんの意欲の高さを感じます」と話す。

 北海道協会はトップ10レフリーを選び、全国レベルのレフリーの育成にも力を注いでいる。そこでアドバイスをする立場にある。
 トレーニングについてのアドバイスや、レフリングやルール解釈についてのディスカッションも。「みんなで成長していこう、というものを感じます」。

 トップレフリーとして積み上げてきたこと、京都で小学校教員とレフリー、普及活動に取り組んできたことを、北海道でも続けたい。地元の人たちに経験をシェアしたい。
 その実践力は、ラグビー普及事業に取り組んだ際、札幌市内の98パーセントの小学校でタグラグビーの普及を実施したことからも伝わる。

 先のサモア戦は、息子も通うラグビースクールの子どもたちを引率し、スタンドから見つめた。
 レフリー目線は職業病。リーチにレッドカードが提示されたときには臨時解説者となり、周囲の保護者たちにジャッジについて説明した。

 移住して5年目の夏。交友関係も広がり、この土地がますます好きになっている。
 北海道でラグビーと関わっている中で感じるのは、リーチの存在の大きさだ。
「彼のようになりたい、とラグビーを始める子もいますし、リーチを通してラグビーを知る人も多い」
 その影響力はリーチの人柄の良さもあるだろう。

 自分も偉ぶることなく、多くの人たちとともに歩んでいきたい。
「試合が終わればコーチや選手たちと、フラットな立場で、ルールやレフリングについて話せるのもラグビーの良さだと思っています」

 ワールドラグビーのエデュケーター資格の取得も視野に入れる。
 開拓の地で、仲間たちと前へ進む。

日本×サモアは一人のファンとして観戦した。(撮影/松本かおり)


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