「最後の最後」は自分が出る。シオサイア・フィフィタ、定位置確保へ意気込み。
瞳を輝かせ、微笑を浮かべ、シオサイア・フィフィタは決意を語る。
6月19日。参加するラグビー日本代表の浦安合宿が2週目を迎えた。9月からのワールドカップ・フランス大会を見据え、言葉を選ぶ。
「全てのスキル。パス、キック…。もっともっと、上げていかないと、ワールドカップメンバーには選ばれない。(本戦でぶつかる)イングランド代表、アルゼンチン代表に勝てない。練習が終わったら自主練をして、よくなるようにしないといけない」
この日のセッションでは実戦練習があり、キックの蹴り合いを確認した。
ジェイミー・ジョセフ ヘッドコーチ率いる現代表は、この領域を生命線とする。首尾よく陣地を取り、自分たちの望む位置から連続攻撃を仕掛けるには、長短のキックとそれを活かす動きが不可欠だ。
味方が球を蹴れば、まずタッチライン際のWTBが弾道を追う。捕球役に圧をかける。「簡単にキャッチさせない」。フィフィタはこのWTBを務める。蹴り合いにおいて、蹴らない人のタスクを全うしたい。
落ちたボールを相手が確保すれば、防御の時間が始まる。ここからは列をなして圧をかけ、短いフェーズで蹴り返させたり、ターンオーバーしたりするのがマストだ。
防御を個人的な課題とするフィフィタは、自らに言い聞かせるように言う。
「(自身が)抜かれないように、(味方の)FWに楽に仕事をさせるように」
身長187センチ、体重105キロのサイズで鋭く駆け、オフロードパス、背後へのキックと多彩な技を繰り出す。日本代表には2021年に初選出され、12キャップ(国代表戦出場数)を得た。
最近は苦しんだ。
所属していた花園近鉄ライナーズは今季、初昇格した国内リーグワン1部で16戦1勝。入替戦で連勝して下部降格こそ免れたが、上位層の洗礼を浴びたのは確かだ。フィフィタ自身もけがで序盤戦を欠場するなど、苦しい時間を過ごした。
本人は「(シーズン)後半になって、スピードも上がってきて」と手ごたえをつかむが、「前半戦は全然、僕自身、パフォーマンスもよくなかった」と振り返る。
ライバルの足音も聞こえる。WTBの定位置争いが激化しているのだ。
クボタスピアーズ船橋・東京ベイの木田晴斗は、今季のリーグワンで全体2位の16トライをマーク。左足のキックとフィジカリティの強さが買われ、今回、日本代表に初選出されている。
東芝ブレイブルーパス東京からは、ジョネ・ナイカブラが選出。これまでけがや家族の事情でチャンスをつかみきれなかったが、問答無用のばねとスピードには定評がある。
その他、隣のFBでもスタンバイ可能な選手がいる。
フィフィタは覚悟を決める。
「ポジション争いもあって、ひとりひとりにプレッシャーがかかっている。プレッシャーに負けないように、ほかのWTBに負けないように、日々の練習で努力して、最後の最後、(メンバーに)選ばれるように頑張っていきたいです」
日本代表は6月下旬まで浦安で過ごし、7月からは宮崎を拠点に各地で対外試合を重ねる。まずはこのゲームで存在感を発揮し、これまで固めてきた立場をより確固たるものにしたい。