【関東高校大会】歴史的キックオフ。茨城合同(日立一、太田一、磯原郷英)敗れるも、晴れ舞台楽しむ
みんなで作ったチームTシャツに『IBARAKI JOINT TEAM』とあった。
なんだかカッコいい。オールスターチームのようだ。
6月10日におこなわれた関東高校大会のGブロック1回戦で、茨城合同が東京朝高に挑んだ。
同じような環境にある学校に勇気を与えた。
10-41のスコアで敗れるも、合同チームの上位大会(花園などの全国大会や、関東大会のような各地域大会)進出が認められるようになった中で、初めて踏み出した一歩だった。
茨城を代表して戦うチームとして、オール茨城(茨城)のジャージーを着て臨んだ一戦。
ピンクのジャージーの背番号10、梶山湊の蹴ったキックオフボールは22メートルライン内に入り、相手のミスもあってチャンスを迎えた。
梶山の学ぶ日立一と、太田一、磯原郷英(いそはらきょうえい)の3校メンバーで構成される同チーム。
立ち上がりの時間帯にチャンスを掴めたのは、いい準備ができていたからだろう。
試合の直前練習でも、よく声が出ていた。
先制機は逃すも、ベンチから「いい入りだぞ」と声が飛ぶ。
しかし攻め切れず、8分、14分とトライを奪われて前半を0-12とリードされた。
カバーディフェンスでピンチをしのぐ展開。ボールを手に前に出るシーンもあったが、攻め切れなかった。
後半も入りはよかったが、中盤過ぎからトライを連続して許し、失点を重ねた。
試合後の廣瀬慎也監督(日立一)は、結果以上に、歴史的一歩を踏み出した選手たちを称えた。「大きな経験になる」と話した。
太田一のリーダーで、この日はFLでプレーした廣木翔は、相手とボールをよく追った。
背番号7は水戸の小学校でタグラグビーに取り組んだことがきっかけで、いま、楕円球に触れる生活に熱中している。
廣木は必死に戦った50分を、「自分たちの力がどれくらい通用するのか楽しみでした」と話した。
「強いランナーを使って前に出る。前に出てタックルする。積み重ねてきたこと、自分たちの強みは出せました」
太田一でともに汗を流す1番の益子龍磨は、ビッグマン&ファストマンキャンプにも参加したことがある巨漢。
チームは、その185センチ、120キロの突破力を何度も使い、チャンスを作った。2トライを奪ったシーンは、描いていたイメージに近いものだった。
司令塔の梶山は「入りは気持ちが入っていた」と、立ち上がりに見せた、仲間たちの集中力を評価した。
しかし、終盤に失点を重ねた展開を「時間の経過とともに圧力を受け、スタミナガ足りなかった」と反省した。
3校の全員が集まって練習する機会は限られている。
だからキャプテンとして、普段から練習の内容やチームの目標を、明確にして伝えることを心がけてきた。
「それぞれ、学校の空気は違います。アタックを強みとするチーム、ディフェンスの方が得意とか、いろんな持ち味がある。声をよく出す人、当たりが強い人もいて、それらを生かして戦える。そこが合同チームのおもしろさです」
同主将は、小5 で日立ラグビースクールに入り、ひたちなかラグビースクールを経て高校へ進学した。
この日はキックを蹴り分け、カバーディフェンスで何度もピンチを防いだ。
「キャプテンとして、声だけでなく、行動で引っ張ろうと思い、体を張りました」と覚悟を決めて臨んだ試合だった。
磯原郷英の主将、SH安達月海は、合同チームだからこそ味わえる嬉しさを口にした。
3年生は自分だけで、2年生は2人、そこに1年生が3人加わって、計6人で日々の活動をしている。
取り組めるメニューも少ない中で毎日練習する力が湧くのも、週末には合同の仲間と会えるからだ。
「人数が多いといろんな練習ができて楽しい。最初は知らない人同士でコミュニケーションをとるのが難しかったけど、目標が決まると、すぐにみんなでそちらの方を向けました」
安達はタグラグビー(小)、パスケットボール(中)を経て、高校でラグビー部に入った。
4人いる兄の3人がラグビーマン。その姿に憧れ、この日、大きな舞台に立った。
兄たちも磯原郷英ラグビー部で青春時代を過ごした。合同とはいえ、同校が関東大会に出るのは27年ぶりのことだ(当時は磯原高校)。OBたちも笑顔になる。
太田一の関東大会出場は32年ぶりだった。日立一は2年ぶり。一度に3校のOBたちがシアワセになれる。合同チームの特権だ。
日立一と太田一は新入部員が加わったことで、秋の大会へ向け、単独チームでの大会出場を目指すことになりそうだ。
部員の少ない磯原郷英の安達主将は、「僕らも部員集めを頑張って、単独チームで日立や太田と戦えたらいいですね」と前向きに話す。
それが叶わなければ今回の活動で得た経験を、新しい仲間たちと組むチームで生かし、みんなを引っ張っていこうと思う。
同じようなサイクルがあちこちで生まれたら、『合同チーム』につきまとうネガティブな空気が変わるかもしれない。
廣木(太田一)は、出会いから関東大会へ向けての足取りを振り返り、「ああしよう、こうしようと、いろんなポジティプな意見が出てまとまっていった」と話した。
ジョイントするとは、ただ集まるだけでなく、新しいものを生み出すこと。だから楽しい。