世界デフセブンズ、 レフリーまでの道のり 第2回世界デフラグビーセブンズ大会 (3)
リポート:鮫島功生(カシワバラ・コーポレーション)
それまでの14年間はデフラグビー選手として、メンバーと一緒に汗を流し、世界大会での優勝を目指して頑張ってきました。レフリー転向は4年前。それ以来、デフラグビーの世界大会を目標にしてきました。居住地は埼玉ですが、茨城県所属で活動しており、レフリーコーチをはじめ各チームの皆様のサポートのおかげで、さまざまなカテゴリーにかかわらせていただき感謝しています。
ラグビーに限らず、障がい者スポーツの審判は、健常者が担当しているケースがほとんどかと思います。
私のように、選手と同じ障がいを持つ者が、レフリーを担当することで、障がいを持つ子どもたちや、レフリーをやりたいけど踏み出せない人たちの後押しに少しでもなればと願っています。
もちろん苦労もあります。聴覚障がいにおいては、コミュニケーションが壁となります。ラグビーの場合、カテゴリーが上がるとインカムでのコミュニケーションが必要です。勝敗に関わる重要なやりとりが行われるので、難聴者である私はいつも苦労しています。
約1年前、この大会でレフリーをさせてもらえないかと依頼しました。返信は、ありませんでした。これまでの苦労を無駄にしないために、現地で直談判するしかないと腹を括りました。自腹での渡航を決意しました。大会10日前のことです。そこから自分で航空券を手配したり、必要な書類を集めたりと大変でした。1人で地球の裏側まで行くのはそれなりの覚悟が必要ですね。
今大会にて痛感したのは、英語の必要性です。
ある程度英語が話せないとやっていけません。試合以外では他のレフリーを見て勉強したり、コミュニケーションを取ってアドバイスをもらいました。私自身の課題が見えてきたので、今回得た経験を次の世界大会に繋げながら、次世代のデフレフリーの育成にも力を入れていきたいと思います。(連載終わり)
NPO法人 日本聴覚障がい者ラグビー連盟オフィシャルウェブサイト
https://deaf-rugby.or.jp/
前回大会(2018年)のレポート
https://deaf-rugby.or.jp/special/world-deaf-rugby-7s/wdr7_2018/
筆者PROEILE/柴谷晋 (しばたに・すすむ)
元デフラグビー日本代表、今大会は英語通訳、分析として遠征に同行。著書に「静かなるホイッスル」(新潮社)など。同書は、日本デフラグビー創設から2002年の世界大会での初勝利、セブンズ大会準優勝までを描いたノンフィクション作品。大田東京ラグビーアカデミー代表、’23年4月より武蔵野横河アトラスターズ アカデミーヘッドコーチ。リーグワンチームでアナリストを務めた経験を元に、ラグビーマガジン誌上での分析記事や、チーム向け分析指導もおこなう。