立命大・御池蓮二、U20日本代表にもたらす速さと視野。
うまくできない。そう悩まなくてよかった。
立命館大ラグビー部2年の御池蓮二は、出身の東海大大阪仰星高で主将を務めていた。高校生活最後の全国大会を優勝するまでの間、自身の働きに納得できないことがあった。
助けてくれたのは湯浅大智。チームの元主将で現監督だ。普段から競技への探求心と平時の目配り、気配り、心配りを教え子に説く指揮官に、御池は「うまくいかないんです」と相談した。返事にはっとした。
「お前、自分がうまいと思ってたんか」
あれから約2年。恥ずかしい話なのですがと、やや言いよどみながらも当時を振り返る。
「お前は、もっとひたむきにプレーせなあかん。自分のしたいことではなく、そのポジションのやるべきことを全うしろ。その言葉があったからこそ、いろんな所に目を向けられるようになりました」
あれも、これもと手を付けるのではなく、まずは自分の役目を全うする。その延長で視野を広げる。思考回路を定め、立命大では1年時からWTBでレギュラーとなった。
身長173センチ、体重80キロと小柄も、持ち前の加速力を活かす。少しでもボールがもらえるよう、ボールを持たない間の動きやコミュニケーションを磨く。謙遜しながら。
「僕自身はまだまだで、こんなんもできひんねんなと思うこともあります」
いまは20歳以下(U20)日本代表でプレーする。同代表はこのほど、ウイルス禍を経て3年ぶりに活動を再開させている。御池は「感謝」を口にする。
「いろんな方がサポートしてくれていると感じます。ホテルがあったり、食事を出してくれるところがあったり、(合宿地から)新幹線のチケットを協会の方が用意してくださったり」
5月27日、東京・秩父宮ラグビー場。NZUことニュージーランド学生代表戦に先発した。
1点差を追う前半18分、ラインアウトからのサインプレーで右端のスペースを快走。一時勝ち越しのトライを決める。直後のコンバージョン成功で14-8。
成長を感じられたのは6点差を追う後半11分。ハーフ線付近で球をもらうと、防御網の裏側へキック。敵陣ゴール前までその弾道を追い、手元にバウンドしてきた球をキャッチ。合計3人の防御に追いかけられるなか、背後をサポートしていた味方FLの小林典大につないだ。
「前までなら絶対に自分でトライを獲ってやろうと思っていたんですけど、冷静になって、後ろを見たら典大が来ていた。そっち側に放ったほうがトライを獲る確率が高い」
チャンスの時に落ち着きを保てたのが、進歩した点だ。
「僕が高校から大学に行って、成長できた部分かなと。世界と戦っていくうえでも、大きなプレーではなく、丁寧なプレーを」
チームは南アフリカでのU20チャンピオンシップの開幕を6月24日に控え、5月のサモアでのパシフィック・チャレンジ、今回のNZU戦などで実戦経験を積んでいる。
これまで年代別の代表活動を経験していない世代のチームとあり、骨格の大きな海外選手とのバトルへの耐性が求められる。
この日はタックルを弾かれたり、差し込まれたりする局面があり、御池も自らの課題をこう語る。
「僕は先に飛び込んでしまって(相手に)外されることがあって。それを後半、(その場で走者を仕留めるよう)修正した分、ゲインされてしまった(ぶつかり合いで前に出られた)」
チームはキックを多用する。蹴った先で捕球役にタックルを弾かれては、本来のエリア確保はままならなくなる。
この課題について、5月下旬から参画の田邉淳氏は「整理整頓ができる」と話す。
田邉氏は、クボタスピアーズ船橋・東京ベイのアシスタントコーチを務める戦術家だ。キックの方向とそれを追いかける選手の人数調整につき、仕組みを整備。その流れで、防御面の課題を最小化する考えか。
戦術的な問題点をコーチ陣が解消しにかかるなか、選手の御池が意識するのは「選手の声を拾う」ことだという。
NZU戦を52-46で制した直後に明かしたのは、組織内の風通しをよくしたいというチームマンの発想だった。
「メンバーから外れて不満に思うことは誰にでもあると思う。その選手の声を聞いて、リーダーズグループ、コーチ陣に伝える…といったことを、やっていきたいです。なんか、ホンマに、いいチームを作りたいんです」
その視野の広さを賞賛する声には、「まだまだです。いろんなことを経験したいです」と応じた。