「一緒にレベルアップを」。悔しい敗戦後、流(東京サンゴリアス)は「14人としては最高のゲーム」と仲間を誇った
レフリー陣の判断がすべてです。
戦いを終えた流大(ながれ・ゆたか)は、報道陣に囲まれてそう話した。
5月14日、キックオフからフルタイムのホイッスルが吹かれるまで、2時間を超える死闘を終えた後だった。
同日、東京サントリーサンゴリアスはクボタスピアーズ船橋・東京ベイとのリーグワンプレーオフトーナメント準決勝で敗れた(18-24)。
ラストシーンは6点差を追うサンゴリアスがゴール前のラインアウトから、モールを押し込んだ局面。
黒と黄色のジャージーの塊はトライラインを越え、ボールを持っていたHO中村駿太がグラウンディングするようにインゴールに倒れ込んだ。
それをすぐ近くで見ていた流は、「僕の真横でグラウンディングしていました」と話した。
「しかしレフリーからも、アシスタント(レフリー)も見えていない。カメラにも映っていない。レフリー陣の判断がすべて。何も言うことはありません」
「現状のルール、TMOのシステムからすると、レフリー陣の判断が正しい」と続けた。
試合後、TMO担当だった久保修平レフリーと話す機会があった。映像には、ボールかスパイクか判別しづらい、白いものが映っていた。
「あれはボールですよ」と話した。
この試合では、トライがキャンセルされたシーンが2度あった。
一連の流れの途中、ブレイクダウン後にボールを動かそうとした際のプレーに戻り確認された。
ノックオンがあった、スローフォワードだった、とジャッジされた。
レフリーの判断がすべてで、トライキャンセルもルール通り。プレーを遡れば、確かにミスはあった。
それを踏まえた上で、流はプレーヤーの気持ちを話したという。
「TMOが多すぎるのは、今日に限ったことではありません。ちょっとしたことがあっても、レフリーから見えておらず、ゲームが流れているのなら(試合を)止めてほしくないと伝えました」
もし、自分たちが相手のプレーに疑問を感じ、TMOにかけてほしいと思っても、だ。
「レフリーの判断でゲームが流れる(のなら、そちらの方がいい)。流れを止めたくないし、遮られたくない。ファンも含めて、スムーズなゲームを一緒に作っていきましょう。自分たちも規律を心がける。レフリーも一緒にレベルアップしていきましょう」と話した。
健闘とどかず、惜しくも敗れた。目指していた覇権奪回は成らなかった。
しかし、スタジアムを熱狂させた試合を振り返り、流は「14人(で戦った状況)の中では最高のゲーム。何もいうことのないパフォーマンスでした。自分たちの持っているすべてを出して負けたので仕方ない。クボタさんが強かった」と潔かった。
前半5分にLOツイ ヘンドリックが相手頭部へのプレーでレッドカードを受け、試合のほとんどを14人で戦うも、全員がいつも以上にファイトして勝利に近づいた。
「(観ている人たちに)14人と感じさせていないぐらいのパフォーマンスでした。特にFWが頑張った。7人であれだけタフにブレイクダウンで戦い、モールに勝ち、スクラムも頑張った。大きな相手に日本の選手主体で素晴らしかった」
「負けたので胸は張れませんが、チームメートのパフォーマンスは誇れる」と仲間を称えた。
サンゴリアスには信念がある。
「日本出身の選手たちがこのリーグで育っていかないといけない。そんな使命感を持ってやっています」と流も話す。
競争の激しさでチーム力を高めている。
この日は、レギュラーシーズンで多くの試合に出ていたPR垣永真之介、NO8テビタ・タタフのコンディションが整わずに欠場した。
しかし、高いチーム力を発揮した。
この準決勝に向けての準備の途中にも、サンゴリアスのスピリットが色濃く出るシーンがあった。
「試合メンバーたちは、(ノンメンバー相手に実戦形式の練習で)やられました。ストレスのかかる練習がたくさんあった」
そうでないと、良い練習とはいえない。それがサンゴリアスのスタンダードだ。
「メンバーに気持ちよく練習をさせるチームではありません」
そんな環境だから若手も伸びる。この日はPR初先発の細木康太郎を起用し、若き3番は期待に応えた。
「毎日切磋琢磨できているから細木もやれたと思います。(今春)大学を卒業して入ってきたばかりの選手たちが出ても、きっとやれた。そういうチームでありたいし、プライドを持っていたいですね」
チャンピオンだけをターゲットに日々を過ごしている。
だから、優勝かそれ以外か。頂点に立てないのなら何位でも同じと思い、3位決定戦への意欲を持てなかった。
しかし、すぐに「サンゴリアスのジャージーを着る以上、準備して、勝ち、プライドを見せよう。それが使命」と思い直した。
金曜の夜(5月19日、対横浜キヤノンイーグルス)、最高の試合を見せる。