国内 2023.05.16

「一緒にレベルアップを」。悔しい敗戦後、流(東京サンゴリアス)は「14人としては最高のゲーム」と仲間を誇った

[ 編集部 ]
「一緒にレベルアップを」。悔しい敗戦後、流(東京サンゴリアス)は「14人としては最高のゲーム」と仲間を誇った
試合後、勝者を称える流大。(撮影/松本かおり)



 レフリー陣の判断がすべてです。
 戦いを終えた流大(ながれ・ゆたか)は、報道陣に囲まれてそう話した。

 5月14日、キックオフからフルタイムのホイッスルが吹かれるまで、2時間を超える死闘を終えた後だった。

 同日、東京サントリーサンゴリアスはクボタスピアーズ船橋・東京ベイとのリーグワンプレーオフトーナメント準決勝で敗れた(18-24)。

 ラストシーンは6点差を追うサンゴリアスがゴール前のラインアウトから、モールを押し込んだ局面。
 黒と黄色のジャージーの塊はトライラインを越え、ボールを持っていたHO中村駿太がグラウンディングするようにインゴールに倒れ込んだ。

 それをすぐ近くで見ていた流は、「僕の真横でグラウンディングしていました」と話した。
「しかしレフリーからも、アシスタント(レフリー)も見えていない。カメラにも映っていない。レフリー陣の判断がすべて。何も言うことはありません」

「現状のルール、TMOのシステムからすると、レフリー陣の判断が正しい」と続けた。
 試合後、TMO担当だった久保修平レフリーと話す機会があった。映像には、ボールかスパイクか判別しづらい、白いものが映っていた。
「あれはボールですよ」と話した。

 この試合では、トライがキャンセルされたシーンが2度あった。
 一連の流れの途中、ブレイクダウン後にボールを動かそうとした際のプレーに戻り確認された。
 ノックオンがあった、スローフォワードだった、とジャッジされた。

 レフリーの判断がすべてで、トライキャンセルもルール通り。プレーを遡れば、確かにミスはあった。
 それを踏まえた上で、流はプレーヤーの気持ちを話したという。

「TMOが多すぎるのは、今日に限ったことではありません。ちょっとしたことがあっても、レフリーから見えておらず、ゲームが流れているのなら(試合を)止めてほしくないと伝えました」

 もし、自分たちが相手のプレーに疑問を感じ、TMOにかけてほしいと思っても、だ。
「レフリーの判断でゲームが流れる(のなら、そちらの方がいい)。流れを止めたくないし、遮られたくない。ファンも含めて、スムーズなゲームを一緒に作っていきましょう。自分たちも規律を心がける。レフリーも一緒にレベルアップしていきましょう」と話した。

 健闘とどかず、惜しくも敗れた。目指していた覇権奪回は成らなかった。
 しかし、スタジアムを熱狂させた試合を振り返り、流は「14人(で戦った状況)の中では最高のゲーム。何もいうことのないパフォーマンスでした。自分たちの持っているすべてを出して負けたので仕方ない。クボタさんが強かった」と潔かった。

 前半5分にLOツイ ヘンドリックが相手頭部へのプレーでレッドカードを受け、試合のほとんどを14人で戦うも、全員がいつも以上にファイトして勝利に近づいた。

「(観ている人たちに)14人と感じさせていないぐらいのパフォーマンスでした。特にFWが頑張った。7人であれだけタフにブレイクダウンで戦い、モールに勝ち、スクラムも頑張った。大きな相手に日本の選手主体で素晴らしかった」
「負けたので胸は張れませんが、チームメートのパフォーマンスは誇れる」と仲間を称えた。

 サンゴリアスには信念がある。
「日本出身の選手たちがこのリーグで育っていかないといけない。そんな使命感を持ってやっています」と流も話す。

 競争の激しさでチーム力を高めている。
 この日は、レギュラーシーズンで多くの試合に出ていたPR垣永真之介、NO8テビタ・タタフのコンディションが整わずに欠場した。
 しかし、高いチーム力を発揮した。

 この準決勝に向けての準備の途中にも、サンゴリアスのスピリットが色濃く出るシーンがあった。
「試合メンバーたちは、(ノンメンバー相手に実戦形式の練習で)やられました。ストレスのかかる練習がたくさんあった」
 そうでないと、良い練習とはいえない。それがサンゴリアスのスタンダードだ。
「メンバーに気持ちよく練習をさせるチームではありません」

 そんな環境だから若手も伸びる。この日はPR初先発の細木康太郎を起用し、若き3番は期待に応えた。
「毎日切磋琢磨できているから細木もやれたと思います。(今春)大学を卒業して入ってきたばかりの選手たちが出ても、きっとやれた。そういうチームでありたいし、プライドを持っていたいですね」

 チャンピオンだけをターゲットに日々を過ごしている。
 だから、優勝かそれ以外か。頂点に立てないのなら何位でも同じと思い、3位決定戦への意欲を持てなかった。

 しかし、すぐに「サンゴリアスのジャージーを着る以上、準備して、勝ち、プライドを見せよう。それが使命」と思い直した。
 金曜の夜(5月19日、対横浜キヤノンイーグルス)、最高の試合を見せる。


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