コラム 2023.04.14
【コラム】いつか、決戦で。さくらオーバルフォートの光景から

【コラム】いつか、決戦で。さくらオーバルフォートの光景から

[ 向 風見也 ]

 東京サントリーサンゴリアスの齋藤直人は、府中市内のグラウンドで自ら定めた個人練習に注力する。障害物に挟まったボールをなるたけスムーズに拾い、パスする。球さばきのテンポという、生来の強みを磨くためだ。

 さ らには元監督の沢木敬介氏がグラウンド脇に作った、芝の坂を活用する。斜面を駆け上がりながら、迫る防御役をステップでかわす。実戦的な動きを通し、瞬発力を養う。

 古巣に置き土産を残した沢木がいま率いるのは、横浜キヤノンイーグルスだ。このクラブが活動する町田市内では、代表経験者の田村優がタックルの特別メニューに取り組む。

 指導する佐々木隆道アシスタントコーチは、「アップ! ショートステップ!」とのキーワードを打ち出す。走者役との距離感を一気に詰め、歩幅を合わせながら肩をぶつけにかかる。

 田村は数本、好感触を得たら、走者役だった若手に握手で感謝を伝えた。今季は前年度までと比べ、田村のロータックルが多く目撃できる。変化の裏付けが、居残りセッションからにじんだ。

 リーグワンは大詰めに突入した。これから始まる大一番の見せ場のいくつかは、参戦するチームの「練習」から予見できるだろう。

【筆者プロフィール】向 風見也( むかい ふみや )
1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年よりスポーツライターとなり、主にラグビーに関するリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「スポルティーバ」「スポーツナビ」「ラグビーリパブリック」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)。『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(共著/双葉社)。『サンウルブズの挑戦』(双葉社)。

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