海外 2023.04.14

【欧州チャンピオンズカップ】トゥールーズ、3人のファンタスティック躍動でシャークスに快勝。敗れるも、コリシ主将は敵地の雰囲気に感激

[ 福本美由紀 ]
【欧州チャンピオンズカップ】トゥールーズ、3人のファンタスティック躍動でシャークスに快勝。敗れるも、コリシ主将は敵地の雰囲気に感激
自らトライも奪ったトゥールーズのSOロマン・ンタマック。(Getty Images)



 欧州チャンピオンズカップの準々決勝の4試合が行われた昨週末。中でもトゥールーズ(フランス)×シャークス(南アフリカ)が、両チームに各国代表選手が多くいることからプチ『フランス×南アフリカ』と言われ注目を集めた(4月8日)。

 シャークスは前週マンスター(アイルランド)に50-35で勝利しており、「マンスターが50点も取られるのを長い間見たことがない」とトゥールーズのユーゴ・モラHCも試合前の会見で警戒していた。

 試合は、約1万9000人の観客で埋め尽くされたトゥールーズのホーム、スタッド・エルネスト=ワロンで行われた。

 観客の期待通り、連携の取れたチームプレーの中にも個人技が光る見応えのある試合となった。
 序盤はシャークスが優勢かと思われたが、先のシックスネーションズでフランス代表のプレーを指揮したSHアントワンヌ・デュポン、SOロマン・ンタマック、FBトマ・ラモスの3人が躍動し、トゥールーズが54-20で制した。

 フランスの今季シックスネーションズ、イングランド戦、ウエールズ戦の続きを見ているようだった。現地メディアは彼らを『ファンタスティック』と呼ぶ。

 デュポンはこの試合のチームの7つのトライのうち、5つをアシストした。また守りでも要所でタックルを決め、シャークスの猛攻を食い止めた。

 ラモスは、ゴールキックと自身の2トライで29得点。この試合のスター・オブ・ザ・マッチに選ばれるパフォーマンスを見せた。

 いぶし銀のようなプレーでチームメートを生かすことに徹していたンタマックも、最後に自らボールを持ち、相手ディフェンスを突破。
 後列に構えていた敵をダミーパスでかわし、ゴールラインを超えた。

「この3人はコネクトしている。コミュニケーションを取り、理解し合い、責任ある役割を果たしてくれている。まだ27歳(ラモス)、25歳(デュポン)、23歳(ンタマック)なのに、3人ともとんでもない選手だ」とモラHCは試合後、記者の前で嬉しそうに話した。

「ロマン(ンタマック)とトマ(ラモス)とは、一緒に練習し、一緒にプレーしてきてお互いのことをよく理解できている。やりたいラグビーが3人とも同じだからやりやすいというのもある」とデュポンが説明する。

「もちろん、FWが優位に戦ってくれたおかげでボールを素早く大外まで回すことができた」と付け加える。

 敗れたシャークスは、以前に宗像サニックスブルースでもプレーしていたカーウィン・ボッシュの活躍がフランスメディアに取り上げられている。

 この日は10番をつけ、ゲームコントロールだけでなく、自らもボールを持って何度もトゥールーズのディフェンスを突破し、チャンスを作ろうとした。
 ボッシュのランメーターは200を超えており、2位のデュポンの2倍以上走っている。どれだけチームを前に進めようとしていたかがわかる。

 シャークス主将のシヤ・コリシは、「ミスを重ね、最終的に点差が開いてしまった」と試合を振り返った。
「トゥールーズは些細なチャンスでも素早く得点に繋げる。このチームがなぜ5回もこの大会で優勝しているのかが分かった。トゥールーズの選手は長い期間一緒にプレーしているから、それぞれがやるべきことを理解していて、ディフェンスをするのが難しかった。逆にこちらがスペースを見つけたと思っても止められた」

 それでも、「今日の試合の雰囲気を思い返すと今も鳥肌が立つ。街では大人も子どももトゥールーズのジャージーを着ていた。スタジアムに到着すると、大勢の人が温かく迎えてくれた。試合に負けたことは残念だが、ここでプレーできて光栄に思う」と、トゥールーズの人々のラグビーへの熱気を堪能したようだ。

 シャークスはこの週の火曜日にダーバンを出発し、飛行機を乗り継ぎ、24時間かけてトゥールーズに到着した。
 この移動の疲労は、試合が後半に入ると少しずつ感じられた。さらにこの日のトゥールーズは20度超え。その暑さも拍車をかけただろう。
 これらの条件も最後の10分で4つのトライを許し点差が広がった一因と考えられる。

 同じく準決勝を戦うために長時間の移動を課されたストーマーズも、17-42でエクセター(イングランド)に敗れている。
 エクセターのディレクター・オブ・ラグビーのロブ・バクスターが「ストーマーズの準決勝への準備は理想とほど遠い状態」と発言している。

 南アフリカのチームが初参加したチャンピオンズカップ、チャレンジカップは、従来のヨーロッパのクラブばかりが準決勝に進出した。国内リーグですでにカレンダーに空きがなく、スーパーラグビーのようにバイウィークを設けることは難しい。
 大会運営団体であるEPCRは今後の運営についてどのようなビジョンを持っているのだろうか。

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