海外 2023.04.05

チーフス粘り勝ちでバトルを制す。マッケンジー、オールブラックス復帰へ前進

[ 松尾智規 ]
チーフス粘り勝ちでバトルを制す。マッケンジー、オールブラックス復帰へ前進
チームを勝利に導いたチーフスSOダミアン・マッケンジー。(Getty Images)



 4月1日にハミルトンにあるFMGスタジアム・ワイカトでおこなわれた「2023 スーパーラグビー・パシフィック」の第6節で、チーフスがブルーズを20−13のスコアで破り、全勝をキープした。

 両者の対決は、試合の数日前からニュージーランド(以下、NZ)国内のスポーツニュースを賑わせた。
 その理由は、オークランド地区(ブルーズ)とワイカト地区 (チーフス )は、ボンベイ(Bombay)という町を挟んで隣町。両者の対抗意識はハンパない。チーフスとブルーズの対決は「バトル・オブ・ザ・ボンベイ」と名がつくほどだ。
 毎回激しい試合となる。盛り上がらぬ訳がない。

 試合は、いきなりチーフスが見せた。
 開始早々、攻撃するブルーズのボールを奪い取り、すかさずBKに展開。この試合では司令塔の10番を付けたダミアン・マッケンジーが絶妙なキックをした。
 そのキックを懸命にチェイスした右WTBエモニ・ナラワがディフェンスと競り合いながらもコーナーぎりぎりのところでトライ。チーフスの先制トライは、僅か20数秒の出来事だった。

 ブルーズも直ぐにHOのリッキー・リッチテリがトライを挙げて追いあげる。
 その後、勢いが出たブルーズは、WTBのケイレブ・クラークがインゴールになだれ込み10−10の同点に追いついた。
 しかしその後、決定力のある所を見せつけたチーフスのトライゲッター、14番のナラワがディフェンスをうまくかわして2つ目のトライを奪う。数年前までブルーズに所属していた男が古巣相手に大活躍だ。

 テストマッチ並みの緊張感でレベルの高い試合は、チーフスが17−10のリードでハーフタイムを迎えた。

◆後半は、ブルーズが優勢もチーフスが堅いディフェンスで守り切る。

 後半は、ブルーズが敵陣で戦う事が多かった。
 しかしチーフスの粘りのディフェンスが随所に見られた。ブルーズはゴールラインを突破できなかった。後半の得点は、両者とも1PGのみ。20−13でチーフスが逃げ切った。

 ブルーズは、地域、ボール支配率で6割以上だった。それだけでなくセットピース(スクラム、ラインアウト)、特にスクラムで優勢だった。それでも勝利できなかった。
 ブルーズは、敵陣ゴール前で何度も得点の機会があった。しかしハンドリングエラーが多く、チャンスを活かせなかったのが痛かったか。
 逆にチーフスは、自陣ゴール前で釘付けにされながらも、粘りのディフェンスが勝利を呼び込んだと言えるだろう。

◆注目のマッチアップは、どうだったか?

 まず、「サム・ケイン v ダルトン・パパリィイ」のオールブラックスの7番対決。
 チーフスのケインは、オールブラックスのキャプテンだ。ここ数年オールブラックスの成績が思わしくない事もあり、ケイン自身のパフォーマンスを含めて、国内外のメディア、そしてNZ国内のラグビーファンからプレッシャーを受けている。
 一方のブルーズのパパリイはNZ国内で評価が上がっている。オールブラックスの7番を任せるべきだという声が聞こえてきている。

 今回の直接対決では、攻撃面では、パパリィイが持ち前のボールキャリーの強さを活かし、前に出る力を見せた。しかしディフェンスの面では、ケインがブルーズの攻撃をしっかり止めていた印象だった。ブレイクダウンでも申し分ない仕事ぶりだったように思う。
 ケインは、激しいバトル戦を経て、調子を取り戻す様子がうかがえた。オールブラックスのイアン・フォスター ヘッドコーチの心を再び掴んだかも知れない。

「ボーデン・バレット v ダミアン・マッケンジー」の司令塔対決はどうだったか。
 ブルーズの背番号10のバレットは、前半インゴールにボールを持ち込みながらも、デッドボールラインを踏んでトライを取り損ねる大きなミスを犯した。チーフスのLOトゥポウ・ヴァアイの諦めないタックルが見事だったが、バレットが軽率だったと言えるだろう。
 ゴールキックは、さほど難しくないアングルのコンバージョンを2本外した。1PGのみの3点どまりで、それが点数を重ねることができなかった要因となった。

 ブルーズは後半あれだけ攻めながらも、トライを取り切れなかった。司令塔としての役割に、バレットが課題を残す結果となった。
 何もないところでのハンドリングエラーも見られるなど、いつもの自信に満ち溢れているバレットの様子が見られなかった。その影響が勝敗に直結したと言えるかもしれない。

 一方のチーフスのSOマッケンジーは、バレットとは対照的だった。
 安定したゲームコントロールを見せ、絶妙なキックを何度か使ってチャンスを作った。ディフェンスでも体を張ったタックルを何度も見せた。
 コンバージョンキックをタッチライン際から2本、50メートルを超えるPGも決めるなど、キックはノーミスで合計10点を稼いだ。司令塔対決で勝った。

 マッケンジーは、プレッシャーのかかる試合で良いパフォーマンスを見せた。
 バレット、スティーヴン・ペロフェタ(オールブラックスでSO、FBで同じ役割のポジション)を 相手に、直接対決で上回り、オールブラックスのセレクターを満足させたに違いない。
 リーグで唯一負けなしのチーフスは今後、ハリケーンズと2試合、クルセイダーズ、敵地でブランビーズなど強豪との試合が残っている。

 しかし今年のチーフスならやってくれそうな気がする。楽しみだ。


PICK UP