国内 2023.04.04

ダイナボアーズ・岩村昂太主将、古巣と今季2度目の対戦へ「極力、相手のことを考えず…」。

[ 向 風見也 ]
ダイナボアーズ・岩村昂太主将、古巣と今季2度目の対戦へ「極力、相手のことを考えず…」。
ダイナボアーズをけん引する岩村昂太。写真は1月14日のブレイブルーパス戦(撮影:松本かおり)


 由来はわからない、と岩村昂太は笑う。

 主将を務める三菱重工相模原ダイナボアーズが設ける、ポジション群ごとに分かれての話し合いの名称に話題が及んでいた。

「IOUミーティング」

 現役の日本代表はおらず、主力に他クラブからの移籍組が並ぶ陣容のダイナボアーズだが、国内トップのリーグワン1部で開幕2連勝を果たした。

 2勝1敗で迎えた第4節では、東芝ブレイブルーパス東京を23-19で下した。旧トップリーグで5度の優勝を誇り、いまもワールドカップ3度出場のリーチ マイケルら名手の揃うクラブを、史上初めて破ったのだ。
 
 潤沢な戦力を誇る名門に伍して、感動的な白星をつかんだ裏には、複数の要素がにじむ。

 チームの始動を例年より約1か月も早めたこと、フルコートを走り回る「ボールゲーム」をはじめとした猛練習で体力を鍛えたこと、グレン・ディレーニー新ヘッドコーチが防御にこだわり続けること、肉体管理とメンタル指導の専門家を揃えたこと、千葉や別府の合宿で互いの結束を深めたこと……。

 さらには、折に触れ実施される「IOUミーティング」を重ねたこと。

 アルファベット3文字のついた合議の場について、SHで29歳の岩村は説明する。

「キャプテンズラン(試合前練習)の前などに集まり、大切なことは何か、その後の全体ミーティングで共有することは何か(を話し合う)。それを、各ポジションでおこなう。『(戦術理解の)抜け』がないようにしています」

 4月3日。リーグ戦最後の休息週を経て、オンライン取材に応じた。

 昨年12月中旬に開幕のシーズンはすでに13節を消化し、序盤好スタートのダイナボアーズは4勝8敗1分。現在は12チーム中10位と上位グループの厳しさを味わっているが、岩村は前向きだ。

「日々、学びのシーズンだと感じていて。いい時もあれば、悪い時もある。ただ、選手、スタッフを含め、後退することもなく成長し続けていると実感しています」

 1部の下位3チームは、レギュラーシーズン終了後に下部との入替戦へ出る。3枠中2枠はすでに確定し、残る1枠には目下6~10位の計5チームのいずれかが回る。

 岩村は重圧と向き合う。

「入替戦に行くか行かないかの瀬戸際。プレッシャーも感じるところではありますけど、やることはいままでと変わらなくて。やってきたこと(プレー)をプレッシャーのなかでどれだけ出し切れるかが僕らのチャレンジです。そうしたマインドセットを、メンタルトレーナーと一緒に作っているところです。まずはシーズンを通して、自分たちのラグビーにフォーカスする。それを遂行できれば、自ずと結果がついてくる」

 次戦は4月8日。岐阜メモリアルセンター長良川競技場でぶつかる相手は、トヨタヴェルブリッツだ。岩村が2021年までいた古巣でもある。

 両軍の対戦は第2節にもあり、その際はダイナボアーズが勝っている。抜かれても戻って堅陣を敷く動きが冴え、27-25と僅差で喜んだ。

 もっともヴェルブリッツは、時間を追うごとに調子を上げている。

 戦力や戦法が整わぬ序盤戦こそ低迷も、3月は4試合で2勝2敗とやや復調。特に第10節では、昨季準優勝の東京サントリーサンゴリアスを27-20で下している。

 前ニュージーランド代表ヘッドコーチでディレクター・オブ・ラグビーというコンサルタント的な立場のスティーブ・ハンセンが、現場に降りて笛を吹く。共同主将で日本代表の姫野和樹が、パフォーマンスとリーダーシップで存在感を発揮。南アフリカ代表FLのピーターステフ・デュトイも、持ち味のパワーと仕事量を維持している。

 いまは5勝8敗で8位につける。ダイナボアーズらとの中位争いを、よりタフなものにしている。

 姫野の友人でもある岩村は、古巣の調子が上向いた理由について「どうなんでしょう。僕が出て(移籍して)から2年、経つのでわからないです」としつつ、こうも話す。

「シーズンが進むにつれ、持ち味であるフィジカルをどんどん前面に出し、勢いのあるアタックをしていると感じます。そういう時のトヨタは強いと、昔から思っていました。僕らはディフェンスが強み。フィジカルで来るアタックチームを止め、こちらに流れを持ってきたいです」

 もしもヴェルブリッツが原点に立ち返ったのだとしても、自分たちダイナボアーズも原点に立ち返って対抗するだけだという。

「古巣を意識しないことは無理だと思いますが、極力、相手のことを考えず、まずは自分の仕事、チームの仕事をひとつひとつやっていって、試合後に仲良く話せたら」

 破壊力と忍耐力がぶつかる80分。最後に笑うのはどちらか。

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