日本代表 2023.04.02

鹿児島から世界へ。時任凜空、20歳以下日本代表候補として得た「気づき」とは。

[ 向 風見也 ]
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鹿児島から世界へ。時任凜空、20歳以下日本代表候補として得た「気づき」とは。
3月下旬のTIDキャンプ(タレント発掘・育成プログラム)に参加した時任凜空(撮影:松本かおり)


 最初は知り合いがおらず、「心細かったです」。福岡工大新2年の時任凜空は、今年2月から定期的に「TIDキャンプ」へ参加した。

 ラグビー20歳以下日本代表の候補合宿だ。周りには関東、関西の名門校から来た実力者がずらり。それぞれ以前から年代別代表に名を連ねていたり、同じ強豪高校の出身者同士だったりする。

 時任が幸運だったのは、徐々に「あっち(相手方)から話しかけてくれ」たことだ。会話が増え、それが実戦練習でのコンビネーションに活きる。浦安の練習会場へ通うのが、楽しくなってきた。

 上には上がいると知られたのもよかった。

「こういう場所に来たら、(ともにプレーする選手の)レベルが高く、自分のレベルの低さに気づき、帰ってからトレーニングをするようになりました。(部内では)ハンドリングのスキルはあるほうだと思っていたのですが、ここにきたらまだまだで」

 昨季の学生シーンにあって、「最大級の発見」と謳われた。

 昨年12月11日の大学選手権3回戦で、関西の老舗たる同大と対戦。身長184センチ、体重82キロのすらりとした体躯でインサイドCTBに入り、防御へ仕掛けながらスペースへパス、キックを散らした。

 17-62と敗れはしたが、注目の的となった。今度のTIDキャンプにいた同大の選手には、名前とプレーを覚えられていた。

 目下選考中の20歳以下日本代表では、ロブ・ペニー ヘッドコーチのもと深く、横幅の広い攻撃ラインを用いそうだ。時任にとっては、所属先と異なる攻め方である。

 与えられた枠組みを理解し、かつ独自色を打ち出せるか。本人は、己の立場を理解する。

「ラインを深く保ちながら、選手権で見せたような自分のプレーをどのように出すか。考えながらやっています」

 小学1年でラグビーを始めた。父の豊秀さんの影響だ。地元の鹿児島で社会人クラブに加わる父にグラウンドへ連れられ、次第に魅了される。

 同時期に親しんでいた野球と比べ、団体競技としての要素が強いと感じた。

「(ラグビーは)自分が頑張れば頑張るだけ、結果も、仲間もついてきてくれる感じが好き。チーム全体でやるスポーツが好きだった」
 
 加治木工へ進むと、いま以上に身体が細かった1年時からレギュラーとなった。実戦でのみ得られる経験を肥やしにでき、3年間で体重を「20キロ」も増やせた。

「関東の大学へ行ける実力はある。ただ、九州で試合に出て活躍し、皆から見られる場所でプレーした方がいい」

 高校の指導者からこう説かれ、いまの所属先へ入った。果たして初年度の大学選手権で爆発し、同年代のエリートが集まる20歳以下日本代表入りに迫る。

「自分が思っているよりも、見えないところで応援してもらえると感じました。それも、頑張るあれ(モチベーション)になっています」

 元鹿児島大の中尾隼太(東芝ブレイブルーパス東京)、九州共立大出身の竹内柊平(浦安D-Rocks)といった地方発の日本代表選手のように、地元の星となりつつあるのを喜ぶ。

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