国内 2023.03.23

NZの英雄アーロンとボーデン、「勝つ文化」をトヨタに。来季加入へ向け思いを語る。

[ 編集部 ]
NZの英雄アーロンとボーデン、「勝つ文化」をトヨタに。来季加入へ向け思いを語る。
トヨタヴェルブリッツに来季加入するNZ代表のボーデン・バレット(左)とアーロン・スミス(Getty Images)


 来日は今年秋のラグビーワールドカップ後、日本のファンの前でプレーを見せてくれるのは来季のリーグワンからとなるが、深緑のジャージーを着た勇姿を想像するだけで、ワクワクさせてくれるビッグスターだ。

 トヨタヴェルブリッツに来季加入することが決まっているアーロン・スミスとボーデン・バレットが、3月22日にオンラインで会見をおこなった。
 どちらも、ニュージーランド代表“オールブラックス”で100試合以上出場してきた偉大なセンチュリオンズ。ワールドカップ優勝など数多くの栄冠に輝いてきた世界最高峰のハーフ団がそろって口にしたのは、「勝つ文化」という言葉だった。ヴェルブリッツの新たな歴史をつくろうと燃えている。

 現時点でオールブラックス歴代6番目に多い114キャップを重ねてきたスクラムハーフのアーロン・スミスが、日本リーグでプレーするのは初めて。同112キャップで、ワールドラグビー年間最優秀選手賞を2度も受賞し世界最高のスタンドオフと呼ばれるボーデン・バレットは、2021年にサントリーサンゴリアスで活躍して以来のジャパンラグビー参戦となる。

「リーグワンでプレーできることを楽しみにしています。いまの自分のキャリアにおいて、ニュージーランドから環境の変化という点で、チャレンジだと思っています。姫野和樹(2021年にハイランダーズで一緒にプレー)との再会も楽しみです」(アーロン・スミス)

「以前も日本ですごくいい時間を過ごせました。しかし、その時の状況下もあり、あまり楽しむことができなかったので、また戻りたいと思っていました。今回はコロナ禍ではないので、外にも出られて、以前よりもたくさんの経験ができると思っています」(ボーデン・バレット)

オンラインで、トヨタヴェルブリッツ入団に関する会見をおこなったアーロン・スミス(左)とボーデン・バレット。ふたりとも、まず日本語であいさつし、各質問に丁寧に答えてくれた。フレンドリーな世界的スター。

 ふたりがトヨタヴェルブリッツを選んだのは、同クラブのディレクター オブ ラグビーを務めるスティーブ・ハンセンの存在が大きかった。ハンセンはオールブラックスの前指揮官で、2015年のワールドカップ優勝を一緒に成し遂げるなど、結びつきが強い。

「彼は私のキャリアに大きな影響を与えた人物でもあり、信頼関係があります。スティーブが現在、『勝つ文化』というのをチームのなかで育てているので、その一員になれることを心待ちにしています」
 そう話すアーロン・スミスは、ハイランダーズでも指導を受けたことがあるヴェルブリッツ現ヘッドコーチのベン・へリングもよく知っており、彼のプレースタイルが好きだという。

 ボーデン・バレットも、「人」が大きな決め手となったと答えた。
「今回の決断は、トヨタにいるメンバーがあってこそ。スティーブからたくさんチームのなかの話を聞き、すごくいい環境があることを聞きました。いま彼自身が進めている『勝つ文化』の一員になれること、そして、それに対して自分が前向きな影響を与えられることを楽しみにしています。以前、サントリーでプレーしていたので、クラブを変えるというのは大きい決断でしたが、今回トヨタを選んだのは、人、というのが大きな理由です」

フルバックとしてもワールドクラスのボーデン・バレット(Photo: Getty Images)

 そして、オールブラックスの9番、10番として数多くの試合に出場してきたアーロン・スミスとボーデン・バレットは、互いをよく知る最高のコンビで、プライベートも仲のいい親友であり、一緒にヴェルブリッツでプレーできることを喜んでいる。
 アーロン・スミスは、「ふたりで挑戦できることが嬉しいです。クラブと歴史をつくって、タイトルを獲りたいと思っています」と語った。

 トヨタヴェルブリッツはリーグワンの前身であるトップリーグ時代から、4強入りはあるものの優勝したことはない。ふたりとも、日々の行動や準備、トレーニング、リカバリー、規律など、あらゆる面でプロとしていい基準をチームに示し、一貫性のある、正直な会話ができるような環境づくりをおこなっていきたいという。それが、『勝つ文化』につながると。そして、彼らには若い選手たちの育成も期待されている。

 サンゴリアスに所属していたときヴェルブリッツと対戦したことがあるボーデン・バレットは、「非常に接戦だったことを憶えていて、すごくフィジカルでセットピースが強いチームという印象がありました」と語り、自分自身やアーロン・スミスとのフォーカスとしては、「どういうフェイズプレーアタックをつくるか、ディフェンスをするか、そしてストライクオプションとしてどう創造的に抜けるか」という点をコーチ陣や選手たちと連携して磨いていきたいという。

現在はスーパーラグビーのハイランダーズで奮闘中のアーロン・スミス(Photo: Getty Images)

 アーロン・スミスは、「ハーフバック(スクラムハーフ)として、各選手の強みや弱みを理解した上で、いいチャンスを作りたいと思っています。姫野やボーデンとすごくいい関係があるので、FWのキャリーの強み、そしてスキルを活かしたプレーをしていきたいです。自分自身のプレースタイルは、周囲を活かすプレーなので、それに取り組んでいきたいです」と、ヴェルブリッツ入りしてからの意気込みを語った。
「日本のラグビーは非常にハイスピード、ハイスキルで、ワールドクラスの選手がほかのチームにもたくさん集まっているので、世界のベストと対戦できることを非常に楽しみにしています。ゲームの展開が速く、自分のスタイルに合っていると思います。ファフ・デクラーク(現・イーグルス)や友人の田中史朗(かつてハイランダーズに在籍/現・グリーンロケッツ)との対戦も楽しみです」

 ワールドカップ後の来日となるため、現在34歳のアーロン・スミスと31歳のボーデン・バレットは、その後のオールブラックスのキャリアについてもどうなるのか注目されるが、ふたりとも、いまは2023年シーズンにベストを尽くすことに集中している。

 ただ、間違いないのは、大きなモチベーションを持って日本にやってくるということだ。
 大好きなとんこつラーメンも楽しみだが、トヨタヴェルブリッツに合流することを心待ちにしている。

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