国内 2023.03.05

1・8倍の練習量で増量。中野幹[東京サントリーサンゴリアス]の負けん気

[ 編集部 ]
1・8倍の練習量で増量。中野幹[東京サントリーサンゴリアス]の負けん気
今季が3シーズン目。177センチ、109キロ。(撮影/松本かおり)



 3番を背負うのは今季2度目。
 東京サントリーサンゴリアスの中野幹が、3月5日におこなわれるトヨタヴェルブリッツ戦で先発する。

「今季、いまがいちばん調子いい」と話す。
 昨季より5、6キロ増量し、現在の体重は109キロ〜110キロ。その重さにも慣れてきた。

 昨季までも精一杯トレーニングしていた。
 しかし、その1・8倍ほど練習量を増やすことで増量に成功した。
「練習後、リカバリーして帰っていたところで、もう一度練習をしました。オフの日にも練習しました」

 昨年9月からプロ選手になり、トレーニングを増やせる時間を得た。
「もっと上に行きたいからです。(プロになって)逃げ道をなくしました。絶対に成功するんだ、という気持ちです」

 中野の言う「もっと上」とは、日本代表であり、海外リーグでのプレーを指す。
「そこで戦うには、以前のようなフィジカルでは足りない。(チームメートの)テビタ・タタフ(日本代表)やショーン・マクマー(オーストラリア代表)がいるので分かります」と話す。

 東海大仰星高校でラグビーを始めた。
 中学までは野球をしていた。それを続けるつもりで、高校の野球部に早めに加わった。しかし、思ったような空気ではなかった。

 ちょうど、中学ラグビー部の友人に誘われて花園で試合を見る機会があった。
 心を奪われた。

 高校では最初はNO8だった。
 当時の憧れは入学した時の3年生、現在花園近鉄ライナーズでプレーする野中翔平だ。
 しかし、膝の前十字靭帯を2回切り、2年弱プレーができず。その間に太ったことで、3番へ転向となった。

 プロのラグビー選手になって、スーパーラグビーの舞台で活躍する。
 その思いは、高校1年時にラグビーを始めたときに決めた目標だ。
 その夢を変わらず持ち続け、目指している。

 同じような夢を持っていた仲間もいた。
 しかし、初心を貫いている者は少ない。でも、自分は違う。
「(いま)できないことが、嫌じゃないんです。だから、僕には挫折がない。(最初は)やれないことができるようになるのがいい」
 ポジティブに生きる。

 今季は開幕から4試合に出場している(全9試合)。ヴェルブリッツ戦は2試合ぶりの出場だ。
 昨季は10戦に出場も、先発は2試合だけだった。
 もっと3番を背負うためには競争に勝つ必要がある。

 越えなければいけない、もっとも大きな壁は日本代表でもある垣永真之介。サイズでも、実績でも上回っている先輩だ。

「垣永さんはいま、チームでもっとも信頼が厚い3番です。だから自分は、それ以上に活躍しないといけない。いいスクラムを組んで、いいキャリーを見せ、タックルする。幹が不動の3番だな、と認められないといけないと思っています」

 その決意は固い。
「チームメートですがライバル。昨年までは話していたのですが、いまは覚悟を決めて、垣永さんとはあまり喋らないようにしているんです。負けていられない」

 昨季までサンゴリアスでプレーし、現在はスーパーラグビーのレベルズに所属しているセミセ・タラカイの存在は、目指す場所との距離を知る物差しのひとつだ。
 タラカイは昨秋のウエールズ戦でオーストラリア代表キャップも獲得した。

「サミーの活躍は嬉しいですね。一緒にプレーしていても凄かったけど、たどりつけるところにいる存在だという感触はある。(自分だって)やれる。負けていられません」

 まずは、サンゴリアスで絶対的な存在になりたい。夢に見てきたところは、その先にある。
 田中澄憲監督も、「自己分析ができるようになり人間的に成長できている」と話す。

 東海大時代にスクラム、モールで鍛えられて両耳は立派なギョーザ。
 それらが「グレートカリフラワー」と注目を浴びる日を目指し、鍛錬を続ける日は続く。


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