チームのため、セブンズのため。本村直樹[三重ホンダヒート]の決意。
三重ホンダヒートは、21点差をつけられても動じなかった。
2月5日におこなわれた、豊田自動織機シャトルズ愛知との第5節。46-24で大勝するヒートは先制PGを挙げて以降、防戦一方だった。
シャトルズに3連続トライを許し、前半33分にもPGを加えられて3-24とされる。
しかし、焦りはなかった。11番で先発した本村直樹が振り返る。
「自分たちがやりたいことをできていないわけではなく、これはアンラッキーな時間だと。コバさん(小林亮太)やフランコ(モスタート)がそう言ってくれたので、自分も割り切れました。点差うんぬんではなく、一つひとつのコンタクトで前に出ようと。それがチームとして統一できていた」
果たして、前半の終了際から巻き返す。
本村は幾度もトライに絡んだ。
1トライを返した38分、カウンターアタックから本村が防御網を切り裂き味方のトライを演出。
逆転に成功した後半の24分には、自陣深くから繰り出したFLパブロ・マテーラのグラバーキックに反応。一気に22㍍ライン内まで突破し、スコアするHO李承爀にオフロードで繋いだ。
前節の江東BS戦では、プレイヤー・オブ・ザ・マッチの活躍を見せていた。好調を維持する。
「どの試合でも一貫してライブレイクできるような選手になりたいと思っています。自信のついた試合でしたが、だからこそこれからが大事だなと思います」
ここがスタートラインと感じているから、反省を忘れない。
「今回は良いラインブレイクができましたが、それに対して得意になっている自分もいた。先のことを考えてパスを放ったり、もっとボールを離してもよかった」
5年間経験したセブンズから復帰して2年目。ようやく掴んだ出番は2節目からだった。
はじめの1年間は苦労した。
アタックでは、セブンズで培ったスピードやフィットネスでアピールできている実感はあった。
しかし、上田泰平HCがセレクションポリシーに掲げていたディフェンスで、適応に時間を要す。昨季限りで引退した、同じポジションの生方信孝が手を貸してくれた。
「ホンダは、とにかく前に出てプレッシャーをかけ、相手のミスを誘うシステムでした。自分が死んでも(外されても)次のプレイヤーがカバーする。でもセブンズはできる限り死なない。
そこにコミットするのに1年かかってしまいました。だいぶクリアになってきましたが、うぶさんが見たら『まだまだだね』と言われると思います(笑)」
この1年間は、焦りもあった。ともに東京五輪を戦った、松井千士(横浜Ē)や小澤大(トヨタV)といった仲間たちの多くが活躍の機会を得ていたからだ。
「東京五輪では思うような結果を残せなかったので、このメンバーがリーグワンで活躍しないとセブンズの価値がどんどん下がっていくと感じていました。そうした思いをみんなが持っていた中で僕だけが出られていない。もどかしかったですね」
セブンズへの思いは尽きない。「15人制で出られない選手がセブンズにいく、感じにはしたくないです。自分の能力を上げたり、自分の道を開く場所として、チャレンジする人が増えて欲しい」と話す。
自身も、セブンズ挑戦のきっかけは「レベルの高い環境に身を置き、自分を磨くため」だった。
だからこそ、「僕らが15人制で活躍することでセブンズの道も開けていく。いまは(成績が)苦しいけど、そういう形で僕らはつないでいくしかない」と決意は固い。
15人制への復帰を決めたのは、所属クラブへ感謝を伝えるためでもある。「5年もの間、セブンズを経験させてくれました。従業員の方もたくさん見てくれる15人制で活躍する姿を見せることが、ホンダへの恩返しだと思っています」
ディビジョン2は、2月26日から後半戦が始まる。本村は同日の釜石SW戦でも11番に入った。同じセブンズ代表で同期でもある、藤田慶和とコンビを組む。
「両WTBが五輪選手ということに自信がある。それが相手へのプレッシャーになればと思っています」
いろんな思いを背負い、今日もフィールドを駆ける。