国内 2023.02.18

「管理されてやる次元ではない」と堀江翔太。今季初のゲーム主将へ。

[ 向 風見也 ]
「管理されてやる次元ではない」と堀江翔太。今季初のゲーム主将へ。
2月18日のライナーズ戦で先発するワイルドナイツの堀江翔太(撮影:向 風見也)


 序章が奏でられた。

 ワールドカップ・フランス大会を今秋に控えたラグビー日本代表は、先週末に都内で1泊2日のミーティング合宿を実施。首脳陣と一部の選手が、今後の目標設定とスケジュールを共有した。

「ミーティングですよね? 行きました、行きました」

 こううなずくのは堀江翔太。大阪府出身の37歳で、身長180センチ、体重104キロにあってシルエットはシャープだ。ポジションはスクラム最前列のHOで、ぶつかり合った瞬間のボディバランスにはしなやかさと強靭さがにじむ。

 日本代表としては過去、3度のワールドカップに出た。直近では、昨夏に2019年秋以来の復帰を果たしている。同年秋の活動には参加しなかったが、今度の「行きました」でジェイミー・ジョセフ ヘッドコーチの構想内にあると再確認された。

 16日、所属する埼玉パナソニックワイルドナイツの練習場で述懐した。

「緊張感はありましたよ。代表のミーティングや! という緊張感。『これからの試合はこういうところを見てくよ』という話が(攻撃担当コーチの)トニー・ブラウン、(防御担当コーチの)ジョン・ミッチェルからあったので、その辺は(今後、意識)していきたいなと。フィジカルは上げられる部分はある。スキルは日本の特徴でもあるので、そこら辺もうまいこと上げられるようにという話もありました」

 2015年のワールドカップ・イングランド大会では、大会前の長期キャンプを活かす形で南アフリカ代表などから歴史的3勝。2019年の日本大会でも、前年12月までに国内リーグを終わらせるという業界全体の下支えもあり初めて8強入りした。

 2大会連続での決勝トーナメント行き、もしくはそれ以上の成績が期待される今度のフランス大会へは、それまでの成功体験を踏襲することはできない。

 国内リーグワンは5月まであり、代表選手が一堂に会して汗を流す機会はそれ以降となるためだ。

 準備期間がやや短くなった。しかし、当事者はばたつかない。

 ここ数年で日本代表が強くなる過程で、「アスリートが、増えてきている」と堀江。ここでの「アスリート」とは、外的要因に惑わされずに結果にコミットしようとする選手のことを指すのだろう。

 歴史的背景を鑑み、未来は明るいと断言する。

「何かに、誰かに縛られて、管理されてやるような次元ではなくなっている。もう、いい大人ですし、やるかやらないかで、勝つが負けるかが自分に降りかかってくる。自己管理して、結果が出なければ自分たち、チームのせいとなる。(代表の首脳陣も)そう投げかけているんじゃないかと、僕は思います。プロとして、そういうふうに、しなければならない」

 当面はリーグワンを戦いながら首脳陣とその都度、対話し、シーズン終了後からギアを入れるイメージか。

 渦中、堀江は「慎重」に進歩し続けたいという。

 周りを和ませる。

「年を取ると下がってくるので、頑張って維持しながら、常に成長していきたいなと思います! …うまいことリカバリー(回復作業)をせんと、きつくなる部分はあるのでね。去年よりもベストな感じはあるんですよ。出る分数(出場時間)は去年より長いのに、けがが少なくなっているので。その分、慎重にやっていかなあかんという思いが強いです。調子のいい時こそ、抑え気味に」

 まもなく、休息週を経て初めてとなるリーグワン1部の試合がある。

 開幕7連勝中で目下首位のワイルドナイツは、18日、本拠地の埼玉・熊谷ラグビー場で勝ち星のない花園近鉄ライナーズと対戦。堀江は今季初先発で、ゲーム主将を担う。

 ワイルドナイツのHOには、日本代表でも船頭役の坂手淳史主将がいる。坂手より8学年先輩の堀江は、今回のスターターの機会へこんな心持ちだ。

「このチームの主将は坂手。ただゲームになったら、グラウンドのなかで起きる問題点をチームメイトと話して修正していけるようにしたいと思います」

 リザーブとしての堀江は、持ち前の知恵、経験、戦術眼を、試合中の微修正に活かしてきた。

 序盤はベンチから攻防を観察し、適宜、仲間に改善点を伝える。特に、自身が構築に携わった防御システムについて声をかけることが多い。

 普段先発する坂手には、こう感謝される。

「僕たち(先発陣)が必死にやっているなかで気づかない部分を伝えてくれて、ゲームがよく進んでいく」

 後半途中に投入されると、その場に応じて必要項目をリマインド。果たして、互いに疲れが見える時間帯にも「練習でやってきたこと」を首尾よくおこなう。横浜キヤノンイーグルスを試合終了間際に逆転で下した第6節は、まさにその好例だった。

 今度は、キックオフと同時に芝に立つこととなる。

 2019年まで日本代表不動の主力HOだった堀江は、興味深い視点で話した。

「先発の難しさは、ある。いつものリザーブの時は(ベンチから)相手の様子を見て、どういうふうにやっていくかを決めながら(グラウンドに)出ていくんですけど、(先発では)それがないなかでやっていく。(ピッチレベルでは)『BKが(自身の)後ろに何枚おる』とかは、なかなか、見にくいですし、あまりそういうことを考えると自分のプレーができなくなる。まずは、自分の仕事を全うしたいですね」

 広い視野を持つ人間が、ひとまずラン、パス、タックル、ポジショニング、スクラム、ラインアウトといった「自分の仕事」に専念する。いつもの「16」ではない「2」をつけた堀江の一挙手一投足が、当日のチケット代の価値を高める。

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