コラム 2023.02.17
【コラム】大物選手が活躍する条件

【コラム】大物選手が活躍する条件

[ 向 風見也 ]

 

 中止したシーズンを除けば5季連続で2位以上の東京サントリーサンゴリアスから、4トライを奪った。

 34-40と屈したが、好機に大胆に球を振るさまは痛快だった。

 日本代表の顔であるリーチ マイケルのハードワークが、ニュージーランド代表だったセタ・タマニバルの個人技が、フィジアンのジョネ・ナイカブラのスピードが、局所的に光るのではなく組織に溶け合っていた。

 勝ちたければ、意図して点を取りたければ「トレーニングと準備」がマストだ。その簡潔な結論に説得力が帯びる。

 そして「もうひとつは…」と、話は続く。チーム作りを支える「ふたつ」のうちふたつめに、「愛着」を挙げた。

「きっと、色んなチームの、色んな選手にインタビューをされていると思うんですけど…。うちの選手、スタッフとも、このチームのことが、好きだと思います。愛着を持っている」

 実際、どのチームの選手が自分のチームを一番「好き」なのかは証明できない。好意は数値化できないからだ。

 ただし確かなのは、陣容に見合った、もしくはそれ以上の成果を出しているチームで、自分たちの組織に「愛着」を持たない人はそれほどいないと感じさせられる。

 常時プレーオフに進むクラブには決まって、練習態度やチームファーストを誓う言動で仲間から尊敬される選手がいる。

 付け加えれば、そこにいるプレーヤーがチームに「愛着」を持てるような仕掛け、対話、コーチングを、クラブが、マネジメントスタッフが、首脳陣が施している。

 森田は、ブレイブルーパスの「準備」の質と選手たちの持つ「愛着」を繋げて話した。

「我々が週末にいいパフォーマンスができているのは、プランを明確にしたうえで、それを試合以上のプレッシャーのなかで準備しているからです。その意味では、1週間の練習で、残念ながらその週のゲームに出られない選手(試合出場組の相手役となる)のチームへのコミットメント、練習へのエフォートは、おそらく、間違いなく、うちが一番です。そこにはチームへの思い、ロイヤリティがある。人がやることなので、興味のないところにはそういうもの(個々の献身)は生まれないですから。そして、それがなければ、どんなにいい選手を揃えても勝てないです」

 ブレイブルーパスは2015年度のトップリーグで準優勝してから、しばらく低迷した。

 しかしトッド・ブラックアダーヘッドコーチが就任した2019年以降、徐々に風向きを変えた。

 一時、苦しんできた学生選手のリクルーティングを改善し、全国上位の大学の主力を相次ぎ加えることができるようになった。リーチ、元ニュージーランド代表のマット・トッドといった練習熱心なレジェンドが、その若者たちの規範となったのも大きかった。

 全体トレーニングの後に個人練習に没入する選手の数、姿勢は、森田によれば「7~8年前といまとでは違う」とのことだ。

 クリアな方針のもと質の高い「準備」がなされていて、かつ選手の組織への「愛着」がにじむのは、件の「府中ダービー」を制したサンゴリアスも同じだ。こちらは「アグレッシブアタッキング」を部是とし、組織的に攻め続けるのに必要なスキル、運動量、献身性を全ての選手に求める。

 各カテゴリーでトップ級の綺羅星を揃えて勝っているように思われがちだが、廃部した宗像サニックスブルースからテスト入団の宮崎達也はこう述べる。

「練習のやり合いで、全員が、勝とうとしている。目の前の相手に絶対に負けないという意識を強く感じる。激しさが違う。最初は、(これまで所属したチームとの)ギャップにびっくりしました。味方同士だと『流すところは、流す』となりがちなのですが…。たぶん、(その時に所属する選手が)有名どころばかりじゃなくても、外国人がいなくても、(一定水準までは)作り上げていけるチームだと思います」

 さらにサンゴリアスは、昨年から小沼健太郎氏をプレイヤー・ディベロップメント・マネージャーとして招いている。

 コーチングスタッフと距離を置いて選手の相談に乗る、心身の健康を重んじるニュージーランドのクラブで当たり前となっている役職だ。クラブ内での競争力を保ちながら、その空間を殺伐とさせないわけだ。

 明確なビジョンと戦法があり、それを個々が信じ、愛していて、献身をいとわぬ空気があり、グラウンドを離れても居心地がよい。

 何名かの証言を総合すると、大物獲得よりも必須のファクターはこのように言語化できよう。

 裏を返せば、上記の項目を一切、満たさぬままあちこちから人材をかき集めても、安定的に結果を残す集団は作りづらいだろう。森田の言い回しに倣えば、ラグビーは「人がやること」。コンピューターゲームとは違う。

 ブレイブルーパスは来季、シャノン・フリゼルとリッチー・モウンガという現役オールブラックスを迎える。2人に勝たせてもらおうとするのではなく、2人をブレイブルーパス色に染めて勝とうとするか。

 サンゴリアスは、現時点では外国人選手の大幅な刷新はしない見込みだ。いままで戦力ありきで勝ってきたわけではないのを、よりわかりやすく証明したい。

【筆者プロフィール】向 風見也( むかい ふみや )
1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年よりスポーツライターとなり、主にラグビーに関するリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「スポルティーバ」「スポーツナビ」「ラグビーリパブリック」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)。『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(共著/双葉社)。『サンウルブズの挑戦』(双葉社)。

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