国内 2023.02.13
【連載】プロクラブのすすめ⑤ 山谷拓志社長[静岡ブルーレヴズ] 「ホームアドバンテージを作りたい!」

【連載】プロクラブのすすめ⑤ 山谷拓志社長[静岡ブルーレヴズ] 「ホームアドバンテージを作りたい!」

[ 明石尚之 ]

――ホストゲームの演出も、かなり浸透してきたように見えます。

 これまでホームゲームの演出にラグビーファンの方は慣れていなかったと思いますが、ブルーレヴズのホストゲームではホームチームを後押しする、盛り上げるというところはだいぶ定着してきたと思います。スクラムの時に手を叩いたり、足踏みをしたりする”スクラムノイズ”だったり、グリーンロケッツ戦もかなりノリが良かったです。

 ただ僕は一番応援したな、楽しかったなと思うのは、声を出すことだと思っているんです。声出し応援が解禁された時(リーグワンは2月4日の試合から、マスク着用を前提とした声出し応援を解禁)には、声を出したくなるような雰囲気づくりをしていきたいです。
 宇都宮ブレックスの時も声出しの応援にはめちゃくちゃこだわっていました。はじめは日本人は声を出さないという意見もあったのですが、MCなどが誘導するのではなく、観客の皆さんから(自発的に)声が出るまでじっくり待ちました。
 声を出さないと盛り上がらないようにわざとしたんです。例えばディフェンスの時に「ディーフェンス」とコールをするのですが、そこでMCを使わずに「トントン」というリズムの音だけを出した。そうすると何か喋らなければいけない空気になって、だんだんと声が出るようになった。周りのみんなが声を出せば出したくなるんです。それでいまでは宇都宮は声出しの応援がウリになった。他のチームはみんな嫌がっていました。

 ヤマハスタジアムでもそういう雰囲気を作れると思っています。スクラムの時はうるさくてすごい、みたいな。うちのチームは勢いに乗って、相手チームは戦いにくいと感じる。それがホームアドバンテージですよね。
 もちろん、相手へのリスペクトといったラグビーらしさを残しつつも、ホームのチームの後押しをする、みんなも一緒に戦うという雰囲気はぜひ作っていきたい。
 相手がやりにくいと言うとラグビーでは誤解を招く可能性があるのですが、キックの時に邪魔するとかではなく、自チームへの応援の熱そのものが相手からするとプレッシャーになるような状況です。ラグビーでもテストマッチではアウェーの国はやりにくいですよね。

 あとはどういう言葉を発するか。バスケの「ディーフェンス」にあたる言葉を見つけたいです。一番分かりやすいのは日本代表の時のリーチコール。お約束の言葉と、言うタイミングが分かればみんな言える。
 レヴズであればそうしたフレーズを例えばスクラムの時に言いたい。そういう下地はできてると思います。

――山谷さんからラグビーファンはどう見えていますか。バスケよりも年齢層は高めで、静かに見る人も多い印象です。

 ノリとかは年齢関係ないと思います。グリーンロケッツ戦でも、勝利してテンションが高かったこともあり、出口でみなさんとハイタッチもしました。周りが声を出したり踊り出せば、みんなやる。どこかにそういう境界線があるんです。アメフトのライスボウルでは、マカレナダンスを観客の5万人全員が踊るシーンを見てきましたから。
 勝ったら社員もボランティアも周りのいたる人とハイタッチしまくる、みたいなのも面白いかもしれません。そうしたホームの色を出したいですね。

――山谷さんはホストゲームの演出にどのくらい関わっていますか。

 僕もミーティングに入って、いろんな案を出しますよ。このシーンでこの曲使ってみたらどうか、とか。それはラグビーには合わないと言われたりもしますが(笑)、楽しい議論です。

 スタジアムでかかっている音楽のCDを日本で一番持ってる自信があります(笑)。NFLだとチームごとに演出でかける曲をまとめたCDが売っているので、旅行で行くたびに買い漁ってきました。(アメフト)選手の時から好きで、こういう曲をかけて欲しいとかリクエストもしていました。
 バスケの時は最初、お金がなくて外注できなかったので、曲出しスタッフを僕がやっていたりもしました。パソコンの前に向かってiTunesで選曲して…。

 だからこの曲をかければ必ず盛り上がるというのを知っているつもりです。経験則でいえば、この曲は盛り上がる、この曲はすごく緊迫した雰囲気になる等、そのシーンごとにお約束の曲がある。
 スタジアムやアリーナでかかっている音楽は、奥が深くて面白いんです。

※2月25日にヤマハスタジアムでおこなわれる東京サンゴリアス戦では、声出し応援を解禁(予定)。

PROFILE
やまや・たかし
1970年6月24日生まれ。東京都出身。日本選手権(ラグビー)で慶大がトヨタ自動車を破る試合を見て慶應高に進学も、アメフトを始める。慶大経済学部卒業後、リクルート入社(シーガルズ入部)。’07年にリンクスポーツエンターテイメント(宇都宮ブレックス運営会社)の代表取締役に就任。’13年にJBL専務理事を務め、’14年には経営難だった茨城ロボッツ・スポーツエンターテイメント(茨城ロボッツ運営会社)の代表取締役社長に就任。再建を託され、’21年にB1リーグ昇格を達成。同年7月、静岡ブルーレヴズ株式会社代表取締役社長に就任

静岡ブルーレヴズ立ち上げの際の記事はこちら(ラグビーマガジン2021年9月号)
リーグワン2022を振り返った記事はこちら(ラグビーマガジン2022年7月号)

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