【ラグリパWest】捲土重来に向け…。京都府立洛水高校
京都は京洛とも呼ばれる。「洛」は中国王朝の都であった洛陽からとった。
京都もまた都だった。定まったのは平安時代。1200年以上も昔である。そのため、洛の字がつく高校が多い。洛北と洛水の府立2校は今でもラグビーが盛ん。洛北は旧制京都一中であり、7回の全国大会出場がある。
洛水は「水」がつくゆえんがある。学校は京都市の南西に位置し、近くには桂川が流れる。すぐ先で宇治川と木津川と合流し、大阪の街を潤す淀川になる。洛水のジャージーはブルーと濃紺の段柄。水のイメージだ。
その創部は1984年(昭和59)。40周年を来年に控え、勢いを盛り返してきている。
最初で最後となる全国大会の府予選決勝に勝ち上がったのは24年前。伏見工(現・京都工学院)とはわずか4点差だった。17−21。79回大会のことである。
昨秋の全国大会予選は4強入り。この1月に始まった新人戦(兼近畿大会予選)では2ブロック制ながら決勝に進んだ。
復活の中心にいるのは服部良太。36歳のOB監督はまた、国語科の教員でもある。丸顔の中の目を細める。
「花園に出たいですね」
現役時代は173センチ、115キロのPR。ラグビーは七条中で出会う。
この2023年チームの特徴は大きさだ。
木村大祐 LO 183センチ、121キロ。
牧野圭太 NO8 185センチ、124キロ。
北岡竜成 PR 176センチ、111キロ。
新人戦の決勝では主将である木村と牧野にボールを集めた。
格言に「サイズも才能」がある。この3人は服部の地道なリクルートの成果である。
「服部先生が誘ってくれました」
木村は進学理由を話す。長岡二中で「体が生かせる」と競技を始めた。牧野は伏見中での経験者。北岡は野球出身である。
彼らが練習しやすい環境を服部は整える。昨年11月には学校グラウンドのラグビー練習側に照明器が6つついた。
「照明は友達がもってきてくれました。周囲に寄付をたのんだから、友達が減りました」
服部は笑う。ふるさと納税も混ぜ込んだ。
グラウンドは土である。
「縦は90メートルほど。横はフルサイズの70メートルを十分に超えます。ポールも立ちます。ここで練習試合もします」
そのグラウンドを野球やサッカーなど5つのクラブで分け合う。ウエイトルームは隣接。専用ではないがバーベルなどは揃う。平日の練習は3時間ほどかける。
服部には師がいる。杉本修尋(のぶひろ)。24年前、全国予選決勝時の監督である。今はアドバイザー的立場で指導を施す。服部は高1の1年間、教えを受けた。杉本はラグビーには珍しい数学教員でもあった。
「杉本先生は人を引きつけます」
昨秋、腐りかけた3年生がいた。「今さら」と言葉を吐いた。杉本は返した。
「今さら、って言うんやったら、いつになったらやるんや? 今日はまだ終わってない。やったらええやないか」
杉本は洛水の次の赴任校、桂でもラグビー部を強化する。2013年、全国大会に初出場させた。93回大会は2回戦で桐蔭学園に5−57で敗れたが、府立校としての出場は鴨沂(おうき)以来、50大会ぶりだった。昨年、還暦を迎えたが、その前に早期退職をしている。
全国出場時、服部はコーチとして杉本を支えた。桂でも師のやり方を目の当たりにする。その2年後、母校の洛水に移った。
「僕が来た時、ジャージーがそろっていませんでした。OBに古いものを5000円で買い取ってもらって、そのお金で新調しました」
その低迷期に赴任して、この4月が来れば8年目に入る。照明など、周囲の状況は少しずつ改善される。3年前には公民の教員として畑(はた)耕平が向陽から異動してくる。服部は3歳上の畑に部長を託した。
「練習メニューは2人で考えています」
畑は東山から龍谷大に進んだFL。大学時代は一部の関西Aリーグで戦った。
服部は天理大出身である。ラグビーは家族の反対があり、アメフト部に入った。
「隠れてやっていました」
ラグビー一筋ではなかったこともあって、部員たちには上からものを言わない。
「やる気を出さすことを第一に考え、言い過ぎないことを心がけています」
敬語を使う。諭すように話す。
洛水の学校創立は1978年。全日制普通科校で男女共学である。1学年は200人ほどだ。
「半数くらいは専門学校に進みます」
部活は馬術部が名をなす。インターハイにあたる全日本高校馬術競技大会には22回出場。練習は近くの京都競馬場でやっている。
学校へのアクセスは悪くない。京阪特急が停車する中書島駅から自転車で10分少々。学校前には市バスの停留所もある。ラグビー部員は市の北になる修学院からも来ている。
部員数は32。2学年それぞれ16人ずつ。新3年生は女子マネ1人を含む。これからの入試には経験者を含め12人が挑戦する予定だ。スポーツ推薦はわずかながらある。
洛水は復活ののろしを上げているものの、府内2強との差はかなりある。新人戦では京都工学院に0−100、全国予選は京都成章に0−94だった。まだ、強いものには弱い。部内マッチではわめく上級生がいたり、威勢はよいが、内弁慶では仕方がない。
その現役たちを物心両面から支援する意味合いもあって、この4月、「洛水ラグビークラブ」(仮称)を立ち上げる。OBの結束を強める意図もある。
この春に卒業する選手は8人。主将だったFLの村田謙臣(けんしん)は大阪産業大、PRの林右偉(ゆうい)は花園大に進む。ともに二部の関西Bリーグ。ラグビーで大学に引っ張られる選手も出始めている。洛水は、服部を軸に色々と手を打ちながら、再び強豪校になる地歩(ちほ)を固めてゆく。