【シックスネーションズ】敵地での「素晴らしい世界」へ。フランスは規律を高めてアイルランドと戦う
「規律が低過ぎた、20近くペナルティを取られた(正確には18)。急いで修正しなくてはならない。試合の序盤にチーム全体に伝染したディシプリンの低さを止めることができなかった。来週の試合までに必ず直さなければ。(勝利を)ポジティブに捉えたいが、今日の試合は明らかにポジティブな点よりもネガティブな点が多い」
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先週のイタリア戦(29-24)終了直後のフランスの中継局『フランス2』へのアントワンヌ・デュポン(SH)のコメントである。笑顔は無かった。
序盤はLOチボー・フラマンのチャージからのトライ、SOロマン・ンタマックのキックパスから2トライを挙げ、コンタクトでもフィジカルの差を見せつけた。フランスが快勝するのかと思われた。
しかし、流れが変わる。
この試合でフランスは18のペナルティを取られた。
フランス協会は代表活動期間中、『Destins Mêlés(デスタン・メレ)』というタイトルの動画を毎週公開している。活動内容を紹介するものだ。
『Destins』は 運命の複数形。『Mêlés』は混ざる・交わるという動詞の過去分詞だ。スクラムを意味する『Mêlée』もこの動詞から来ている。
『交わる運命』というところだろうか。
今週公開された動画には、イタリア戦の準備にあたり元インターナショナルレフリー、現在フランス代表でディシプリンコーチとして帯同しているジェローム・ガルセスが登場した。
「昨年のオータムネーションズ・シリーズでイタリアの1試合平均のペナルティ数は9.3で、世界で最も規律の良いチームになった。フランスはイタリアに次いで9.7だ」と、イタリアの規律の良さに注意をするように伝えていた。
この試合でもイタリアのペナルティ数は7と優秀だ。
それに対してフランスは前半だけで9のペナルティを数えた。ラックで相手がボールを出すのを遅らせ、ターンオーバーするのがフランスの強みだ。
しかし「レフリーが求めるクリアなイメージを見せることができず」(デュポン)、ことごとくペナルティを取られた。
同じ動画で、この試合のハーフタイムのフランスチームのロッカールームの様子が紹介されている。
「イタリアはタッチに出さない。フランスがラックで反則するとわかっているからだ。次に反則すればイエローカードだ! イタリアはどんどんボールを回してくる。フランスがイエローカードを出されるとわかっているからだ。まんまと彼らの思う壺にはまる。試合前にラックで反則するなと言ったじゃないか。君たちは指示を聞いていない!私が言ったことを聞いていない!」
いつも冷静に話すファビアン・ガルチエ ヘッドコーチ(以下、HC)だが、この日は冷静ではいられなかったようだ。
「これだけは頭に入れておけ。次のペナルティはイエローカードだ。ラックに入りにいくな! ラックに手を出すな!」と続けた。
しかし後半も規律を立て直せず、FLシャルル・オリヴォンがハイタックルでペナルティを取られた。
その後、自陣ゴール前でモールを崩しペナルティトライ、シンビンとなった。
最終的に、後半に入った選手のエネルギーと冷静さのおかげでボーナスポイントを獲得して勝利することができた。
過去のフランス代表なら負けていただろう。
アイルランド戦のメンバー発表の会見でガルチエHCはチームの規律について、「イタリア戦の前、(自分たちは)1試合平均のペナルティがイタリアに次いで世界で2番目に少ないチームだった。だがイタリア戦ではペナルティの数が2倍になってしまった。なぜそうなってしまったのかを理解することに意義がある」と話した。
「毎回、代表シーズンが始まる時に最新のレフリングの解釈に適応できるように練習している。今回も最初の3日間、そのための時間をとった。これまでも代表活動を再開した最初の試合のペナルティ数は15〜17だが、次の試合では9ぐらいに減らすことができている。しっかりと修正するべきところを修正した。イタリア戦でのペナルティの数が少なくても修正はしていた。規律はこのチームの強みだから」
発表されたアイルランド戦の先発メンバーは、先週のイタリア戦から変わらない。
ベンチに控えていたSHノラン・ルガレックに代わりSHバティスト・クイユーが、LOトマ・ラヴォーに代わり、昨年のシックスネーションズ全勝優勝メンバーであるFLフランソワ・クロスが帰ってきた。経験が選ばれた。
クロスは膝の怪我から復帰してトゥールーズで3試合途中出場し着実に調子を上げてきている。クイユーは首の怪我から復帰して、リヨンで試合に出ることなくすぐに代表合宿に参加している。
「ボーナスポイント付きの勝利という目標を達成した先週のパフォーマンス。そして一貫性。代表活動の時間は限られているので、一貫した戦術の構造をつくることが重要。そしてこのグループへの信頼。先発の15人にも、フィニッシャーのグループにもサプライズはない。現時点でのベストメンバーだ」とガルチエHCはメンバー選考の理由を説明する。
ガルチエ体制になってから、フランスはアイルランドに3連勝している。
そのうち2勝はホームのスタッド・ド・フランスで、1勝はアウェーのアビバ・スタジアムだが、その年は無観客で試合が行われたため、アイルランドのサポーターのプレッシャーを感じながら対戦するのは今回初めてだ。
それについてレ・ブルーの名将は答える。
「『ようこそ、この素晴らしい世界へ!』と選手によく言います。この素晴らしい状態でキックオフからプレーできるスターティングの座を誰が手放したい? 誰がそこから逃げたい? 誰も手を上げない。こういう試合こそが、我々の活動に価値を与えてくれる。プロジェクトを掲げ、ともに守り、ともに攻める。我々が夢を見ることを誰が妨げるというのか。誰もいない。サポーターは16人目の選手だ。しかしグラウンドには入ってこない、タックルにも来ないし、スクラムを押すわけでもない。15人対15人の試合だ」
アイルランドvsフランス
2月11日(土)
15時15分キックオフ(日本時間2月11日 23時15分)
【アイルランド戦メンバー】※フランス協会Twitterより。