国内 2023.02.08

花園でつかんだ手応え。初の選抜大会へ、思い熱く。青森山田高校

[ 編集部 ]
花園でつかんだ手応え。初の選抜大会へ、思い熱く。青森山田高校
新チームを牽引する中村桐十郎主将。東北新人大会の初戦は、2月8日の秋田中央戦。(撮影/松本かおり)



 春の晴れ舞台を目指す。
 東北高校新人大会(全国高校選抜大会東北予選)が2月8日から、宮城・女川で始まる。

 3位までに入れば熊谷への切符を手にできる大会。
 これまで選抜大会に縁のなかった青森山田が初出場を目指して燃えている。

 昨年度は青森の新人大会を制したものの、コロナ禍の影響を受けて東北新人大会が中止となった。
 出場枠は過去の実績により決められたため、願いは叶わなかった。

 その前年は東北新人大会の3位決定戦で敗れる。さらにその1年前は東北3位となるも選抜大会自体が中止となった。

 新チームの主将を務めるFL中村桐十郎(とうじゅうろう)は、「先輩たちの果たせなかった夢を実現させたい」と話す。
 東北新人大会でのプレーさえ叶わなかった、昨年の3年生たちの落胆が忘れられない。

2年生のHO秋元健太(左)と1年生のNO8アホ・アントニオ。同校には校舎内にローソンがある。(撮影/松本かおり)
外は雪。冬は校舎内でのトレーニングも多い。この日はタックル練習もおこなっていた。(撮影/松本かおり)

 チームを率いる立場となり気を引き締める。
「去年の3年生たちは、まとまった、いいチームを作ってくれました。自分も同じようにチームをまとめられるか心配です」と不安はあるものの、「キャプテンを任されて光栄です。しっかりチームを引っ張っていきたい」と前を見る。

 新主将は、4大会連続4回目の出場となった先の花園を振り返る。
 1回戦で明和県央(群馬)に33-14で勝利するも、2回戦でシード校の天理(奈良)に15-29で敗れた。

「東北では通用していたアタックが、全国大会では一人では抜けない。そんなシーンもありました。アングルやスピードなど、細かいところが花園ではレベルが違いました」

 しかし、ベスト4に入った天理から2トライを奪い、後半は12-5と健闘できたことについては、「手応えがあった」と振り返る。
「細かいところを修正していけばシード校にも勝てるようになる、と思いました」

 東京の江東ラグビークラブ(ジュニア)出身の中村主将。同クラブから青森山田に進学した先輩には、1学年上の古賀正太郎がいる。
 雪が多く、寒い青森での生活を、「最初は(雪道を)うまく歩けなかった」と言うも、「充実している」と笑顔を見せる。

 高校の進学先を決める際、いくつかの選択肢があった。
 関東でなく北へ向かうと決めたのは、「チームと一緒に強くなっていきたい、と以前から思っていた」からだ。

 親元を離れた仲間との生活も楽しい。寮には全国的な強豪、サッカー部の部員も暮らしている。
「練習量や意識の高さに刺激を受けます」と話す。

「ラグビー部は部員も多くないので、コミュニケーションをよくとれます。友情関係が深くなります」と日々の様子を伝える。
「留学生たちも、いい人ばかりです。週に一回みんなで買い物をして、それを食卓に並べて食事をするトンガの文化がある。そこに参加させてもらうと本当に楽しいんです」

 彼らの強い当たりを日頃の練習から受けている。そのお陰で、花園での天理戦でもコンタクトの激しさに驚くことはなかった。
 留学生と過ごす時間は、ラグビーの面でも人生でも、一生の宝物だ。

 主将を支えるHO秋元健太も、東北新人大会で結果を残すために気持ちが入っている。
「FWは3年生が多く抜けたので(自分が)引っ張っていかないと。チームとして、コミュニケーションをもっととれるようにしたい。きついときにも楽しめるチームになれるようにします」

 秋元は青森市少年ラグビースクール出身。日本ラグビー協会のU17ユーストレセンに選ばれた選手だ。
 将来は体育大学の進学を考えている。中学校教員か消防士になる夢を持って成長を続ける。

 トンガからの留学生、アホ・アントニオは「ニオ」の愛称で可愛がられる1年生だ。周囲とのコミュニケーションも多く、日本語の上達もはやい。
 春から2年生となる。これまで以上に仲間との距離は近くなりそうだ。

 190センチの長身NO8は、高いボールの扱いでチームへの貢献度も大きい。
 青森山田のOBで、大東文化大2年のNO8リサラ・フィナウに憧れる。同じように存在感のある選手を目指す。
「将来も日本にいて、大学ラグビー、リーグワンでプレーしたいです」

 それぞれが思いを胸に、大会に挑む。選抜大会を経験したら、また新しい景色を見ることができるかもしれない。

多くのクラブが全国上位の実力を持つ。(撮影/松本かおり)

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