ワールドカップ 2023.02.01

W杯優勝が目標。オーストラリア国内のラグビー熱に火をつける。初会見でエディー節全開

[ 編集部 ]
W杯優勝が目標。オーストラリア国内のラグビー熱に火をつける。初会見でエディー節全開
初会見で熱く語ったエディー・ジョーンズHC。(©Karen Watson)



 エディー節全開だ。
 1月31日、オーストラリア代表の新ヘッドコーチ(以下、HC)となったエディー・ジョーンズが、就任後初めて記者会見に臨んだ。

 1月29日(日)の朝、オーストラリアに到着したジョーンズHCは、そのままワールドラグビー セブンズシリーズ シドニー大会を観戦。
 月曜日、オーストラリア協会本部に初出勤した。

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 初会見は、ジョーンズHCの母校、マタラビルスポーツハイスクールで開かれた。
 在校生の歓迎を受けた同HCにとっては、2度目のワラビーズ指揮官就任。ワールドカップ(以下、W杯)で82パーセントの勝率を誇る男は、同代表を3度目の世界一へ導くことが期待されている。

「若い世代に15人制ラグビーの魅力を感じてもらい、ワラビーズを応援したいと思わせることが最大の任務です」とジョーンズHCは言う。
「才能に溢れた若い選手がたくさんいます。私の仕事は、オーストラリア国民が彼らを誇りに思えるように一つにまとめることです」

 競技人口の減少が伝えられる同国。新HCは、「ワラビーズの躍進が、若い世代の15人制ラグビー熱に火をつけられるはず」と話す。

「若くて才能ある選手たちをうまくまとめたい。華麗なパス回しだけがファンを増やすわけではない。伝統的に強かった頃のワラビーズがそうであったように、僅差の試合を確実に掴める力が大事になる。仮にパスを減らしキックを多用したとしても、魅力的なラグビーはできます」

 大役を任されて光栄だ。
「国全体の競技力に影響を与える機会が目の前にあることは素晴らしいこと。このプレッシャーと責任を良い方向に転換できれば、W杯優勝も達成できます。そして今のワラビーズにはそれが可能な選手が揃っている」と続けた。

 目標は「W杯優勝以外にありません」と明確に答える。
「W杯を獲ることができれば、国内のラグビーを取り巻く環境も大きく変わるはずです。ワラビーズの才能ある選手が一つになれば必ず達成できると信じています」

「現在の世界のラグビーは実力が拮抗しています。トップ6か国の実力は紙一重でしょう。どこが勝ってもおかしくない状況です。W杯を獲るのは、いまから10月28日の夜11時ごろまでに最も成長したチームになる」
 その日、スタッド・ドゥ・フランスで世界一決定戦がおこなわれる。

 コーチングの方針を問われて答えた。
「誰であっても、実際には表に出ていない5パーセント、10パーセントの能力が奥の方に眠っている。それを引き出すのが私の役目です。具体的なアプローチとして、厳しく接するのか、寛容にサポートするのか、面と向かって対決するのか、それは選手たちと実際に会うまでは、まったく分かりません」

「ただし、分かっていることもある」とも言った。
「現在のワラビーズの選手たちが才能に溢れているということです。世界のベストXVを作ったらオーストラリアの選手も何人かは入るでしょう。ワラビーズが揃え得るバックスラインを想像してみてほしい。世界でも指折りのラインのはずです」

「ただ、才能でテストマッチに勝てるか、というと勝てない。結局は、表に出ていない数パーセントのところ。苦しい局面で体を張れるか、です。疲れていてもキックをチェイスできるか。クリーンアウトに入れるか。ルーズボールに飛び込めるか。そういったことが違いとなる」

 近日中に、スーパーラグビーのオーストラリアフランチャイズ各チームを視察に行く予定だ。
 それぞれのコーチ陣とミーティングの場も設ける。

「私はヘッドコーチとして必要な役割を演じるだけです。現代のラグビーでは、アシスタントコーチが大半の仕事を務める。選手からプラスαを引き出せるアシスタントコーチが必要です」
 視察の中で代表メンバーの構想を固めつつ、コーチの人選も進めていく。

 SOについて問われると、「30歳で成熟する10番もいれば23歳で成熟している選手もいる」と答えた。
「(テイン)エドメドと(ベン)ドナルドソンを昨年の試合で見ました。2人とも良かった」と話し、ドナルドソンについて「落ち着きがあった」と評価した。

「(クウェイド)クーパーもケガから間に合ってほしいし、(バーナード)フォーリーも日本で素晴らしいパフォーマンスを見せています。(ジェームス)オコナーもレッズの一員としてスーパーラグビーでフィットした姿を見せてくれるでしょう。(ノア)ロレシオも若いがテストマッチの経験も持っています」

「特に背骨の部分(背番号2、8、9、10、15)でもある10番に関しては、早めにある程度の方向性を固め、そこを起点にチームを作っていくのは確か」と話す。

 スーパーラグビーへの注目が高まる発言もあった。
「各ポジションで良いパフォーマンスを見せた順番にワラビーズに選ばれると思ってもらっていい。私が選手だったらワクワクします。スーパーラグビーで活躍すればW杯に行ける、そして、国全体のラグビーを変えることができるのですから」

「これまでのW杯でのメダルは、引越しの過程で失くしてしまいましたが関係ない。次をどう獲るか、だけを考えています」と話し、前だけを見据えていることを強調した。

「イングランドのヘッドコーチだった自分は過去のこと。楽しかったし、素晴らしい思い出もある。しかしいまは、プレトリアでの南アフリカ戦(7月8日/ザ・ラグビーチャンピオンシップ初戦)のことだけを考えています」

「記事の見出しに使えるように、『イングランドが懐かしい。辞めたくなかった』というコメントを欲しがっているのは分かりますが、残念ながらそんなことはありませんよ」とジョークもとばした。

 近年は不振にあえいできたワラビーズを引き上げる覚悟はできている。
「(2019年W杯で優勝した)スプリングボクスを見てほしい。2016年から2018年までは過去最低レベルのパフォーマンスを見せていましたが、ラシー・エラスマスが(ヘッドコーチに)就任した途端にW杯優勝までのぼりつめた。その事実が意味することは、各選手がどれだけ自分のベストを更新したいと思えるか。コーチとしてはそう思わせられるかが重要だということです」

 女子代表、ワラルースの強化にも関わっていくことについては、「基本的には全体を見守る役割。プランニングをスタッフ陣と相談したりします。男子代表を率いながら女子にも関われるのはそうそうあることではない。全力で務められるようにしたいと思います」と答えた。

母校・マタラビルスポーツハイスクールの学生たちと。(©Karen Watson)

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