国内 2023.01.01

2日に早大と選手権準決勝。京産大・三木皓正がタックルし続けるわけ。

[ 向 風見也 ]
2日に早大と選手権準決勝。京産大・三木皓正がタックルし続けるわけ。
12月31日の練習でも激しく体をぶつけていた三木皓正。(撮影/松本かおり)



 大晦日のトレーニングを終えた。専用グラウンドの脇で着替えた。

 練習着を脱ぎ、アンダーシャツと分厚いウェアをまとうまでの間、分厚い胸板と上腕三頭筋を覗かせた。

 この身体で、自慢の一撃を放つ。

 京産大ラグビー部3年の三木皓正だ。

 身長174センチと一線級にあっては決して大柄ではないものの、FW第3列のFLに入って強烈なタックルを長所とする。

 筋骨隆々で体重は94キロ。鈍い音を鳴らし、大男をひっくり返す。

 1月2日には、東京・国立競技場で大学選手権の準決勝に挑む。三木は記者団を前に、練られた言い回しで意気込みを語る(12月31日)。

「楽しみです。(決勝へ進んで)また1週間、4年生とラグビーをできるチャンスがあるなら、そうしたいです。その意味では、勝たなければならない位置づけはあります」

 前年度は15大会ぶりに選手権のセミファイナルに進み、優勝する帝京大に30—37と迫っていた。

 その試合では前半を23—10とリードも、逆転された。試合直後には「後半に突き放されるのは、フィジカルの強い相手と(身体を)当て合い、落ちてくる(次第にエネルギーが削がれる)から」と振り返った。自分たちより大きな相手と最後までぶつかり合うべく、鍛え直したいと感じた。

 今季は5月に左ひざを怪我したため、フィールドに立ったのは秋になってからだ。それでも関西大学Aリーグで2連覇を果たしたこのシーズンの歩みに、三木は手応えを掴む。

「チームが春の厳しい練習で土台を作ってくれた。いいスタンダードができていると思います。(試合の)後半になっても走り続けられ、トライが獲れ、いいディフェンスができている。僕はラグビーと離れてしんどかったのですが、チームが居場所を作ってくれて、うまく帰ってこられた。チームに欠かせない存在という認識で迎えてくれた。これは嬉しくもあり、責任を感じる部分もあります」

 対戦する早大のNO8には、京都成章高で同級生だった村田陣悟がいる。ランが得意な村田へ三木が刺さるシーンは何度、生まれるか。三木は「楽しみです」とし、こうも続ける。

「彼は早大の中心でもあり、いいプレーヤーなので。高校時代のことを差し引いても、意識はすると思います」

 さかのぼって12月25日の準々決勝では、慶大に34—33で競り勝った(大阪・ヨドコウ桜スタジアム)。これは三木にとって、特別な白星だった。

 もともとこの人は、慶大入りを目指していた。希望が叶えば、同じ高校へ通った兄・亮弥と1年生、4年生の間柄でプレーできるはずだった。願いは叶わなかった。

「兄とは違う道を選んで勝てたことは、嬉しいですね。試合が終わった後は、身体的にも疲労が来ました。疲れたんだな、と思いました。80分間(フルで)試合に出たのが今季初めてだったこともありますが、相手が慶大だから、というのもあって」

 スポーツ推薦で声がかかった京産大に進んだ時点で、三木はラグビーで生きていくと覚悟を決めていた。初志は貫いた。近年の活躍ぶりで、卒業後のプレー機会を確保しつつある。

 どういう選手になりたいかと聞かれれば、「上のリーグでもこの身長で生きていくのは大変なこと。タックルと言えばこの選手だなと思っていただけるような選手になりたいです。2メートルの選手がいるなか、170センチ台の僕が出ていたらロマンを感じるじゃないですか」。ラグビーをする意味はこうだ。

「両親に恩返しをしたい。兄が一線から退き、僕も辞めてしまったら親にとっては寂しいと思う。僕が続けて、観に来てもらえたら恩返しになる」

 タックルをし続ける理由は、チームにとって初の決勝進出を果たすためだけではない。


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