【ルリーロ福岡/2022レビュー(中)】水の中から顔を出したら、高い山がそびえ立っていた。
14-90。
12月24日、ルリーロ福岡(以下、ルリーロ)は3地域社会人リーグ順位決定戦で東京ガスに大敗した。
初めてのシーズンの最終戦となった、その試合。チームの島川大輝代表は、その大きな点差を山の高さに例えた。
何もないところから始めたチームだ。
手探り状態から出発した原点を振り返り、同代表は「なにより、スタートを切らせてくれたすべての人々に感謝です」と話し始めた。
2025年のリーグワン入りを目指している。
トップキュウシュウで優勝しなければ、それは夢物語に終わる。九州ナンバーワンになって初めてスタート地点に立てると考えてきた。
右も左も分からぬ中で結果を積み上げてきた今季を島川さんは、「水の中にいるような感じでした」と言う。
「水中で泳いでいて、(トップキュウシュウ制覇により)やっと水面から顔を出せた。そうしたら、そこに高い山がそびえ立っていました」
その山が、トップウェスト王者の大阪府警察(22-36)であり、トップイースト王者の東京ガスだ。島川さんは、「これを登らないといけない」と言った。
「(順位決定戦を通して)山の高さが明確になりました。これを登り切らないと次に進めない。全員が理解したと思います」
2年目のシーズンは、その地点が出発点となる。
2025年にリーグワンへ。
言葉にすれば簡単だ。
しかし、そこへ向かう道は決して平坦ではない。
ルリーロには、目指している場所がどれたけハードなところか、実体験として知っている者たちがいる。
東京ガス戦の試合中、選手たちのもとへ水を運んでいたのは宗像サニックスブルースで長く活躍していたふたりだった。
屋宜ベンジャミンレイと、田代宙士だ。
屋宜は、決して十分だったとは言えない準備の中で、トップキュウシュウの頂点に立った仲間たちのことを「手応えを感じたはず」と称える。
「同時に、(順位決定戦で)その先のレベルの違いも分かったはず」と続けた。
「肌で感じたことを各々が持ち帰る。それを活かし、今後どれだけラグビーにコミットできるか。最初からすべてがうまくいくはずもありません。それらのことを長く続け、初めて成長につながる」
屋宜自身にとっても今季は、チャレンジの年だった。
現役を続行しながらチームのスタッフとして働いている。ルリーロの価値を広く伝え、支援を得る営業活動が仕事だ。
経験のある選手たちの言葉は重く、若い選手たちの意識を高める。
田代は以前、練習時の出来事を話してくれた。練習時、若手がサインプレーを覚えてきていなかった。
ベテランSOは、その姿勢に苦言を呈した。
それなら、楽しむことを目的としたクラブでプレーすればいいのではないか。勝負の世界に生きる覚悟があるなら、姿勢を正すべき、と。
何もないところから始まったチームには、少しずつチームカルチャーが生まれつつある。