国内 2022.12.27

【ルリーロ福岡/2022レビュー(上)】何もないところから始まった。情熱集まり、愛情広がる

[ 編集部 ]
【ルリーロ福岡/2022レビュー(上)】何もないところから始まった。情熱集まり、愛情広がる
ゲームキャプテンを務めた西村光太。「多くの人たちに支えられています」。(撮影/松本かおり)
応援に駆けつけたファンとともに。チームの所在地、うきは市の鳥『カワセミ』は、瑠璃色をしてかわいらしい。『LeRIRO』の『O』を『E』に変えると、フランス語の笑うという意味になる。クラブ名には、地域への愛情が込められている。(撮影/松本かおり)
「毎日が刺激的」と平田圭史朗。(撮影/松本かおり)



 何もないところから始めた。
 ルリーロ福岡(以下、ルリーロ)の初めてのシーズンが終わった。

 ラグビーで夢を叶えたい。
 活動を通して地域に力と希望を。
 ルリーロはそんな理念を持って、2025年のリーグワン入りを目指して今春に発足したクラブだ。

 12月24日、3地域社会人リーグ順位決定戦が東京・大森でおこなわれた。
 同グラウンドのホストチームはトップイーストで8戦全勝の成績を残し、優勝を手にした東京ガス。この日は、トップキュウシュウを制したチームを迎えての一戦だった。

 ファイナルスコアは90-14。東京ガスがルリーロから13トライを奪い、大勝する80分となった。
 3地域順位決定戦の第3戦は1月7日におこなわれる。12月11日にルリーロを36-22と破った大阪府警察と東京ガスが優勝を争う。

 今季の充実を表現するような80分を過ごした東京ガス。
 対するルリーロはケガ人も相次ぎ、ベストメンバーでこの試合を迎えることはできなかった。

 力の差がはっきりした試合だった。
 しかしルリーロにとっては、チームにとっても、選手たちにとっても、現在地を知る貴重な試合となった。

 初戦のFFGブルーグルーパーズ戦には敗れたものの、トップキュウシュウでは頂点に立った。
 しかし、大阪府警察や東京ガスとは力の差があった。

 小さな観客席だったけど、その空間を埋めた人たちからは、チームを支える愛情と情熱が伝わってきた。
 九州から駆けつけた人たちもいた。

 整った強化環境とは言えない中で実力を蓄え、九州を制した。でも、外に出ればまだまだだった。
 でも、応援してくれる人たちをたくさん得た。
 その両方とも、この数か月で手に入れた財産だ。

 ゲームキャプテンを務めた西村光太(共同主将)は、「関西、関東(優勝チーム)の壁は予想していましたが、あらためて(現時点での)レベルの違いを痛感した」と話した。

 自身は廃部になったコカ・コーラレッドスパークスに所属していたから、イーストやウェストの強豪チームの力は分かっていた。
 しかし、今回の順位決定戦でそれを初めて知った者もいた。だから主将は、「多くの選手たちが、この舞台を経験できたことが良かった」と言う。

 そして、観客席を見ながら笑顔を見せた。
「応援の方々の数を見て、あらためて多くの人たちに支えてもらっていると思いました。力になりました。いい結果で恩返ししたかったのですが」
 来年は、もっと成長した姿を見せたいと話した。

 スタッフとしてチームを支える米村淳平さんは、昨季まで宗像サニックスブルース(リーグワン2022を最後に休部)の通訳を務めていた。
 この夏からルリーロに加わり、チームのマネージメントの一部を担う。希望を持った多くの人たちに囲まれ、「家族のようなチーム」と言う。
「若い選手のエナジーを感じます」

 夢を現実のものとするためにこのチームにやって来た中のひとりが平田圭史朗だ。
 福岡出身の23歳。福工大城東から関東学院大に進学し、卒業後は佐賀銀行で働いていた。ラグビーは、あすなろクラブで続けていた。

 若者の胸の中では、銀行員になっても幼い頃からの夢の灯は消えていなかった。「プロのラグビー選手になりたい」と憧れ続けていた。
 だから、ルリーロが誕生して心が動いた。飛び込んだ。
「自分はトップレベルの選手ではありませんが、サニックスやコーラでプレーしていた人たちと一緒に練習し、毎回刺激を受けています。楽しいです」

 現在クラブのオフィシャルパートナーのひとつ、鳥越製粉株式会社で働きながら夢を追い続けている。
 午前8時15分から午後5時15分まで働き、午後7時からグラウンドに出る。
 平田は東京ガス戦の後半35分から、FB?野恭二に代わってピッチに入った。

「いましかできないチャレンジ」
 そう話す平田の表情からは、経験のすべてを成長につなげる意欲が伝わってきた。
 2年目のシーズンを、いまから楽しみにしている。

 誰もが、いつでも、どこでも、何度でもチャレンジできる社会の実現を目指すことも、クラブが掲げる理念のひとつだ。
「ウイ・ハブ・ウイングス/私たちは翼を持っている」
 来季さらに高く飛ぶためのエナジーが、選手たち一人ひとりの中にある。


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