国内 2022.10.26

日本への恩返し。19年W杯戦士・ラファエレ ティモシーが新たなサービス立ち上げ、ラグビー人気を取り戻す。

[ 編集部 ]
日本への恩返し。19年W杯戦士・ラファエレ ティモシーが新たなサービス立ち上げ、ラグビー人気を取り戻す。
競技と並行して新たな事業を立ち上げたラファエレ ティモシー(グッドメイク株式会社提供)
東京学館浦安でおこなったコーチング(グッドメイク株式会社提供)
選手たちはトッププレイヤーの教えを受けて笑顔(グッドメイク株式会社提供)

 ラグビーワールドカップ2019日本大会で、華麗なオフロード、正確なキックパスで国内外を沸かせたCTBラファエレ ティモシーが、競技と並行して新たな挑戦を始める。

 体験型マッチングサービス「+ONE」(プラスワン)を、11月1日からスタートさせる。
 アプリ内でマッチングした現役の日本代表選手やリーグワンの選手が、ユーザーのもとへ出向くというサービスだ。ユーザーは選手たちと直接触れ合えるだけでなく、コーチングなどのサービスを受けることもできる。

 利用の流れはこうだ。
 まず、アスリートが訪問可能地域やマッチング料を設定、稼働可能な日をカレンダーに入力してオファーを待つ。利用するユーザーは地域・日時・マッチング料などを選択し、マッチング可能な選手を検索する。オファーの届いた選手は内容を確認、問題なければマッチングが成立。ユーザーがマッチング料を支払い、指定された日時、場所でオファーしたサービスを受ける。

 サービスはコーチングだけでなく、さまざまなイベントへの出演も想定している。ラファエレとともに同サービスを立ち上げた阿部伸之さんは「選手側が承諾すれば」と前置きした上で、「友だちの誕生日パーティーやお世話になった先生の還暦パーティー、結婚式のスペシャルゲスト、ビデオメッセージなどいろんなサービスの形を想定しています。進めていく中で、こんな使い方もあるんだ、となれば嬉しいですね」。

 阿部さんはラファエレが山梨学院大時代のコーチのひとりだった。現在は、ラグビー用品を扱う通販サイト「ラグビーフリークス」などを運営するグッドメイク株式会社に勤務し、今回のサービスも同社から展開される。

 ティモシー、愛称「ティム」は今回の事業を始めた理由を説明する。
「ワールドカップで日本代表が活躍して、日本でのラグビー人気がすごく上がったのに、コロナのパンデミックで下がってしまった。リーグワンではあんまり人(観客)がいなかったなと。もう一度、日本のラグビーを盛り上げていくためにはどうしたらいいかを考えた時に、プラスワンを始めようと思いました」

 根底にある思いは「日本への恩返し」だ。
「日本にはいろんな機会をもらいました。小さい頃に夢見たプロフェッショナルラグビープレーヤーになることを叶えるきっかけをくれた。自分の家族が日本に来るチャンスも与えてくれました」

 ティムはサモアに生まれ、ニュージーランドで育った。13歳からはラグビーの強豪校、デラセラ・カレッジに通い、16歳からは18歳までは3年間、1軍の10番を背負った。オークランド州の高校代表にも選ばれる。
 しかし、望んだ道には進めなかった。希望したオークランド州アカデミーには強力なライバルがいたからだ。のちにウエールズ代表になる他校で同い年のSO、ガレス・アンスコム(ウエールズ代表)が同アカデミーに選ばれた。
 そんな時、プロラグビー選手への道を開いてくれたのが日本の大学、山梨学院大だったわけだ。

 その後、サンウルブズや日本代表でもプレーし、ラグビークリニックに参加することが増えた。そこで感じたことがあったという。
「子どもたちが目がすごく輝いていて、(ラグビーに対する)情熱が(普段よりも)違ったように見えた。コーチングをすることで彼らのスキルアップ、経験につながると思いました」

 すでに一度、阿部さんの母校である東京学館浦安でテストをおこなった。事前に打ち合わせを重ね、学校側がやってほしいことをリストアップ。それからコーチングを施した。
「初めて(自分主体)のコーチングセッションだったので、すごく良い経験でした。いろんなコーチから教わったことを、彼らに伝えられた。ハンドリングやキッキングなどベーシックなドリルをやりましたが、”正確に”やることを特に伝えました。ラグビーは正確なスキルを若いうちに身につけることが重要です」

 ドリルをやりながら選手だけでなく、コーチや監督にそのドリルにおいてチェックすべきポイントも伝えた。「日本代表はいま、こういうスキルを求めていて、どういう目的でやっているかを知ることができる機会にもなる」と阿部さんは言う。

 ティムは2019年大会で難易度の高いパスを何本も通し、「オフロードキング」とも呼ばれた。もし教えてほしいという依頼があれば、喜んで伝授するそうだ。
「でも僕は”オフロードキング”だとは思っていません(笑)。誰でもできますよ。オフロードパスをやるには、それをやる自信さえあればいい。シンプルなんです」

 現時点でラファエレの考えに賛同し、サービスに協力してくれる予定の選手は約15人。そのほかにも、日本代表の活動後に参加予定の選手や、チームに確認中の選手が多数いるという。「日本代表のみんなに協力してほしいね」とティム。

 2季目のリーグワン開幕まで2か月を切った。所属するコベルコ神戸スティーラーズではマイケル・リトル、ンガニ・ラウマペらとのポジション争いに挑みながら、グラウンド外では新たなサービスの展開に力を注ぐ。
 自分に活躍の場を与えてくれた国のラグビー人気を取り戻したい。

◆体験型マッチングサービス「+ONE」
※11月1日からアクセス可能(現在サイト構築中)
https://plusone-sports.jp/

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