国内 2022.10.11
【新連載】プロクラブのすすめ① 山谷拓志社長[静岡ブルーレヴズ] 「今季のプレシーズンを振り返る」

【新連載】プロクラブのすすめ① 山谷拓志社長[静岡ブルーレヴズ] 「今季のプレシーズンを振り返る」

[ 明石尚之 ]

――今季は新シーズンのスローガンを出すのも早かったです。

 チーム自体が7月から新しいシーズンとして始まるわけなので、何も発表しないのはおかしいと。内部的にも、活動するのであればスローガンを決めておく必要があります。発表する前日か前々日には、選手・スタッフ全員をひとつの部屋に集めてスローガンや目標などを伝えました。

 対外的には早い段階で情報発信すれば、ファンの期待を高めることにもつながるし、グッズにも反映できるんです。グッズはシーズンが始まるまでは当然売り上げは伸びませんが、スローガンの「REV UP!」のロゴを入れたTシャツやタオルは(今年)限定もののグッズとして販売できるし、実際7月は結構売れました。それはバスケでもやってきたことで、早く情報を出したほうが色々動けるなと。
 選手のリリースに関しても、メディアからすればあの選手を取材してみよう、とか、ファンにとってもこの選手早く見たいとなってもらえますから。

――今季、経営者として特に意識していることはありますか。

 社員同士、社員と選手、社員とスタッフなど、クラブハウスとオフィスが別の場所にあってなかなか顔も合わせられないので、できるだけそこのコミュニケーションを深めることに今年はこだわってます。
 10月、11月には選手やスタッフ、社員が混じってディスカッションする機会も作ってます。社員同士についても、入社年度や役割が違うので、ヤマハ発動機時代のことを知らない社員も半分くらいいる。なので6月には1泊2日の研修をして、ヤマハ時代のことを勉強しました。それを踏まえた上で、ブルーレヴズらしさとはなにかを話し合ったりもしました。

 オフィスの移転についてもそういう経緯があります。前のオフィスは会議室が別の階にあって顔を合わせないことも多かった。いまは全員、同じフロアにいるので気軽に会話できる。会議の内容も自ずと耳に入ってくるので、それは協力できるよとツッコミを入れられたり、オープンなコミュニケーションにつながってるのを実感してます。

――新体制の会見では、昨季は広報を担当していた林優子さんの配置転換(今季からチームマネージャー)にも触れられてましたね。

 チーム側に事業部側の事情や考えを分かってもらえる人がいるのはすごく大きいです。もちろん、選手のコンディションが一番大事なのでそこを無視することはありませんが、このイベントに選手を出したいとなった時の調整は必要。林さんにはそこのつなぎ役を期待してます。

――開幕も近づき、プレシーズンマッチも始まってます。

 興行的な観点からすると、どれだけレギュラーシーズンのチケットセールスにつなげるかがすごく大事です。
 プレシーズンでは1試合単体で収益を得ることはあまり想定してません。本当は海外のチームを呼んで、そこでは収益を上げるような興行をしたいのですが、今年は叶わなかった。こちらは来年以降も検討を続けます。
 今年はプレシーズンマッチをきっかけにファンになってもらったり、ファンクラブ会員になってくれた方々の満足度を上げる。あとはスポンサーさんも呼んで支援しようかなと考えてもらえるきっかけになればいいなと。

 草薙の試合(11月19日vs横浜E)は入場を無料にしました(*無料のファンクラブ会員登録が必要)。有料試合か否かで使用料が1桁変わるという裏事情もありましたが、草薙は静岡の中部地区です。今季も開催予定の日本平でのホストゲームを見に行きたいと思ってもらったり、エコパやヤマハスタジアムにも足を運んでもらうきっかけにつながればと思います。

――ファンクラブについては、先日のプレシーズンマッチの際に初めてファンミーティングをおこないました。

 生の声を聞けるのは非常にありがたいです。今年からファンクラブは五郎丸くん(CRO)が責任者になりました。去年は集客のスタッフのひとりでしたが、今年はファンクラブの責任者として、どうやって会員を集めるか、どうしたら満足してもらえるか、などを頑張って考えてくれてます。
 ファンミーティングについても五郎丸くんの提案で、彼が仕切ってやりました。ファンの要望にすべて応えられるわけではありませんが、耳を傾けている姿勢を見せることも大事です。ひとりから言われたことが確かにそうだなと、変わることもあります。
 この前は自由席を作ってほしいという要望がありました。われわれとしては、どうしても単価が安くなったり、来場者数が読めなかったりするので、やめようと思っていたのですが、反映しました。
 最初、自分の席だけ取っていたけど、あとから友だちも行くことになって追加で取ろうとしても指定だと隣になれないことがありますよね。どうしてもその日にならないと人数が確定できないという団体さんもいます。それで復活させました。

――ありがとうございます。時間になりましたので、今回はこのあたりで。

 僕は時間があるときは経営者として来年、再来年どうするかも考えてます。W杯開催時、終わった時どうするか、どういうことが起きるのか、そこでどういう投資ができるか。ラグビー界を見てると、W杯以降の選手(獲得)の動きはかなり顕著です。

――それでは次回は少し先のこともうかがいます。よろしくお願いします。


PROFILE
やまや・たかし
1970年6月24日生まれ。東京都出身。日本選手権(ラグビー)で慶大がトヨタ自動車を破る試合を見て慶應高に進学も、アメフトを始める。慶大経済学部卒業後、リクルート入社(シーガルズ入部)。’07年にリンクスポーツエンターテイメント(宇都宮ブレックス運営会社)の代表取締役に就任。’13年にJBL専務理事を務め、’14年には経営難だった茨城ロボッツ・スポーツエンターテイメント(茨城ロボッツ運営会社)の代表取締役社長に就任。再建を託され、’21年にB1リーグ昇格を達成。同年7月、静岡ブルーレヴズ株式会社代表取締役社長に就任

静岡ブルーレヴズ立ち上げの際の記事はこちら(ラグビーマガジン2021年9月号)
リーグワン2022を振り返った記事はこちら(ラグビーマガジン2022年7月号)

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