国内 2022.10.10

東京農業大が開幕3連勝 1年生に國栃SOのDNA

[ 見明亨徳 ]
東京農業大が開幕3連勝 1年生に國栃SOのDNA
東京農業大の10番をつける武藤倖吉。母校・國學院栃木のSOのDNAを受け継ぐ(撮影:見明亨徳)


 関東大学リーグ戦3部は10月9日に第3節の4試合をおこなった。開幕連勝の東京農業大は東京都立大を39-14(前半14-7)で下し3戦全勝。駿河台大も今季、昇格した千葉商科大を43-5で破り3連勝だ。

 農大と都立大戦。先制は農大、5分に敵陣へ入るとしつこくラックサイドをフォワードがつき、バックスへつなぎ前進する。FB熊田力丸(3年、東京)がインゴールへキックを蹴ると、反応した3年で同じ東京高出身のCTB野田涼太郎が右中間で押さえた。

 都立大も農大陣へ入ると得点源のFB松本岳人(大学院1年、所沢北)がドロップゴールを狙うも外れた。しかし、9分にゴール前スクラムで農大の反則、迷わずにゴール前5メートルの右ラインアウトを選択する。11分、今季は必ずトライに結び付けているモールで押し込みHO高尾龍太(4年、大阪・高津)が右中間へ仕留める。コンバージョンも松本が正確に決めて5-7と逆転した。

都立大HO高尾龍太が前半モールからトライを奪う(撮影:見明亨徳)

 ここから魅せたのは農大1年生SO武藤倖吉(國學院栃木)だ。17分継続してアタックすると、ゴール前中央から右へ走りこんできたNO8佐藤耀次郎(4年、秋田中央)へパス。逆転トライをアシストした。武藤はゴールキックも決めて12-7とした。

農大10番の武藤倖吉がラストパスをNO8佐藤耀次郎へ送る(撮影:見明亨徳)

 武藤は2021年度、冬の花園「第101回全国高校大会」で準優勝した國學院栃木のレギュラーメンバー。決勝では東海大付属大阪仰星に5-36で敗れたが、花園に“國栃旋風”を起こした。ポジションは右WTB、2回戦から決勝戦まで5試合すべてに先発し、交代なく300分間ピッチに立った。準々決勝の長崎北陽台戦(17-7)では後半25分、10-7から試合を決定づけるトライで4強入りへ貢献した。

 神奈川県川崎市出身、川崎市ラグビースクールで楕円球へ親しむ。國栃卒業後は「川崎で造園業を営む実家を継ぎたい、そのための勉強もできる」(武藤)と農大を選んだ。農大ではSOを任された。「SOは初めてですが國栃で1つ下のSO伊藤龍之介と練習、試合を一緒にすることで学んだところがある」。田村優(横浜キヤノンイーグルス)、煕(東京サンゴリアス)兄弟ら日本を代表するSOを輩出してきた國栃DNAを受け継いでいる。

 武藤はボールを左右に散らす。都立大ディフェンスに隙があると持ち味のランでゲインをした。27分、農大がお返しに都立陣22メートル内の左ラインアウトからモールを押し込みLO臼井悠喜(4年、東洋大牛久)のトライを呼んだ。コンバージョンを武藤が成功、19-7とする。

農大LO臼井悠喜が前半3トライ目を決めた(撮影:見明亨徳)

 ハーフタイム。農大の小野崎慧監督は「敵陣に入りがまん強くフェーズを重ねればトライを取れる。続けていこう」と話す。ハーフ団にも「ボールは回せるか?」と問いかけていた。

 後半すぐに農大が敵陣へ入ると反則を得る。武藤がペナルティゴール(PG)で3点を追加、22-7とする。試合展開を振り返るとこのPGが効果的だった。4分後、都立大が右ラインアウトのサインプレーからHO高尾が2トライ目。松本もゴールキックを蹴りこむも22-14だ。

 14分、農大が都立大陣で焦らずボールを継続した。武藤は都立大ゴール前から左へキックパス。左WTB鈴木創平(4年、秋田中央)が難なく左隅へファイブポインターになった。農大は18分、41分に右WTB伊藤恵希(1年、秋田中央)が連続トライを挙げ、39-14で終えた。

「敵陣でフェーズを重ねればトライを取れる」。農大の小野崎監督は前半で確信を得た(撮影:見明亨徳)

 農大は昨年、3部で2位になり2部7位の朝鮮大と入替戦を戦った。「フィジカルが違いました。2部で戦うチームは下位でも強かった」(小野崎監督)。朝大が85-10と大勝した。「今年はフィジカル強化がポイント」としたうえで「今日は都立大のセットプレーが安定していた。自分たちのラグビー、選手たちがきちんとフェーズを重ねてくれた」。

 國栃同級生たちは関東の有力大でラグビーを続けている者も多い。日大に進学したWTB久保太志郎は春季大会で早大戦、明大戦に14番を背負って出場。花園では久保はリザーブだった。「太志郎が出ているのをみてうれしい気持ちと悔しさもありました。進路を考えて農大を選びました。先輩たちと一緒に2部昇格へ貢献したい」(武藤)と上を見る。

 敗れた都立大は1勝2敗。2部との入替戦出場のためにもう負けられない。「ディフェンスからのチーム。ダブルタックルが鍵」と就任3年目の藤森啓介ヘッドコーチ。ラインアウト-モールというトライを奪える形に新しい何かをプラスすることも課題になるか。

都立大の生命線ダブルタックル、試合を通じて実践できた(撮影:見明亨徳)

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