「悔しさ」が作った足腰。天理大・谷口永遠は、控え時代も「腐らずに」。
小さくても強くなれる。悔しさをばねに強くなれる。谷口永遠は、そう信じている。
天理大ラグビー部の4年だ。身長173センチ、体重102キロと一線級にあっては大柄ではないが、最前列中央のHOとして「低いスクラムでプレッシャーを」。全体的に小柄かもしれないFW8人をまとめ上げ、大きな塊の下側を取る。粘り腰で耐えて、押す。
低さという名の強さを意識するのは、ボールが動いてからも同じだ。「アクセル」。部内に伝わる用語を心で唱え、鋭い出足でロータックルを繰り出す。巨漢相手に、味方と2人ひと組で突き刺さる。
目下、9月18日からの関西大学Aリーグに参戦中だ。2季ぶりの優勝と大学選手権の制覇を目指す。
「去年は悔しい思いしかしてないので…」
大池中を経て入った関西大北陽高では、全国大会と無縁だった。それでも天理大では、1年目の2019年度から1軍に絡んだ。翌20年2月には、代表予備軍のジュニア・ジャパンに抜擢された。
本人が「悔しい思い」をしたのは、それから先のことだ。
関西5連覇と初の大学日本一を達成した2020年度、1学年上の佐藤康(現・リコーブラックラムズ東京)との定位置争いに苦しんだ。21年度には佐藤が主将となったことで、谷口は出場時間を増やせなかった。
「悔しかった。1年の頃は僕のほうが試合に出ていたので…」
腐らなかった。日々の全体練習を前後して、スクラム、1対1の個人セッションを重ねた。ウェイトトレーニングも怠らなかった。「下半身が大事」と注力したスクワットでは、最大重量をおおよそ「220」から「240」に引き上げた。
控えの16番として積んできた地道な鍛錬を、「個人のスクラムの強さ、キャリー(突進役として)の強さ」に昇華させた。果たして、先発の2番をつけるいまのパフォーマンスを高めている。
「(控えに回る現実を)糧にして、ずっと(佐藤主将に)勝ったろうと意識してやってきました。悔しさでやった分、身についているかなと」
卒業後はリーグワンのクラブでプレー予定だ。苦しい時に取る態度次第で、未来をいかようにも作れると信じる。