イタリア代表のスピードスター、アンジュ・カプオッゾがトゥールーズの人気者に。
トップ14第4節、トゥールーズに新しいスターが誕生した。
先のシックスネーションズでイタリアがウエールズを倒して歴史的勝利を挙げた試合を覚えている人も多いだろう。
残り時間1分で自陣からカウンターアタックを仕掛け逆転トライのきっかけを作ったアンジュ・カプオッゾ(23歳)が今シーズンから各国の代表選手が揃うトゥールーズに加入し、新たなチャレンジをしている。
カプオッゾはフランスのグルノーブルで生まれ育った。第2次世界大戦後にイタリアのナポリからこの地に移住してきたイタリア系移民の子孫にあたり、フランスとイタリアの2つの国籍を有する。
フランスに長年住みながらも家族のカルチャーは今もイタリア色が強いという。
今年のシックスネーションズでイタリア代表に初招集され第4節のスコットランド戦に途中出場して初キャップを獲得、第5節のウエールズ戦での劇的な勝利の立役者となり一躍世界の注目を集めた。
もちろんトップ14のクラブも例外ではない。
複数のクラブからオファーを受け、最終的に選んだのはトゥールーズだった。
「このチームが目指しているラグビーの中には多くの自由がある。この自由な空間からアクションにプラスαを作ることができるところが好き」と説明する。
「映画のエキストラのようになるのではなく、このチームでプレーするだけのレベルがあることを証明して多くの試合に出たい」と言って臨んだ第4節のホームでのラシン92戦(9月24日)。
カプオッゾにとってはトゥールーズでの3試合目だった。
ランメーター 151メートル、ディフェンダービートゥン 7回、クリーンブレイク 3回、オフロードパス 2回と数字が示すように『カプオッゾ祭り』となった。
何度も攻撃の起点となり防御面でも健闘した。決して大きくない身体(177cmセンチ、82キロ)で、ヴィリミ・ヴァカタワの引退後欠員補充のためラシン92に急遽加入した元オールブラックスCTBフランシス・サイリ(180センチ、100キロ)のチャージをしっかり食い止めた。
ジャッカルにも成功している。
しかしこの日満席となったスタッド・エルネスト・ワロンの観客が特に沸いたのは、ラシン92のSOフィン・ラッセルがふわっと投げた飛ばしパスをカプオッゾがすかさずインターセプトした瞬間だ。
カプオッゾの前にはもう誰もいなかった。
そのまま70メートルを駆け抜けてトライを決め、トマ・ラモスのコンバージョンも決まる。30-10として試合が決まった。
トゥールーズのサポーターは、南アフリカ代表WTBチェズリン・コルビを初めて見た時のようだと言う。爆発的なスピード、緩急つけながら敵を翻弄するステップでコルビと比較されることが多いがそれだけではない。
コルビがトゥールーズに在籍していた期間、コルビ、ラモス、マキシム・メダールの3人が試合中FB、WTB、時にはSOとポジションを入れ替わりながらフォーメーションを組んでいた。
2021年夏にコルビはトゥーロンへ電撃移籍し、メダールは昨季で引退した。WTBのカプオッゾ、FBのメルヴィン・ジャミネが加入し、この日はSOに入っていたラモスとの3人の新しいバックスリーのフォーメーションが機能し始めた。
「3人とも3つのポジションでプレーができるからやりやすい。練習でお互いに慣れてきて感覚がつかめてきた。その成果が試合で出てきた」と試合後カプオッゾはインタビューに答える。
「FWがどんどん前に出てくれていたからWTBにはプレーしやすかった。新しいチームでの最初のトライでフィニッシャーのWTBとしての責任の重圧から少し解放された。初トライがホームのサポーターの前でできたことが嬉しい。2週間前の初めてのホームでの試合で、バスを降りてスタジアムに入るまで大勢のサポーターの声援に迎えてられアドレナリンを注入してもらったような気分だった。この気持ちを忘れないでいたい」とサポーターへのメッセージも忘れない。
この試合の後、スタジアムの選手通用口前で待ち構えていた大勢のサポーターに囲まれ、サインや写真撮影に応じているカプオッゾの動画がSNSに投稿された。
時刻は24時になろうとしていた。
多くのスター選手に慣れっこのトゥールーズのサポーターの間で早くも人気者になった。